かくれんぼ
「おかあさん、かくれんぼしよう」と3歳の長女に誘われた。
いいよ。
と、応えると「じゃぁ、おかあさんが鬼ね」と言われたので、顔を覆っていーち、にーい、と数え始める。
年少さんにもなると、ルールのある遊びも増え、『鬼ごっこ』『〇〇鬼』と言い出すことも多くなって、ついに『かくれんぼ』もルールを理解したんだなぁ、と嬉しくなる。
出来ることが増え、助けを求められることが減り、私の知らない景色が見て、ずーっと抱っこだった子が手を離れていく一抹の寂しさを覚える。
顔を覆う私に聞こえないようにコソコソっと「あっちに隠れよう!」と次女の手をひいて、ドドドッと走り去っていった気配がした。
ゆっくりゆっくり10まで数えたところで「もーいーかーい?」と訊くと「まぁだだよ」の返事。隠れてないんじゃないか?と思うぐらい近くから聞こえた。せいぜい、隣の部屋、といったところか。
もう一度最初から「いーち、にーい…」と数え始めると、次女が一緒になって数えている声が聞こえる。
「もういいかーい?」と訊いてみると「もういいかーい」と返事がある。
ただのオウム返しに、笑ってしまう。
何度訊いても「もういいかーい」と言われるので「もういいよー」と試しに言ってみると「もういいよー」と遂に赦しを得られた。
覆っていた顔をパッと開けると、すぐそこに娘達がいた。
ほんの、2メートルくらい先に。
無論、隠れてなどいない。
――え?
こちらが、声を発するより先に言われた。
「おかあさん、みーつけた!」
……いつの間にか、鬼が隠れるシステムに変わっていたらしい。
君たち、ちょっと前まで隠れる気満々やったやんけ。
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