![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/168398993/rectangle_large_type_2_4a135a8eaa0ed43dec72038382a95364.jpeg?width=1200)
「ホステル日記」 ブライアン
朝、ホステルの向かいにあるマッサージ屋さんをコーヒー片手にボーッと見ていたらバケハを被った身長2mはある男に、
「ライターある?」と聞かれた。
渡した後に、軽く自己紹介をした。彼の名前はブライアンでカナダ人。身長が大きいだけでなくガタイもいい。そして彼は僕のことを見てすぐに
「日本人?」と聞いてきた。
彼は沖縄で水関係の仕事していたから僕が日本人というのをすぐに認識したみたいだった。
彼は「水道水がどれくらい現代のテクノロジーで綺麗になるか」みたいなことを研究するために働いてから少しした後に大学でさらに深く研究をしたらしい。お金ではなく好奇心がないと中々そういうことはできないと思う。
そして、すごく体が大きくてマッチョだがチル、というか、自分の興味の対象である”水”について永遠と話すギークのような一面があった。
水のことになると急に話すスピードが速くなったり、僕がわからない専門的な内容でもどんどん止まらずに最後まで話す。「女の子にモテる以外で何か人生で興味があることがあるんだろうな」と感じた。
実は彼とここで話す前に、ジムで何度か見かけた事がありお互いそれを認識しているが口には出さなかった。セッションの合間によくスマホを熱心に見ていたから、何らかの仕事をしているのかな?と予想していた。
彼の止まらない話を引き続き聞いていると、会社を辞めて旅に出て今が7ヶ月目という事がわかった。
そして彼はただ旅をするだけではなく、GoProを持ち歩いてそれで撮影したものをYouTubeにアップしている。(勝手にチャンネル登録させられた笑)
友人と一緒にそれをやりに来たらしいが、旅を始めて2週間でその彼が途中マレーシアで恋に落ちて7ヶ月間経った今もそいつはマレーシアで暮らしているらしい。
「本気でやりたい事があったら女性のことなんて例え好きでも自分のやる事を優先する」というのが僕の感覚なんだけど、だって女性はどこでもいるし、特別な子と思っている時は大体その子しか集中していなくて視野が狭くなっている場合が多い。そこまで”特別な女性”っていうのは存在しないのではないかと僕は思うのだが、、まあブライアンの友達はそこまで動画を撮ることに本気ではなかったのかもしれない。
逆に早い段階で、本気じゃない仲間がフィルターされたから本気な彼には良かったのかもしれない。
ブライアンは一つのことを聞くと、それについて一から十まで説明しようとする。
例えば、「今ブライアンは旅をしているの?」と聞いたら7ヶ月間に起こったことを事細かに説明してくれる。そしてカナダのアクセントや使う単語が耳触りが良くてずっと聞いていられる。
ブライアンの一方的な会話は、僕が何か質問がないからそれがくるまで話し続けているのかな?と思い、質問をしてみたら、その途中で話を遮って話し続けたから結局黙って最後まで聞いていた。
もちろん水の話だけでなく、「ここのマリファナがいい100gで800バーツで手に入れた」などの情報をくれた。
海外にいると、男同士で一定の時間話をすると必ずジョイントの話題が出てくる。
でも、彼が言った100gで800バーツはそこまで安いとそれはピュアなものではなく、”何か”が混ざっていたり、種がたくさん入っている場合もあり巻くときに葉っぱと種を分ける作業がめんどくさいこともあるから僕はそこまで安いやつは買わないようにしている。
そして、カナダでは12月になるとseason's greetingという挨拶行事があり、彼はその単語をアレンジし、そのジョイントをseason's Ingredientsとしてこれから行く次の目的地で会う予定になっている友達のために持っていくらしい。
(season's greetingとは、カナダでは多くの宗教や文化的背景をもつ人々が住んでいるため、必ずしも「メリークリスマス」というのではなく、どんな祝祭にも対応できる中立的な挨拶としてseason's greetingという挨拶を採用しているらしい。)
「明日はここのレストランに行って激辛の料理を食べて動画にするんだ。一旦街に慣れてしまうと毎日同じお店で食べることになるけど、動画を作ることで、毎回違うお店を試すきっかけを強制的に作っている」とも言っていた。
実際に彼のチャンネルを見たら、「100日で100回違うお店で食べるチャレンジ」というショート動画が上がっていた。
動画について熱弁し出して98%くらいの割合で、彼が話して僕は聞いているみたいなシチュエーションだった。
彼の目は動画のことを話しているとキラキラしていた。
再生回数は平均で1000回くらい。それでもすごいけど、なんだか彼のキラキラした目を見ていて「あ、この人は金のためにやってるんじゃないんだな」と感じた。
「次の目的地に行くまでのバスまで時間があるから」と言い残し、すぐに動画の編集作業に戻っていった。
会話の中であんなに目をキラキラさせながら、38歳になっても好きなことを全力でやっている姿勢にすごく感化された。
「若く見えるね」と彼に言ったが、彼は「いや38歳は若いよ。親がいなくなったら自分が年老いたと感じるんだよ。」みたいな深めな言葉も僕に残していった。
ブライアンとの出会いで、「お金を稼ぐこと」と「人生を楽しむこと」っていうのは別なんだな。と強烈に感じた。
この文章はブライアンと話した後にすぐに書いた。
僕にとって大切な人生のヒントをブライアンのキラキラしたエネルギーからもらったから忘れるうちに早く文章にしておこうと思ったからだ。
「とにかく自分の興味があることをやるんだ」という彼の姿勢に僕はとても感銘を受けた。