【沖縄移住日記】人質となった髪
私は美容師が苦手だ。前回の投稿に引き続き、嫌い嫌い言って申し訳ない。
先日、美容院で縮毛矯正とカットをお願いした。縮毛矯正は施術工程が多く、カットと併せると約3時間半、あの上下に動く椅子に拘束されることになる。
行きつけの美容院が予約でいっぱいだったため、やむを得ず、たまたま枠が空いていた、行ったことのない美容院へ行くことにした。
人当たりの良さそうな、50歳前後の女性が出迎えてくれた。店内にはその美容師と私の2人きり。施術が始まる。
「TikTokやってます?」
TikTokは私より下の世代の若者が使うアプリ。そういう認識だったため、彼女からその単語が出るとは思わず、戸惑った。私の固定概念に亀裂が走った。
「TikTokライトでポイ活してるんですよ〜」
ちょっと安心した。
しかし私の経験上、お金に関する話をしてくる美容師は地雷だ。まだそう断定するには早計だが、幸先不安である。私は今、カンボジアの地雷原に立っている。
「前のTikTokは動画が勝手に流れてたんですけど今は…だからずっと動画見ないといけなくて〜」
ずっとTikTokの話をしている。正直、若者アプリのことは全く分からないので、会話(というよりお経)の隙を見て、来客用のタブレットに手を伸ばす。
「今仕事どうしようかなって思ってて、そろそろ手術するんです」
動画を見ているのに何故話しかける。でもちょっと気になる。美容師TikTokお経 feat. 私による合いの手から、ようやく会話になった。
「手が腱鞘炎になってしまって」
彼女によると、腱鞘炎に悩まされる美容師は多く、長く続けている美容師は数少ないのだそうだ。確かに、薬液で手が荒れて辞める美容師がいることも聞いたことがある。大変な職業だ。
シャンプー台に移動。目に紙を掛けられる。このシャンプー台の上で、疑惑が徐々に確信へと姿を変えていく。
①目元だけに紙を掛けられたため、顔に水飛沫が飛んでくる。顔全体を覆うのは気まずいからではなく、その対策だったのかと気づく。それと、目元だけ伏せられると見た目が白いARuFaなのでやめて欲しい。北海道に売ってそう。
②頭をバンバンされる。恐らくシャンプーする力が強いだけなのだろうが、叩かれるたびに体が上下する。この瞬間から、私はあの椅子の化身となった。
③耳を執拗にグリグリされる。タオル越しに、遠慮なく。親父にもグられたことないのに。
全ての施術が終わる頃にはもう、私には脚がなかった。
比較的ライトな内容を書き連ねたが、この他にも目に余る発言などがあり、3時間半があまりにも長く感じられた。
もしこの不快感を露わにしたら、どうなるだろうか。無愛想な客に、冷たく対応する店員がいるように、美容師も同じ人間である。
「お客様の髪質が…」を口実に、わざと手を抜くことだって、指定された長さよりも短く切ることだって、彼ら美容師にはできてしまう。私たちの髪の運命は、美容師の気分に握られている。のだと思う。
だから私は逆らえない、この美容師と客という関係性が苦手だ。静かに椅子に座り、鏡に映る自分を眺めながら、ただ黙って変化を受け入れるしかないこの瞬間が、私には耐えられないほど重い。
タイトルの沖縄移住、関係ないな。