見出し画像

毎日の動詞


泳ぐ
市民プール、できれば海

歩く
なにはなくとも

走る
朝焼けの頃、あるいは日が没する頃合い、心臓をためす

乗る
自転車固有の速度、原付固有の速度、自動車固有の速度、電車固有の速度

読む
思うに、どんな日でも読めないことはなくて、なにを手に取るか

書く
文字にしそこねたものを私は全て忘れていくようで

食う
要諦は腹をしっかり空かせたのちの、やはり八分目

黙る
目をつむって口を閉ざし指を組み、静止する時間をつくる

寝る
おろそかにしてはいけないもの、おろそかになりやすきもの

洗う
泡だてて、徹底的に洗い落とせばいいわけではなくて

踊る
日常の挙動を律するのとは異なる様式の環世界をインストールすること

学ぶ
絶対的に「外」なる言語や「異」なる文化、「他」なる者はきっとない

働く
案に相違して、からだは要請におうじて能く動くことを知る

作る
料理はいちばん身近なものづくり

話す
定型と常套のことばを使ってはいまいか

弾く
楽器もひとつの言語

飲む
お茶、お酒、お水、あたまに「お」を付したくなるもの

去る
要らないはずの習慣の惰性に気づいたら

消す
電気、気配、足音、匂い、つまり境界

憩う
衝動に走るとき、果たして真に貪欲であれているか省みる

想う
明日のこと、遠くの予定、そしてたまには千年のさき

唄う
折坂悠太だったり、カラスの啼き声だったり

刺す
成果までの距離が果てしなく遠く、霞みさえする刺繍を日々の営みに

描く
ここでも、ほかから抜きん出た成果を急がないように

買う
つかれない贅沢である限りにおいて大胆に

掃く
はだしで快くすごせたらよし

企む
いまは、高級ブティックをおばけ屋敷に見立ててハシゴする計画を

遊ぶ
ふだんと違う規則に従い演じていると心身の凝りはほぐれる

着る
家を発つまでの時間いっぱい悩むぐらいの冒険

嗅ぐ
香りは過去を再生する栞

佇む
なにもしないでいることは摩耗しがちな行為の真価を彫り出す

触る
土、葉、幹、壁、手すり、石、金属、食器、猫




いいなと思ったら応援しよう!

I.M.O.
I.M.O.の蔵書から書物を1冊、ご紹介。 📚 かくれた次元/エドワード・ホール(日高敏隆・佐藤信行訳)

この記事が参加している募集