
57歳米留学・就職・永住権取得記(3) 海外就活きっかけ
53歳。震災後に始めた海外就活は、不合格の連続だった…。
ここで振り出しに戻る。つまり私が57歳で、どうやってアメリカ留学を実現させたか、順を追って具体的に書いていく。その後、アメリカで就職し(59歳)、永住権も取得した(61歳)ので、それまでの経緯も併せてご紹介する。
実は、留学活動の前に、海外就活から話は始まる。
当時私は、高校の国語教師として働き始めてから32年目を迎えていた。公務員だったため、職業自体は安定しているしやり甲斐もあった。しかしいつかは海外で働いてみたいと、なんとなく思い続けていたのである。とはいえ、日本の教員は超多忙。夢を実現する具体策を考える暇もなく、週末も正月もない、仕事漬けの生活に流される日々を送っていた。
そして「その時」がついに来たのは、東日本大震災の直後だった。私の家は原発に近いため、第二のフクシマは30年以内に確実に来るだろうと痛烈に思ったのである。
私は海外就活を始めた。一刻も早く、海外に避難したいと思ったからだ。
そこで、海外の学校が出す「教員募集」のネット広告を探し、一人で世界中に自分の履歴書を送り続けたのは2012年ころ(当時53歳)。めっちゃ大変だった。あんまり大変だったので、英語の先生二人に手伝ってもらうことにした。教員募集広告の検索は、日本人の先生に。履歴書と志望動機書の作成はアメリカ人の先生に。しかし、結局50件以上は落ちたと思う。もしかしたら、80件くらいかもしれない。とにかく、送っても送っても落ちた。
「数打ちゃ当たるよ 人生は」とか、「買わないと 当たらないのは 宝くじ」などと、私は軽く考えていたのだが、今考えれば大きな間違い。落ちるのは当然のことで、落選の主な理由は、海外就労ビザを持っていなかったからである。就労ビザか永住権がなければ、外国人は働けない。ないのなら、それをサポートする企業、つまり、「貴方のために就労ビザを取ってあげますよ」と言ってくれる企業を探さなければ就職できないということだ。言い方を変えれば、自分にそれだけ特別な技術・能力がなければ、採用されないということである。
多くの海外企業は、現地に住んでいる人を採用する。例えば、アメリカに存在する学校が日本語の教師を探しているのであれば、アメリカ永住権を持っている日本人、またはアメリカ国籍の日本人で日本語を話し、アメリカに住んでいる人をまず採用する。その方が会社として手続きが超簡単だし、経済的支出(ビザ担当の弁護士費用・各種書類提出に関わる実費負担)がないからだ。
落胆が続いていた日々…。
そんなある日、私は姉の松子様に、
「ちょっとぉ。私、死ぬ前に一度はニューヨークに行ってみたいんだけど、あんた、私を連れてってくれない?」
と言われたのである。
「え? ニューヨークぅ?」
私は気が進まなかった。と言うのも、ニューヨークには既に何度も行ったことがあったし、仕事は忙しいし、要求が多い松子様の御守りはめんどくさそうだしで、ずっと返事を延ばしていたのであった。
しかし、松子様があんまり何度も言うので、ついに断り切れなくなった。そして2017年のゴールデンウイーク(私は、当時57歳)に、ついに二人で行くことに決まった。まさかそれが、私の一生を変えることになるとは、夢にも思わずに。。。