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僕たちが「笑い」を大事にしているわけ
こんにちは、いもいも表コミの古谷(あき)です。
ずいぶん久しぶりのnoteになってしまいました。
表コミの授業の様子については、最近は「みとけんとあきの表コミラジオ」というPodcastで配信しています。移動中や作業のお供に、ぜひ聴いていただければ幸いです。
今後、こちらのnoteでは、生徒の様子を踏まえつつ、授業について考えていることを少し深掘りして書いていこうと思います。
今回は表コミの大きな大きな要素のひとつである、「笑い」についてです。
ビビディビビディバ!
「ビビディビビディバ」というワークがあります。
輪になって真ん中にオニ立ち、一人一人に向けて「ビビディビビディバッ!」か「バッ!」と言っていきます。「ビビディビビディバッ!」と言われたら言い終わる前に「バッ!」と言い返す。「バッ!」と言われたら何も言わない。間違えたらオニ交代。これだけのシンプルなワークです。
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要は反射神経と駆け引きのワーク。でも本質はそこではありません。
このワークを僕らが繰り返し行う理由は、このワークで巻き起こる「笑い」にあります。
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本気の失敗は面白い
信じられないかもしれませんが……こんなシンプルなゲームに、生徒たちは平気で30分以上熱中します。終わる頃にはみんな笑い疲れてクタクタ。一時休憩ということで椅子に座って、水分補給をして…そして教室の各所で、「ビビディビビディバ。」「バ。」と、毛繕いのような延長戦が始まります(笑)
彼らがそれほどまでに夢中になるこのゲームの醍醐味。それは、「ビビディビビディバッ!」「バッ!」という応酬の後に起こる誰かの失敗と、それに伴う「笑い」です。
その笑いは、「失敗を笑う」という言葉で連想される冷たい攻撃的な笑いではなく、受け入れ承認する暖かい笑いです。
そこにある本質は、「本気の失敗の面白さ」だと思います。
失敗しないように本気で取り組む。それなのに、失敗する。だから、リアクションに素が出る。その素が魅力的で面白くて、笑いが起こる。
これが、このワークで起こっていることだと思うのです。
「本気で取り組んだことに失敗する」というのは、ショックなことだし怖いことです。
でもそれは、実はその失敗に「自分自身への評価」が直結する(あるいは、直結すると思い込んでいる)からかもしれません。本当に恐れているのは、失敗自体ではなく、それによって生じる評価なのではないでしょうか。
そんな評価を外してしまえば、本気の失敗は面白い。
ここで起こる失敗は、あなたの評価を下げるものではない。
むしろ、そんな失敗をしているあなたのことを、みんな愛おしいと思っている。
だから、本気になって大丈夫。失敗して大丈夫。
「ビビディビビディバ」の笑いに自然とこめられているのは、そんなメッセージなのではないでしょうか。
そして、そんなメッセージを受け取っているからこそ、失敗でみんなが笑っているとき、失敗した張本人が誰よりも笑っているのだと思います。
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その証拠に。
このワークを一気に面白くなくする2つの方法があります。「適当に流して取り組む」ことと、「気を遣って失敗をなかったことにする」ことです。これらが起こったとき、如実にその場の温度は下がり、笑いの量もガクンと減ります。
前者は、本気にならないということですから、失敗で心が動きません。だからリアクションもないし、素も出ない。
後者は、「失敗を指摘したらかわいそう」という価値観を持ち込むことです。これは優しさのようで、実は成功失敗で人を評価していることに他なりません。
失敗したくないと本気になること、失敗を許容せずしっかり指摘すること。
これらが逆説的に、「失敗しても大丈夫」というメッセージになる。面白い現象だなぁと思います。
「笑い」の強さ
前章で書いた、ビビディビビディバの笑いに込められたメッセージ。
これが言葉ではなく「笑い」に込められていることが、このワークの強さだと思っています。
笑いは直感的です。僕らは笑うとき、なぜ笑うのか、なぜそれを面白いと思うのか、いちいち考えて笑っていません。笑った後でさえ、なぜ笑ったかを説明できないことの方が多い。「だって面白いから」というトートロジーが、笑った理由においては不思議と成立します。
そして重要なのが、誰もが自身の経験を通して、笑いとはそういうものだと知っているということです。
つまり、笑いによって承認されたとき、僕らはそれが理屈じゃない直感的なものであることを知っています。笑っているその人が、理屈ではなく感覚で、嘘偽りなく承認していることがわかるのです。
だから、失敗した張本人も、すぐに一緒に笑い出すのだと思います。
誰かの言動を、面白いもの、魅力的なものとして好意的に受け入れ、笑う。
その笑いを受け取って、本人も自分の言動を受け入れ、一緒になって笑う。
笑い合うことによって、他者を受け入れ、自己を受け入れ、繋がり合う。
「ビビディビビディバ」に限らず、表コミで起きている笑いはこういった受け入れ合う笑い、人と繋がる笑いです。
これだけのことを、理屈も言葉も抜きで、感覚的に訴えかけてくる「笑い」の強さ。
これが、僕たちが「笑い」を大事にしている理由です。
表コミの生徒たちはそんな授業を受け取って、意識的にか無意識にか、よく笑うようになります。自分の外にあるものを笑って歓待するその姿勢は、日々を楽しく生きるコツであり、学びの土台です。
一方で、気をつけなければいけないこと
笑いは強力なものだからこそ、攻撃的な感情と結びついたとき、簡単に凶器にもなります。
だからこそ、僕たちは笑いの種類については細心の注意を払っています。
今起きている笑いはどういう笑いなのか、今笑われている張本人はどう感じているのか、このワークで起きる笑いはどんな笑いなのか……
常に常に気をつけているということを、最後に付記しておこうと思います。
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