感想 映画 『ねじ式』
(1998年/日本/漫画原作/シュールレアリズム)
▼原作漫画の背景
原作漫画は1968年、作者が夢の中で見た光景を作品にしたという短編。
痛快な物語でもなく、社会に訴えるメッセージもなく、ただ海でけがをして病院を探してさまよう男を描く。その過程で奇妙な街並みや建物を通り過ぎるというだけの漫画。
街並には元になるフォトアートがあるようで、印象的な背景はそれゆえ。
これが当時あまりに斬新だったということで、社会不安を加味した考察や論評が評価を呼んだ。
こんな漫画で良いのか?という疑問を払うほど評価される作品だったそう。
映画化においては、原作者のいくつかの短編と合わせ一つの作品にしている。
▼感想
作者のみた夢をそのまま作品にしたた取り留めがなく、あらすじをまとめる必要もないと感じた。
性的なシーンが多い。どのシーンも相手との関係性が希薄で、正義感にあふれたヒーローならこの女性を救おうとするんじゃないか?添い遂げたいと思うのでは?って場面でも、この主人公にとってはただ「頑張れ」でおしまい。せいぜい後ろ髪をひかれつつ立ち去るまで。
主人公はただ生理的な欲求に従って行動しているだけで、感情移入をする対象ではないと思う。
ただ、一つ一つのエピソードには、なにか力になれない無力さを感じる。
主人公が海でクラゲに噛まれたケガ、それは命に係わるかもしれない。しかし焦るほどのこともない。
治療が行われるが、外科でもない産婦人科医と関係を持ったうえで、後遺症もあるおざなりな治療が行われる。
他人の人生に対しても、自分の命に対しても関心が薄いさまが、この人は本当に生きているのかな?と思わせる。
確かに何かを考えさせるようで、掴みどころがない。しかし、妙にとらわれてしまうキーワードが散りばめられていた。
夢の世界ってそういうことなんだねと思った。