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月曜の雨の朝

保育園大好きっ子の次女ちゃん。
登園のお仕度が終わると、サッサとお部屋に行ってしまう。
「バイバイのハグ」をしようとしたら、腕をするりとすり抜けて、「もういく」「あそぶの」とつれないお返事。

いつもお部屋に駆け込むので、保育士さんに「ママに行ってらっしゃいした?」と促されて、お部屋の奥の遠くの方から「ばいばーい」とあっさり手を振るのがやっと。

そんな次女ちゃんが、今朝はお仕度終わったら「だっこぉ」。
お部屋の入口では、木登り中のサルのごとく、しがみついて離れない。
床に降ろすと、地団駄踏んでよじ登ってくる。

「ブロック?」
「塗り絵?」
「お絵かき?」
「パズル?」
「今日は、何して遊ぼうか?」

ありとあらゆる、この世の誘惑を並べてくる保育士さんを「いやだ」と一蹴。

「おかあさんがいい」
ありがとう。そうだね。
おかあさんも、次女ちゃんとずっと一緒にいたいけども、お仕事行かないと。期末だし。

「お友達、ブロックしてるよ?」
「○○ちゃんも遊んでるよ?」

保育士さんの差し出してくる手を払いのけて、母の身体によじ登り、脚を絡めて首を絞めて、離すまい、離れまいとしてくる。

「チャチャチャーとお仕事片付けて、早くお迎えにくるね」
まぁ、そんなこと言ったって、離れはしない。

そうじゃなくて。
今、くっついていたいんだもの。
咳が出て、眠くて、お母さんとくっついていたいだもの。
お迎えが、とかじゃなくて、今から離れなければいいじゃないの。


結局、説得しきれず、保育士さんに引きはがされて、大泣きして、バイバイした。


その一部始終を傍で見ていた長女は、スルリと、自由になった私の手を握り、保育園の階段を登る。

今朝は、なんだか妙に長女が静かだ。


にじがーにじがー
そらにかかって
きっとあしたは いいてんき


と、小声で長女が歌っていた。
ずきゅん。って、胸の奥が鳴った。マンガみたいに、ほんとに鳴るんだ。

中止になってしまった「おわかれの会」で歌う予定だったのかな。
長女が、その歌を歌うのを始めて聞いた。

最近は、ずっと「雪のペンキ屋さんがお空からチラチラ」だったから。

雨の月曜の朝、「じゃぁね」と声を掛けると、「はーい。ばいばーい」とあっさり私の手を離し、お部屋に「おはようございまーす」と入っていく長女の背が、あぁ、大きくなったなぁ、と余計にしんみりさせる。

別に、母を元気づけようと思ったわけでもなく、何となく口ずさんだだけだろうし、毎朝毎朝どっちが先だ、妹を抱っこしちゃダメだ、と喧嘩になるのに、今日に限ってはその喧嘩が一度も勃発せず、小説や映画だったら何のフラグなの?って疑いたくもなる。そんな日常。

フラグってことは無いだろうけど、仕事も暇なので、早めに帰宅して、今日のお迎えは私が買って出ようと思う。


前回、お迎えに行ったら、長女は私のお迎えが嬉し過ぎて、通りすがりのお友達のパパや保育士さん全員に「きょうは、おかあさんがきたよ」「おかあさん、ときどき、くるんだよ」って報告して回るものだから、あれ?この子、お母さんと一緒に暮らしてないのかな?って、心配されたパパさんも居たかもしれない。


離れがたい、月曜の朝もあるよね。

きっと、朝の出来事なんて忘れて、しっかり園生活を満喫しているんでしょうけれど、私の心の奥では、部屋の扉を閉めた後も響く大きな泣き声と、その泣き声をなぐさめるかのように、囁かれた「きっと、あしたは、いいてんき」が、ひたすらにリピートしている。

早く帰りたい、月曜の15時。

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