ウケるコンセプトにはわかりやすさだけなく斬新さもある
前回の続き。記憶に残るようなコンセプトとは何か?
「初恋は年齢天秤の中で」がウケたのは、わかりやすさだけでなく、年齢を上げ下げできると言う斬新な設定があったのもそうです。
この作品ドラマ化出来るようなオーラすら持ってますからね。
タイトルといい登場キャラの年齢といい、デザインも一般ウケしやすいと思います(露骨な萌え絵ではない)
わかりやすいだけではダメなのか?
例えば「里一番の忍者を目指す!」というコンセプトだとナルトの焼き直しになりますし「海賊が財宝を見つける」だとワンピースになります。
これも「面白いけどどこかで見たことある」になります。
ただ、人間どこかで見たことがある、という安心感も大事だということは昨今人気のなろう作品でお分かりかと思います。
異世界転生が流行っているのは、どこかで見たことがある安心感故です。
新しいことを覚えるのって面倒くさいですからね。
けれどそれだと安定はしても一番はとれないでしょう。
忍者と言ったらナルトだし、海賊ならワンピース、野球ならメジャーで、テニスなら王子様。
そのジャンルに強い先駆者がいれば、二番手にしかなりません。
時間が経った上でなら、次世代の一番にはなれるかもしれません。
わかりやすい例を出すとすれば「スラムダンク」と「黒子のバスケ」でしょうか。
スラムダンクはリアルなバスケで、黒子のバスケは能力モノ。
これがいわゆる「他と差別化するための」斬新なポイントです。
コンセプトを変えることによって、焼き直しを防ぐ。
ということで、わかりやすいだけだと差別化出来ずに埋もれてしまう可能性が高く、結果的にそれが「印象」に残らず、記憶にも残らないというお話でした。
コンセプトに合わない
そしてここからが鬼門なんですが、そのコンセプトにあった作品作りというのが大事になってきます。
これが結構難しいことだと思います。特にフリーだと。
今作っている『ダブルカタルシス』ですが、結構可愛らしげなデザインをしています。
エロゲー出身者なので、そういう絵柄ですね。
ヒロインの一人 カナリア
このデザインを見た時に、まず思い浮かぶものは何だとおもいますか?
それは「もっとこのヒロインの可愛いところが見たい」だと思います。
少なくとも自分は可愛いヒロインが登場するとわかれば、そのヒロインの可愛さにスポットが当たるんだろうなと解釈します。
つまり、作者が掲げているコンセプトにかかわらず、ユーザーが勝手にコンセプトを決めてしまう場合もある、ということで。
コンセプトがわかっていないと、シナリオ、絵、その他は死ぬという事を前回チラっと書きました。
ではここで一度自分の作品に問いかけてみましょう。
本当にその「コンセプト」は可愛いキャラの絵でやる必要があるのか?
別にこの絵柄ではなくていいとなるようなら、それはコンセプトの統一感が崩れている証拠です。
どんな絵柄でもいい、代わりが効く作品は平凡と言えます。
可愛い絵柄なら、それを最大限生かしたシナリオを書いて欲しい。
というのは当然の思考
なので『ダブルカタルシス』でやってはいけないことは、小説調で固い文章にならないこと。
また、内容(テーマ)も小難しいものではなく、
美少女キャラにあった「わかりやすさ」が必要です。
斬新さというのは、行き過ぎると「触れないでおこう……」となってしまう良い例をご紹介します。
それが、
かまいたちの夜
このゲーム、元々はこうですよね。
それが2018年にこうリメイクされました。
知ってる人、どれぐらいいるんだろう。
このイラストレーターの人はエロゲで見かける方です(代表作 ぼくの一人戦争)
コンセプトのちぐはぐ感というのはこういうことで、これをやると元々の「不気味なホラー」が「ただのホラーチックなギャルゲ」になるなんてのは誰にでもわかります。
買った人には割と評価が悪くなかったみたいですが、かまいたちファンがこれを買うの? という商業的なウケの部分で失敗しています。
amazonで適格なレビューが書かれていたので抜粋。
「かまいたちの夜」が最初からこのテイストだったら凡庸な作品として世に埋もれていた
ということで、上の例はまんま「焼き直し」ですがコンセプト違いを起こさないような配慮が必要です。
コンセプトに対して
・そのイラストデザインでやる必要があるのか
・そのBGMの雰囲気をチョイスする必要があるのか
・そのシナリオの文体で書く必要があるのか
・そのUIである必要があるのか
などなどです。
この記事で紹介した『君の在り処』は、そういう意味で統一感が抜群でした。何度も言いますが、シナリオも絵も音楽もUIもこれでなくてはいけないというマッチさがある作品です。
なのでかなり作品を評価してるんですね。
ただ代表であるSoulActさん自身
「この作品はコンセプトが難しい(プレイヤーに伝わりづらい)」
と言っていたのも覚えています。
……こんな具合に、春根利馬さんのように斬新でわかりやすいコンセプトを生み出すと言うのはそう簡単なことではありません。
しかも作品全体をそれに寄せて行かなくてはいけないという。
素材がバラバラなことが多いフリーではなかなか難しい問題と言えます。
他の人の作品の名前だけお借りするのも悪いので、次回は『ダブルカタルシス』のコンセプトについて書いていこうかな、と思います。
それではまた明日。
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