映画ノート①『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
観た映画の記録です。今回は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(Manchester by the Sea)🚢
いきなり関係ないことを言いますが、この間22歳になりました。🎂
わたしはミーハーな人間なので、映画やら小説やら短歌やら漢詩やらクラシックやらバンドやら昭和歌謡やら、色んなものを広く浅く好きですが、どれもマニアと言えるほどじゃありません。
でも、誕生日を迎えて初めて観る映画はなんとなくいつも神妙な気持ちで選んでしまいます…占いのような、抱負のような…おみくじ感覚で、えいっと選びます。
去年、21歳の映画初めは『風と共に去りぬ』🌬、本当に本当に大好きで、いつかちゃんと語りたいな。
そして22歳の映画初めがこの『マンチェスター・バイ・ザ・シー』です。
端的に、よかった。好きです。
この映画のマンチェスターは有名なイギリスの方じゃなく、アメリカの港町マンチェスター。
映画を観ること自体すごく久しぶりで、少し気を張って見始めたのですが、オープニングのどこかレトロな色合いの静かな海を見て、「なんか大丈夫そう」と強張っていた心がふっとほぐれていきました。
もしかしたら見てる人がいるかもしれないから、一応簡単にあらすじを紹介します。
実兄が亡くなり、急遽高校生の甥っ子の面倒を見ることになった主人公リー。
リーはいつも投げやりで、あえて人と親しくなる機会を放棄するような、やさぐれた所のある中年男なのですが、これには悲しい理由がありました。
その悲しい思い出が染み付いたマンチェスターに突然戻ることになったリーと、父を失った甥っ子のパトリック、人の良かった兄のジョー、リーの前妻のランディらを中心に過去と現在がランダムに混じり合いながら丁寧に描写されます。
淡々としていながらもドラマティックで、作品全体に悲しみとやるせなさ、痛みがありながら、鑑賞後の気持ちはむしろ温かい作品でした。
うらぶれて、寒く、寂しい青が似合う港町マンチェスターと、物語に滲む登場人物たちの悲しみや優しさが響きあって、こちらの心も静かに静かに揺さぶられます。
これはネタバレになりますが、(ネタバレとかいう概念がそもそもあまり似合わないんだけども)主人公のリーが、結局はトラウマを乗り越えられないところがやっぱり良いんだよなぁと思います。
なんでも乗り越えてなんでも力にしていけたら、そりゃ本当は良いけど、実際はなかなか難しい。
逃げられるなら逃げたいし、逃げてるうちに大丈夫になることもあるかもしれないし、永久に無理かもしれない。
でもそれでいいじゃん。て、別にそれって悪いことじゃないし、人生色々で、時間もないようで意外とあって、日々は流れていくじゃん。て、そういう落とし所になんだか救われました。
やっぱ人間てダメダメだよなぁ、でも別にダメダメなまま生きてても、全否定することないよなぁ、それでもなんだかんだ生きていくんだよなぁって。
はっきり言って、響かない人には本当につまらなく思えるかもしれないんだけれど、……うーん、例えば、「めっちゃ楽しい!ヒャッハー!なんかおもろい映画でも観ようぜ、ドンチャンしたやつ!」って気分の時は絶対観ない方がいいんですけど、「なんか寝れないな、ちょっとお酒でも飲みながら深夜に一人映画でもすっか」って時にはめちゃめちゃおすすめです。
あと純粋に演技がめちゃめちゃ上手いし、音楽も好き◎チェロ弾きたくなりました🌬
観終わった時には、静かに寄せては返す波をひたすら眺めた後のように、穏やかな夜が訪れるのではないかと思います。