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【フリーゲーム】自分よりも大切な存在 プレイ感想

(5200文字)読むために必要な時間 14分10秒

皆さんこんにちは。フリーゲーム感想のお時間です。

今回感想を書いていくのはこちらのゲーム。←クリックでDL

浦田一香さんには前から注目していて、Twitter以外にもブログなどをよく拝見させてもらっていました。

重い題材を扱っているだけに気軽にプレイするというよりかは、腰を据えて「さあやるか!」みたいな気持ちだったので満を持してという感じですね。

やるぞー!

不妊治療?

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当方、シナリオゲーをプレイする時は感想やあらすじをあまり見ないタイプの人間なので、どういうゲームかほぼ情報を得ていません。

というか妊娠ってもしかして、そういう暗い展開的な……。自慢じゃないですがエロゲプレイヤーなのでヒロインがひどい目に合う展開に耐性はないです。

初手平手打ち

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このテキスト、まだ2,3クリックしかしていません。

いきなり来ましたね。

しょっぱなから内容は重いんですが、意識はテキストの軽さに行きました。結構一文一文が短く表示される作風でサクサクしています。

ヒロインとの出会い

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初見の印象ではなんだかぼんやりとしていて、つかみどころのない子でした。

そしてヒロインの答えた信頼できる人「リョウ」を彼氏と勘違いしちゃった主人公を煽ってくる愛海ちゃん。

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幼馴染ではなくサボり仲間という表現で現れたのであまり関わり合い的には深くないのかな、と思ったんですが距離感は近いですね。

こういう距離感でおちょくってくるキャラは大抵幼馴染か、あるいはちょっと生意気な後輩キャラなんですが、愛海ちゃんあんまり見ない珍しいタイプかも。

女の子また出てきた!

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特別驚くことではないんですが、なぜか愛海ちゃん一本で行くと思っていたので、あれ……どっちがヒロインなんだろう。

ナンパされているところを、

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妹で行ったーーーー!!!

割と見る展開ではあるけど、初対面の人に妹を使う主人公の勇気。

助けたお礼をしてくれるらしい。

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リアリティ重視かと思ったんですがエロゲ顔負けのとんとん拍子でヒロインとフラグを立てていきます。

同じ学校の子だった

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そして愛海ちゃん、めっちゃ牽制かけてくる。怖い……。

愛海さん!?

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これは相当重い家庭事情を抱えていますね……。新しく出てきたヒロインの子の家庭環境がめちゃくちゃ良いパターンで、その対比を描いていくのかな。

これは先の展開が興味深いとどうじに、ホラーゲームをプレイするかのような心構えが必要になってきました。

その後、結局新ヒロインの楓ちゃんの家に行くことに。

ご両親!?

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大事にされている娘には厳格な父が「うちの娘はやらん」的な登場をしますが、恋愛面に関して本当に凄いすっ飛ばしてきます。

その後、ご飯にも誘われ主人公は食べていくことに。

やっぱりお父さんも主人公を受け入れていて、この描写を見て感じたことは「この人たちは今まで不幸になった経験がないんだろうか?」ということでした。無条件で人を信用出来るということはかなりリアリティに欠けます。ここらへんは両親を信用出来ない主人公との対になっているのかもしれません。

主人公が両親について悩むのは

プレイしていてなにか引っかかったのが「主人公両親のこと好きすぎない?」ということでした。

多分自分なら血が繋がっていないという事実を知っても精神的ダメージはありません。むしろ相手を恨んでいればいるほど、自分とは違う人間だと割り切れて、血が繋がっていないことに感謝するかも。

こういうのは「両親と仲がいい」と思っていた主人公の内的ギャップから「騙された!」みたいな事で葛藤する場面なんですが、如何せん主人公と両親の仲が良かった描写がないので、プレイしていて主人公が騙されたという感じはあまりしませんでした。

でもやっぱり主人公は両親が大好きだったんだと思います。

;;;;;;;;

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ここからの展開はシンプルに理不尽。登場人物全員悪人、楓ちゃんの優しい両親との落差がありありと描かれていて、ヒロインの口から汚い言葉がこれでもかと飛び出します。

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割と久しぶりの感覚かもしれない。

あまり共感できていないヒロインとか主人公が感情的になって爆発するシーンってプレイしてて本当に辛いんですよね……。BGMの演出も上手くて、なおさらメンタルがごりごりと削られていきます。

ひどすぎる;;;;

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えぇ……。最初は不良カップルから生まれた的な展開かと思ったら、まさかの両親じゃなくて愛海ちゃんのほうが問題児パターン……?

ストーリー構成が良い

主人公は自分が不幸な境遇だと思ってる→良い家庭環境を見てなおさらそう思う→自分より酷い環境を見て考えを見つめなおす。

この三段構造はよく出来ていて面白い。

問題解決が自分ではなく一気にヒロインに向き、自動的に「このヒロインの家庭内問題をどう解決するのか?」というストーリーへの興味が持てました。

キャラクターは受動的なんだけど、ストーリーが否応なしに進む感じが良いですね。

アニメ とらドラ!を思い出した

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そのアニメでもヒロインと両親が不仲で、主人公が「もっと仲良くしたほうがいい、おっさん良い人だぜ?」的にヒロインを説得しようとします。

それは主人公が外側から見ただけの判断で、実際にヒロインが仲良くすれば父親に裏切られる、というえぐい展開がありました。

この作品はどうなっていくのかな。

愛海ちゃんが赤面することの違和感

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恋愛面のことで愛海ちゃんが結構赤面するシーンがあるんですが、そこから全てを諦めているという感情はなく、まだ自分は主人公と付き合う資格のある人間なんだ、という希望が見え隠れします。

二次元の女の子というより現実の女に近い造形をしているのが特徴的。不幸を武器にしている感じが卑しい女の子という印象を受けました。

会話文なんかもこの子との会話は生々しさがあります。

主人公の血筋の真実

このへん血筋をまったく気にしない自分にはまったく主人公の気持ちがわかりませんでした。両親の子供が出来ないという辛さも、正直一生独り身でいいと思っているのでうーん、という感じで。

客観的に見ると「そんなことで?」と思ってしまうんですが、本人たちにとってはめちゃくちゃ重大なことだったりするのは現実でもよくあります。

そっちを選ぶかーーー!!

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ここはストーリー上、無理にでも愛海ちゃんに行くかと思ったんですが楓ちゃんを選びましたね。こういう時メインヒロイン的な位置づけのキャラに行きがちですが、そうかー、楓ちゃんかー。

今まで散々助けてもらってはいたので順当ではあるし、そうだよねって主人公に共感もしたんですが今後の展開が不穏……。

何もなければいいけど、この作品でそんなことはあり得ないし……。

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うあああああああああ!!!

4年後

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お義父さん、そのくだりはもうやってしまいました。

何事もなく4年経過したことも驚きですが、まだ2章……? ここからさらにどんどん展開していくの……?(全3章でした)

楓ちゃんの変化

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学生のころ、両親について悩んでいた主人公をいつも励まし、その様子は愛海ちゃんと比べてとても女の子らしい、言ってしまえばヒロインにふさわしい立ち振る舞いでした。

けれど大人になってから不妊治療に悩む彼女は女のそれで、彼女もまた特別なんかじゃなくて、ただただ等身大の人間なんだなぁと感じさせます。

そして悩む理由も主人公のためだったのはさすがですね。

そんな彼女もこの後死んでしまいます。

嘘でしょ……?

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…………。

総評

ぶつ切りになりましたが終盤は実況感想どころではなく、さらに言えばどう感想を書くべきか迷っています。

それぐらい取り扱っている題材が難しいもので異質な作品だと感じました。

まずプレイ前からわかってはいたことなんですが、ヒロインといちゃいちゃ楽しくするというゲームではありません。イラストが可愛らしい萌え絵なので、若干そこらへんの期待も含めてプレイしたんですが思った以上に重かった。

最初から最後までずっと水の中にいるような息苦しさでのプレイ。

ふぅ……! ふぅ……! って深呼吸しながらプレイしてたので、想定クリア時間の90分を大きく超えて3、4時間ぐらいかかりました。

ストーリーに支離滅裂な部分もあるんですがそこが逆にリアルで重々しい。

まさに二次元的なものではなく現実を描いたというような作品。

普通のゲームとは違った「作者のこれがやりたいんだ!」というオリジナル性をひしひしと感じます。なので先の展開も予想出来ませんでした。

ここまでで感じ取れるものはネガティブだと思うんですが、いじめだったり、ヒロインが死んじゃったりすることが覆らないこの作品をポジティブに受け取るのは誰でも無理があるんですよね。

普通の物語だったら「いじめがあればその根本を主人公が解決する」というポジティブさがあるんですが、本作品はいじめは確実に起き、それを物語のように解決はできないという現実を突きつけてきます。

おそらく作者の浦田一香さんはキャラクターを使って「現実はそんなに甘くない!」を訴えかけてきているのだと感じました。

例えば難病なんかの難しいテーマは現実だとドラマ化とか、あるいは22時あたりでやってる番組で1時間の感動エピソードとして取り上げているとか。

フィクションではなく「現実に合った出来事ということを売り」にしていて、その理由としてほとんどの人は「難病」というものに理解がないからです。

コンセプトとしては「こういう人たちも頑張って生きている」とか「こういう人たちもいることを少しでもいいから知って欲しい」とか。

そういったものをフィクションにして伝えようとしたのがこの作品なのかな。

萌え絵に対する考察

浦田さんのことは割と以前から知っているので、今回プレイした作品のイラストが当時よりも飛躍的に可愛くなっていることを感じます。

それと同時に、浦田さんはなぜこの題材を萌え絵で表現するのか? という疑問も感じました。
(萌え絵の定義は、かわいらしくデフォルメされたキャラとします)

そもそもどれをやろうか? とシリーズの中でこの作品をプレイしようと決めたのは「ヒロインが一番可愛かったから」という理由でした。

そのため可愛いヒロインがいじめにあっていたり、死んじゃったりする描写は本当に辛い面持ちでのプレイとなりましたし、常に安らぎパートを求めるような心境でした。

息苦しいと表現したのも作品の純度がエンディング以外ほぼ100%シリアスだからで、息抜きパートが存在しないのです。

これは絵が可愛くなればなるほど当然プレイヤーは辛くなると思うんですよね。

言うなれば車を運転していて飛び出してきたのが猫かカエルかで感情って変わるもので、差別的と思われるかもしれませんが、そこはもう本当にどうしようもない。

仮に可愛い立ち絵がない状態でプレイしていたら、この作品に受けたイメージというのはだいぶ変わっていたことだと思います。

あえて萌え絵でやる意図としては、この作品を他人として俯瞰から眺めて欲しいのではなく、自分のことのように感情を共有してほしい、という想いがあるのかもしれません。

この作品の難しさ

今回の感想は珍しく2日に分けて書いています。いつもはプレイ後にちょっとまとめる程度なんですが、悩みに悩みました。

ゲームって基本エンタメで誰かにオススメしたりするものですよね。

ところが

この作品を誰かにオススメするとしたらどういう言葉が適切なんだろう? 

ということで悩んでしまうせいで、感想もまた難しくなるのだと書いていて気づいたんです。

今までやってきたフリーゲームは「このゲーム面白いよ」「このゲーム可愛いよ」極論どちらかであれば成り立つんですが、この作品の本質はどちらでもありません。

実際他の方の感想を見に行くと、

このゲームは、今まで自分が考えたこともないような内容を深く掘り下げた作品であり、分かった振りをして感想を書くのが憚られたためです。

とありまして、不妊治療に対して知識が浅かったり、テーマを深く理解できないと感想書くのが気軽に行えない難しさはあります。

そこにはゲームというよりかはエッセイに近いものを感じました。

色んな人にオススメするというよりかは「こういうことで悩んでるならこういう作品があるよ」みたいに。

ノベコレの感想でも「人生観にまで影響を与えた」というものがあったので、刺さる人はにはとことん刺さっていますからね。

どういう人にオススメなのか?

この作品の良いところはとにかくリアルで生々しいところです。これは今までフリーゲームした中でもダントツですし、超えてくる作品は無いと思います。

エロゲでもたまにありますが、あまりにも精神的に来て引きずってしまう、という部類のゲームになってくるのかな。

今まで結構きつめのエロゲをやったことはありますが、
フリー作品で「うぉぉぉお……」となるのは初めての経験で、ちょっと新鮮です。

ご都合主義の甘いゲームなんてしたくない! もっとリアルな作品はないのか! という人には一度手にしてみてください。きっと思っている以上に現実というものを突き付けられますよ。

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