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後部座席から見える世界

次女は、見つけるのが得意だ。

軽自動車の後部座席から見える、小さな空。

「おかあさん、ぽてとたべたい」
マクドナルドの看板が見えたみたい。

「きてーちゃんが、じゃんけんぽんしてる」
キティちゃんの看板が、ピースサインしている看板が見えたみたい。

「あ。ぷーるだ!ぷーるいきたい!」
通っているスイミングスクールの看板が見えたのね。

「うさぎさんのおみせ、よろうよー」
西松屋の看板は、大きいよね。

「わんわん、ねてた!」
近所に住んでいる中型犬、怖くて近寄らないくせに、車の中から通りすがりに毎回動向をチェックしてる。怖くて近寄れないからこそ、の動向チェックなのかも。

「あ!おつきさま!」
これも、本当に多い。
晴れた昼間でも、夕暮れ時でも、彼女は、なぜかいつも月を気にしている。

「おつきさま、ついてくるよ!」
と慌てていた頃もあったのに。

「おつきさま、みえなくなっちゃった。かくれちゃったみたい」
と、今では残念そうに言う。

どんなに形や大きさが違っても、彼女は、月を見間違えたりしない。

絵本『おつきさまこんばんは』も大好きで、保育園にある、この絵本を何時間もずっと読んでました、なんてことも保育士さんから聞いたし、1歳半健診の間も、ずーっとこの絵本を読んでいた。

「おつきさま、あしがないねぇ」

ポツリ、と後部座席が呟いた一言に、くすりと笑みが零れた。
なんという、可愛らしい発想。
今、気づいたの?
あんなにいつもいつも気に掛けて眺めていたのに?



次女が言う。
「ねぇ。みちが、ちがうんじゃない?」

凄いね。
近道しようと思って、いつもと違う道に入ったの、よくわかったね。



軽自動車の後部座席の小さな窓から見える、外の世界。
身長90cmから見渡せる世界は、私に見えている世界よりも、ずっと広くて大きくて、もっとキラキラ輝いているよう。

羨ましくて。
微笑ましい。

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