台本制作秘話「山奥の神様に呆れられながら渋々耳かきしてもらいたい」編
こんばんまにまに~(?)
こんにちは、あまにです。耳かき台本を書いています。
Twitter:https://twitter.com/imonoamani
なんか最近耳かき台本書き界隈でnoteが流行ってるっぽいので私も書きたくなって書きました。
この記事では、私が台本を書き始めたきっかけや、台本を書くときにどういうことを考えているか、などを記してみたいと思います。
なぜ台本を書き始めたか
ぶっ刺さる作品を聞いたからです。これです。
この作品の中に
「女神様が耳かきをしてみたいけど、耳垢が無くてつまらないので、女神パワーで強制的に耳垢を増やしてくる」
というシーンがあります。私はこの場面を聞いたとき感動しました。
女神パワーを耳垢を増やすことに使うというコメディチックな面もある一方で、上位存在の機嫌一つでどうとでもされてしまう人間の無力感というか、被征服感というか、え、なにこれ、良……
その時の私は台本って全部演者さんが書いてるものだと思っていたのですが、ふと動画説明欄を見ると
「シナリオ:○○」
と書いてあるではありませんか。ほうほう、どうやら調べたらフリー台本師というものがあるらしい。え、それって、私にも書ける……ってコト!?
というわけで書き始めました。
唐突に思われるかもしれませんが、もともと小説を書いていた身なので割と参入障壁は低かったです。なんなら地の文が書けなさすぎて台詞のみの小説を書いていたので「あれ、これ実質台本じゃね?」と思ってすんなり台本書きデビューしました。
推し配信者さんに採用されることを目標に頑張るぞ!……と思ってたら1ヵ月ちょいくらいで採用していただいて、しかもなんか結構伸びちゃって。脳汁でまくっちゃって、「しゃ、しゃあないな、もう少し続けたるか……」で続けてます。
台本制作秘話
このコーナーではあまにが書いた台本の制作秘話を語っていくよ!
今回紹介する作品は~~~コレ!
台本:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19421401
なぜ記念すべき1本目の記事にこれを選んだかというと、自分が一番上手く書けたと思っている台本だからです。
……いや、再生数的にはもっと伸びてる台本もあるのですが、あっちは演者さんに大分改変していただいたおかげで伸びたというか、純粋に自分の実力とはいえないというか、ごにょごにょ……。まあ色々あって、一番上手く書けたと自信を持って言えるのはこの台本です。
どういう気持ちで書き始めたか
口では愚痴を言いながらも、それとは裏腹に丁寧に耳かきしてくれるやつ。好き好き大好き。ツンデレかな?それってツンデレだね。
……え、ツンデレ?いや、まあツンデレって言われたらそうなんだけど、その四文字で済ませたくない機微があるじゃん?「私は東京在住です。」って言って「貴方は地球に住んでるんですね。」って返されたらどう思う?ねえ、どんな気持ち?リコリスリ〇イルの作者さんが「リコリコは百合じゃない!」ってキレたっていう話があるけど、私はあの気持ちわかるよ。いや、まあ百合ではあるんだけど、百合という二文字に表せない「良さ」を表現するためにあの作品を作ったわけじゃん?多分。それと同じだと思うんだよね。……まあ、でも呼び名がないのは不便か。名前がないゆえに説明されることなくこのヘキが衰退していくのを見たくはないし、不本意だけどこの呼び方を受け入れるしかないか……
……はい、ツンデレです。
まあ、要するに口では愚痴を言いながらも、それとは裏腹に丁寧に耳かきしてくれるやつが欲しいけど無かったから自分で書くか。ということです。
こだわりポイント
台本を引用しながらこだわりポイントを解説していきます。
ノータイム耳かき!お互い慣れてる感じが出てますね!熟年夫婦のようなツーカー感。
しかもなんだかんだ愚痴りながらもお布団敷いて待ってくれてる優しさ!
お狐様ー!俺だー!!結婚してくれーーー!!!
いやあ、いいですね。主人公の耳かきジャンキー感と、それに愚痴を言えるほどお互い気を許した関係なんだなあという感じ。
こんなにグチグチいいながら、丁寧に耳かきしてくれるんだぜ……最高だろ……
おま、さっきまで愚痴言っときながら、好きなところ覚えててくれて、しかもそこをたっぷりやってくれるんですか!?………………好き。
照れ隠しの「毎日してりゃあ嫌でも覚えます」が最高ですね。
ここも、気を許した仲だからこその愚痴という感じが心地よいですね。
「可愛いよ」っていうフォローに「そりゃあんたにとっちゃ可愛いでしょうよ」って呆れて返してくるところも、安っぽくなさ、長年生きてきた高貴さが感じられますね。
後半の部分も良い。昔の姿を自慢げに話すお狐様と、耳かきしか頭にない主人公。コメディーチックなやりとりとともに呆れられるシーン。こんなに呆れても、耳かきは丁寧にしてくれるんだぜ……最高だよな……。
ここから少し雰囲気がシリアスになりますね。
主人公は多分なんか前職でトラブルがあって、今無職なのかな?
主人公の身を案じて聞いてくるところと、悪いことを聞いたと思ったのか心なし当たりが柔らかくなるところ、お狐様のそこはかとない優しさが表れていますね。
最後の一文が皮肉ながらも、信仰を失って無力になったお狐様の哀愁を含んでいて、個人的に好きなセリフです。
慰めに好きなとこやってくれるお狐様!好きだー!!結婚してくれーーー!!!
耳かき台本は基本左右対称な必要があります。前半で好きなところを集中的に行うというシーンがあった都合上、後半でも同様のシーンを入れる必要があったのですが、それを上手く回収していますね。ちょっとメタ的ですが技巧的なシーンです。
ここマジで一番のこだわりポイント。山を登ってきた主人公と、耳かきをしている自分を重ねて、主人公を励ましてくれます。一見無駄に見える時間も、人生には必要なんだと。長い時間を生きてきたこその教訓のようなものを感じるとともに、やんわりと主人公を励ましてくれる神様の優しさよ。
「そうか……信仰を失って消えかけている神様の方が大変な状況なんだ。それなのに私を気遣って励ましてくれるなんて……」
と、ここの台詞は書いてて自分で感動して泣きました。
あんただけの神様、やったげますよ。
最後にちょっとだけデレてくれるお狐様!俺だー!!結婚してくれー!!!
……なんか結局ほとんど全部こだわりポイントになってしまった。
まあ、それだけこだわりポイントがぎっちぎちに詰まった渾身の作品だということです。
良い台本を書くには?
ここから真面目な話になります。
この台本をどのように書いたかを例に出しながら、台本の書き方を言語化してみたいと思います。まあ、あくまで私の考え方なので参考までに。
まず、良い台本というのは、必要なシーンがぎっちぎちに詰まっていて無駄がありません。他愛のないシーンだと思っても、そこには必ず意味があります。ですから、作品を鑑賞するときはこのシーンをどういう必要から入れているのか、あるいは自分で作品を作るときはこのシーンをどういう必要から入れるのか、を意識することが重要です。
では必要なシーンとは具体的に何かというと
「世界観やキャラの説明を自然に行えるシーン」
です。
「私は優しい人間です。」なんてキャラに言わせるのは不自然ですよね。そうではなくて、そのキャラに猫を救わせるシーンを入れる。それによって優しさを表現できるし、「猫を救ったから次こうなった」という展開にもつながります。
まあ、コレ一つだけ言うと当たり前なのですが、コレを如何に密接に無駄なく繋げて台本を構成するかが良い台本を書くキモです。
プロットの書き方
例として先ほどの台本をどう書いたかを挙げてみます。
まず、次の二つの要素から出発します。
口では愚痴を言うけど、根は優しい
山奥の神社の狐の神様がいいな
この二つは完全に趣味です。特に理由なく欲望に忠実に案を出しました。
この二つの要素を核に、必要なシーンを追加していくことを考えましょう。必要なシーンを追加するには
「なぜこのキャラはこういう行動をしているのか。」
「このキャラだったらどう行動するか。」
「世界観を説明するにはどういうシーンを入れればよいか。」
を考えます。
上の例で言うと
という感じです。あるいは
などです。
はい、これで要素が一つ増えました
口では愚痴を言うけど、根は優しい
山奥の神社の狐の神様がいいな
主人公は毎日通って捧げものをしている ←new!
こんな感じで、既にある要素から、それを説明するために必要な要素を考えて追加していく、この繰り返しです。まあ、なんだかんだ長ったらしく言いましたが、言ってしまえば連想ゲームですね。
もう少し上手い方法として、コンボを決めるという方法もあります。例えば以下です。
上では「口では愚痴を言うけど、根は優しい」という要素と「主人公は毎日通って捧げものをしている」という既存の二要素を説明するシーンを考えています。つまり 1 シーンで 2 つの説明を同時にできているのです。こういうシーンを思いついたとき、私の頭の中の右上のほうに 2 Combo!! という表示が浮かびます。
ここまでをまとめると、台本はパズルゲームです。既存の要素を説明する要素をどんどん追加していきます。一気に二つ以上の要素を説明出来たらコンボ達成です。できるだけコンボをつないでハイスコアを目指しましょう。
参考までに、私が台本の残りの部分をどういうふうに埋めたかを以下に記載します。
はい、なんか途中「あるある」とか「言わせたいセリフ」が入りました。既存の要素から上手い要素を追加できないと思ったら「あるある」や「言わせたいセリフ」を入れるのもアリです。ただ、これらが他の要素と独立してしまうと、必要ない要素になってしまうので、既存の要素と上手く Combo させるように要素を追加するのがキモです。
なんか感覚的な話になっちゃいましたが、要するに
困ったら「あるある」や「言わせたいセリフ」を追加するのもいいよ
でもそれが他の要素と自然に繋がるようなシーンを追加してね
ってことです。まあ、言ってしまえば当たり前のことですね。
以上の構想をまとめて、次のようなプロットが出来ます。
主人公が来るのを布団を敷いて待ってくれている
常連なのですぐに耳かき開始
さびれた山奥であることの説明セリフ
主人公が毎日通って捧げものをしていることの説明セリフ
主人公が耳かきで好きなところを重点的にやってくれる
梵天を見て、昔は立派な狐の姿だったことを愚痴る
主人公が狐の姿でも耳かきして欲しいと言ってきて、あきれる
褒められておまけに耳ふーしてくれる
主人公が毎日来ることを心配する
(あ、もしかして無職か?)みたいなシーン
主人公と自分の境遇を重ねながら励ましてくれる
最後に「あんただけの神様やったげますよ。」で締め
これでプロットは完成です。我ながら無駄のない、必要なシーンがぎっちぎちに詰まった完璧なプロットが出来ましたね。あとはこれをもとにセリフに書き起こしていきます。
書き起こし
……え、ここからが分かんないって?ここからは……どうすればよいんでしょうね。私もわかりません。頑張ります。
書き起こしの部分は、なんか、セリフを考えるというよりは、「このキャラだったら次こう言うだろうな。」を繋げていく感じです。よく言われる、頭の中にキャラを置いて独りでに話させる感じ。「そんなこと言わないでしょ!」ってことを言い始めたら少し時間を巻き戻して、もう一度独りでに話させます。
……ごめんなさい、今回はプロットの言語化で力尽きました。次の機会があったら書き起こしの部分も言語化したいですね。
まとめ
プロットの書き方は
最初の要素を核に、説明に必要なシーンを付け加えていく。
「なぜこのキャラはこういう行動をしているのか。」「このキャラだったらどう行動するか。」「世界観を説明するにはどういうシーンを入れればよいか。」を考える。
一気に二つ以上の要素を説明できるシーンを入れてコンボを決めろ!
困ったら「あるある」や「言わせたいセリフ」を追加するのもアリ。でも不必要な要素になってしまわないように、他の要素と自然に繋ぐシーンを追加すること。
書き起こしの仕方はよくわかんない。「頭の中にキャラを置いて独りでに話させる。」って言う感じ。いずれ言語化を試みてみるかも。