コラム:ノーベル賞2024-予想
さて、明日から10月ということで、今年もノーベル賞の季節がやってきた。来週から医学・生理学賞を皮切りに発表が始まる。今年は調子に乗ってノーベル賞のテーマ予想をしてみようと思う。先に言い訳をしておくが恐らく当たらない。去年などは特に政治的判断による史上最悪の選出になっているし、もはや基準も原則も何もあったものではないからだ。
一方で、予想してみようと思った理由は別にある。実は医学・生理学賞は数年おきに免疫・感染症分野の受賞が入っている。今年はスパンから見ても、免疫学の基礎分野から受賞があるのではないか、と予想しての事である。なので、この予想自体が外れたらもうどうしようもない。来年こそは免疫学の分野だと期待しよう。
とは言え、私の様なしがない免疫学者が予想できる範囲というのは限られており、せいぜいトムソンロイターの引用栄誉賞から免疫学関連のテーマを抽出するくらいのものである。だが、基礎免疫学分野の受賞テーマであればほぼ間違いなくこちらの受賞から数年後にノーベル賞というケースになっている。2018年の免疫チェックポイント阻害に関しても2016年のトムソンロイター賞を取っているし、2011年の樹状細胞・自然免疫についても数年前のトムソンロイター賞を受賞している。
という訳で、ここ10年くらいのトムソンロイター賞(今はクラリベイト賞になっているが)から免疫学関連の研究を探すと、以下の様なものだろうか。
・2015年:制御性T細胞
・2019年:T細胞の胸腺分化と自己寛容
・2020年:MHC分子
・2021年:IL-6
・2023年:CAR-T細胞
いずれも免疫学関連の重要な研究であるが、あくまで主観的に見ると、IL-6に関しては今更過ぎる感があり、逆にCAR-T細胞については新し過ぎる感もあるので、可能性があるとすれば上3つの様に思える。また、上3つはいずれもT細胞が関係しており、こじ付け次第で色んな組み合わせ方が可能とも思えるので、その辺りは政治的な選出も絡んでくる可能性がある。あとは来週を楽しみにするとしよう。
ところで、ノーベル賞のシーズンという事もあってか、下記の興味深い記事を見掛けた。
この記事では日本人ノーベル賞受賞者の出身「高校」に注目しており、下記のような傾向を説明している。
受賞者の出身高は、旧制中学も含め、公立高がほとんどなのが特徴。東京大合格者を始め、日本の政官財界を席巻している私立や国立の中高一貫校出身者はほとんどいません。
ノーベル賞を受賞する様な科学者は多くが公立校から旧帝大に進学している傾向があり、それは官僚や経営者などに多い「私立や国立の中高一貫校から旧帝大」というエリートコースとは異なるという事だ。普段の研究をしていても、これは非常に納得出来る部分がある。中高一貫校から旧帝大というのはその為の道筋が整備された環境で育っており、ある意味で「受験の為のお勉強」に特化している場合が多く、安定して高い質の「お利口さん」が出来上がっているのだ。一方で、公立校から旧帝大に入ってくる人は自分で考えて好きにやった上で同じ結果を出している人間が多く、ある意味で「尖った」人材になっている事が多い。
企業や人付き合い、官僚や公務員という職種においては前者が重宝されるのは想像に難くないだろう。一方で、ノーベル賞を取る様な科学者というのは基本的に常識の枠に収まらない人間である。必然的に自由な発想をそのまま持って育ってきた人間がそうなる可能性は高いだろうし、そもそもそういう素養のある人間はそういう道を辿っている事も多い。仮に今年のノーベル賞を日本人が受賞するとして、少なくとも可能性の高い予言として出身高校は公立校、出身大学は旧帝大であろう。
(参考)