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短文∶爆破の銛の官界の果て

仙台フォーラムにて、タイ発の気鋭の映画監督、アピチャートポン・ウィーラーセタクン最新作『メモリア』に接近遭遇した。人生初のレイト・ショー。

いやア……こんなに始終身体が強張る映画ってあるんか。
いつまた爆発音がジェシカの脳内に響くやら、気が気じゃない。『進撃の巨人』のミカサの頭痛より無秩序だ。脳内爆発音だけでもお腹いっぱいだのに、席からおもわず尻が浮く仰天ギミックはほかにも山盛り。さっき突き刺された鋭利な銛をようやく抜き、止血したところでまた投げつけてくる。映像は少しもグロテスクじゃないのに観客サイドは大わらわ。
同じアピチャートポン監督のチョー眠いチョー快適傑作『ブンミおじさんの森』がみせてくれたハイパー催眠映像をふたたび体験するんだろうなと決めてかかっていただけに、ひっくり返った。恐怖でぐつぐつ加熱されて脳がひどく過敏になるわ、固く封じ込めておいたはずの暗い記憶が甦るわ、たいへん賑やかな官界をさまよった。

そして、こんなにも理解した気にならない映画ってあるんか。
あー、あれってそういう伏線なのかぁ、とか、そういう意味かぁ、とか、気取ったことを少しも云えない。口ぽかん。いちおうパンフレットは買い求めたけれど多くは期待していない。この映画にゃ金田一耕助が出る幕は無い。つまり、わからん!を浴びる二時間でしたわ。理解じゃない次元に跳躍して接触するべき作品なんだとおもいます。

ぎゅっと瞑った瞼の裏に、映像の断片がチカチカ明滅する。そして、なにか語ろうとする。あの映画はきっと、観客が脳裡で再構成して完成する。少なくとも再構成によって今一度輝くものだ。
妙な経験・記憶の贈り物を背負い込んでしまった。
トホホ。明日早朝から研究室の読書会あるのに……


追記……
ky.o9様の記事のタイトルの母音を換骨奪胎して書きました。
老婆心ながら、『メモリア』、明日朝10時から京都・出町柳で上映されるそうです。よろしければ御高覧あそばせ。




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I.M.O.
I.M.O.の蔵書から書物を1冊、ご紹介。 📚 かくれた次元/エドワード・ホール(日高敏隆・佐藤信行訳)