アンデュオリシ「水平線を往く君よ」
このシナリオは科学博物館の開館式に招かれたふたりが広大無辺な異界に取り残される静かめのものです。求められるのは、標なき荒野を進む意思。
所要時間:1時間
シナリオの公開:OK
推奨する関係性:特になし
異界の発生原因:捉えきれないほど広大な世界への根源的な恐怖
本作は「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『アンサング・デュエット』の二次創作です。
(C)Fuyu Takizato / Draconian
(C)KADOKAWA
あらすじ
このシナリオでは、バインダーとシフターが科学博物館(イメージは国立科学博物館)の開館式に招かれます。一般公募に当選した、出資者としてオープニングセレモニーに出席したなど好きな理由を設定してください。本日は特別開館なので入場者は限られており、少し寂しい印象を受けるほどです。
人のまばらな科学博物館を巡ったのち、ふたりはプラネタリウムへと向かいます。しかし上映は始まらず、果てのない宇宙にふたりは取り残されましまいます。できることは、遥か彼方に揺らぐ避難誘導灯を目指すのみ―――
チャプター0「科学の子」
異界深度4
状況説明:ふたりが科学博物館を訪れたところから物語は始まります。
朝のオープニングセレモニーでこそ多くの関係者や報道が集まりましたが、ほとんどの人は短いセレモニーが終わると帰っていき、広い館内に人はまばらです。
博物館は国の事業で建てられた立派なもので、動物のはく製や恐竜の骨格標本、飛行機やロケット、江戸時代の天球図など様々な展示が常設されています。
判定:このチャプターに判定はありません。適度にロールプレイを楽しんだ後、GMは結末を読み上げ、次のチャプターへ進んでください。
結末:この科学館の目玉は最新のプラネタリウム。今回のプログラムに他の観客はおらず、星空をふたり占めできそうだ。しかし、開始のブザーが鳴り劇場内が暗転しても上映は始まらない。暗闇の中で座っていた椅子が溶けるように消え、プールの底に潜ったかのように体がフワリと浮くような感覚を覚える。それはまるで宇宙に放り出されたかのような感覚だった。
チャプター1「センス・オブ・ワンダー」
異界深度5
状況説明:暗闇の中、遥か彼方に光の点が見える。星なのだろうか、あまりにも頼りない光だ。床を蹴る感覚も不確かで自分が前進しているのかも定かではない。二人の声以外はなにも聞こえずまるで無音室にいるかのようだ。少し息苦しさを感じ、酸素が失われていっているのではないかという考えが頭をよぎる。
手を繋ぐ:このチャプターでは、ふたりが接触することで以下のものが見えるようになります。
・遥か彼方に避難誘導灯の灯りがかすかに揺らめいている。
判定:「プラネタリウム出入口まで辿り着く」難易度5
・二人とも成功した
ふたりは息苦しさを感じながらも入場時に通った扉まで無事にたどり着くことができた。
・どちらか一方だけが成功した
無音の世界で自分の荒い呼吸がやけに大きく感じる。息苦しさがパニックを煽り、もはや避難誘導灯を見失ってしまう。パートナーがいなければどうなっていたか。なんとか入場時に通った扉まで辿り着くことができた。
失敗した方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントを「変異:恐怖→暗所が怖い」に変異させてください。その後、ロールプレイに進みます。
・二人とも失敗した
無音の世界で自分の荒い呼吸がやけに大きく感じる。息苦しさがパニックを煽り、もはや誘導灯を見失ってしまう。どちらに進めばよいのか、そもそも自分はどこを向いているのかも分からない。それでもがむしゃらに前に進み、何とか入場時に通った扉まで辿り着くことができた。
ふたりはそれぞれ、フラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントを「変異:恐怖→暗所が怖い」に変異させてください。その後、ロールプレイに進みます。
結末:扉の引手を引いた瞬間、大量の水がどっと流れ込んでくる。二人は勢いのまま流されてしまう。
チャプター2「しんかい」
異界深度6
状況説明:大量の水に流されたふたり。ゆっくりと目を開くと、そこは暗い海の中だった。発光するちいさな魚が周囲を漂っている。不思議と息苦しさは感じなくなっており、互いの声も聞こえるようだ。口から漏れ出た気泡がこぽこぽと昇ってゆき、やがて見えなくなる。足元には陽の光の届かない深海が続いており底は見えない。体がゆっくりと沈んでいくのを感じる。
手を繋ぐ:このチャプターでは、ふたりが接触することで以下のものが見えるようになる。
・足元の暗闇の中にかすかに見える、大口を開ける巨大な魚影。
判定:「水面まで泳ぎ切る」難易度6
・二人とも成功した
無事に水面まで泳ぎ切ることができた。
・どちらか一方だけが成功した
身体が重くなるのを感じたが、なんとか水面まで泳ぎ切ることができた。
失敗した方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントを「変異:硬直→関節の動きが固くなる」に変異させてください。その後、ロールプレイに進みます。
・二人とも失敗した
身体に異常を感じ、水底に沈むパートナーを想像してしまう。しかしなんとか水面まで泳ぎ切ることができた。
ふたりはそれぞれ、フラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントを下記から一つ選んで変異させてください
バインダーの場合「変異:硬直→関節の動きが固くなる」
シフターの場合「変異:幻想化→魚の瞳」
その後、ロールプレイに進みます。
結末:水面から顔を出すと白い砂浜が広がっているのが見える。砂浜まで泳いでいけば地面に上がることができホッと息をつく。しかしいずれ気が付くだろう、それは白い砂浜ではなく積みあがった白骨であることを。
チャプター3「ボーン・ティル・ドーン」
異界深度7
状況説明:動物、魚、そして人間の白骨は視界の続く限り広がっている。後ろを振り返れば先ほどまで泳いでいた海はなく、白骨の地平線が広がるのみ。空では月と太陽が高速で昇り沈みを繰り返しており、空は赤く染まっている。
手を繋ぐ:このチャプターでは、ふたりが接触することで以下のものが見えるようになります。
・白骨の今際の姿が見える。何かを語りかけるかのように口を開閉しているが何を言っているかは解らない。
判定:「道標もない白骨の荒野を進む」難易度7
・二人とも成功した
時間感覚すら曖昧な世界でふたりは元の世界に帰ることをあきらめずに歩き続けた。
・どちらか一方だけが成功した
本当に歩く先に出口はあるのか?むしろ遠ざかっているのでは?疑念と憔悴がまとわりついて離れない。それでもこの何もない世界で確かなのはとなりに立つパートナーだけだ。その存在を感じながらふたりは歩き続けた。
失敗した方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントをルルブp.114記載の「変異表:体調の変化」からランダムに一つ選び、変異させてください。その後、ロールプレイに進みます。
・ふたりとも失敗した
本当に歩く先に出口はあるのか?むしろ遠ざかっているのでは?疑念と憔悴がまとわりついて離れない。この何もない世界ではとなりに立つパートナーですら蜃気楼のように揺らぐ。足を止めることへの不安から逃げるようにふたりは歩き続けた。
ふたりのはそれぞれ、フラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、フラグメントをルルブp.114記載の「変異表:体調の変化」からランダムに一つ選び、変異させてください。その後、ロールプレイに進みます。
結末:どれほどの時間を歩いただろう。歩き続けるにつれ、世界がゆっくりと白く染まっていくのを感じる。視界が真っ白になったとき、二人は意識を失った。
ファイナルチャプター「たいおん」
異界深度8
状況説明:意識を取り戻したふたりが目を開いても、そこは暗闇のままだった。見ることはできないが、どうやら膝を抱えて座り込んでいたようだ。床は柔らかく温かい。耳を澄ますと、遠くからとくんとくんと心音が聞こえる気がする。安堵、心地よさ、まどろみ…。このまま溶けてしまえたら幸せかもしれない、そんな考えが頭をよぎる。手を伸ばすと隣でパートナーが同じような姿勢で座っているのが解る。
手を繋ぐ:このチャプターでは、ふたりが手を繋ぐことで以下のものが見えるようになります。
・ふたりの繋いだ手の中から微かな光が漏れる。それはちいさなちいさな異界のひびわれだ。とても人間が通れる大きさではないが、ふたりで元の世界に戻るという意志だけがそのひびわれを広げるだろう。
判定:「元の世界に戻ると強く望む」難易度:8
※この判定は「ふたりとも成功した」になるまで終わりません。
・ふたりとも成功した
ふたりの強い意志はまどろみの誘惑を払い、異界のひびわれは大きく広がった。あとは立ち上がって潜り抜けるだけだ。
・どちらか片方が失敗した
元の世界に戻る、そう願っているはずなのに異界のひびわれは大きさを変えない。自分に迷いがあるのか?それとも……
どちらか一方のフラグメントボックスからフラグメントを1個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、ルルブp.115記載の「変異表:精神」からランダムに一つ選び、変異させてください。
・ふたりとも失敗した
元の世界に戻る、そう願っているはずなのに異界のひびわれは大きさを変えない。解っている、自分にまだ迷いがあることを。
どちらか一方のフラグメントボックスからフラグメントを2個選び、「忘却」にチェックを入れてください。次に、ルルブp.115記載の「変異表:精神」「変異表:幻想化」からそれぞれランダムに一つづつ選び、変異させてください。
結末:ふたりが異界のひびわれに飛び込むと、元の世界に戻ることができる。誰もいないプラネタリウムの座席で意識を取り戻し、隣にはパートナーも座っている。
アフタートーク
結末の分岐、変異への抵抗の処理を行ってください。
結末の描写:閉館時間を知らせるアナウンスが聞こえる。慌てて出口へと向かうと、足の竦んだ様子の泣顔の少年の腕を引く母親の姿が視界に入る。た理解を超えるほど広大な世界に初めて触れてショックを受けた少年は軽いパニックに陥っているのだ。なんにせよ、ふたりは生還することができた。まずは、おめでとうございます。
最後にフラグメントの追加の処理を行ってください。