総説紹介:ヒトにおけるCOVID-19ワクチン接種後の反応の両義性
今日は下記の様なレビュー論文を見掛けたので紹介しておこう。
「The Ambivalence of Post COVID-19 Vaccination Responses in Humans」
(Biomolecules . 2024 Oct 17;14(10):1320. )
ご存知の通り、核酸ワクチンが使用されるようになって以降、一般的な副作用に加えて、アナフィラキシーのようなアレルギー反応、場合によっては心筋炎や心膜炎(特に若年男性)など、免疫学的な過剰反応に起因する重篤な副作用が多く報告されている。また、複数の研究によって、これらの副作用に関する理解が深まり、核酸ワクチンのリスク・ベネフィット・プロファイルに関する重要な洞察が得られている。それにもかかわらず、全体的な安全性プロファイルは、パンデミック対策におけるこれらのワクチンの継続的使用を支持しており、規制当局や保健機関は、COVID-19の重篤な転帰を予防するためのワクチン接種の重要性を強調している。
この総説論文では、さまざまな種類のCOVID-19ワクチンについて述べ、主に心臓、血液、神経、心理学的機能障害として現れる自己免疫および炎症反応によるさまざまな副作用について要約している。様々な副作用の発生率、臨床症状、危険因子、診断、管理、およびこれらの副作用に寄与する可能性のあるメカニズムについて論じているのも重要な点である。また、この総説はワクチン接種後のヒトの反応の潜在的な両義性を強調し、副作用を軽減する必要性を訴えている非常に良い総説である。基本的な知識を得るための勉強にもなるため、是非とも皆さん自身で読んでほしい。
この論文は、今まで報告された自己免疫疾患の発症をまとめているだけでなく、私がいつも訴えている核酸ワクチンに特有の自己免疫反応誘発機序についてもよくまとめている。新型コロナウイルスに関する特異的な原因として報告されている、Sタンパク質と自己抗原の交差反応のみではなく、核酸ワクチンに特有の核酸認識シグナル活性化などに関しても触れており、免疫学的に重要な示唆に富んだレビューである。
また、「エピトープ拡散」という今まで説明していない機序に関しての記述もある。エピトープというのは抗体が結合する抗原の一部を意味するのだが、このエピトープ拡散とは、自己免疫疾患や慢性感染症における発症・症状増悪の機序として提唱された概念で、T細胞やB細胞において特定のエピトープに対する免疫応答が認められた後に、他の多様なエピトープに対する免疫応答が連続的に誘導される現象のことを指す。一般的には組織損傷があると、細胞死や自己抗原の漏出に伴って新エピトープに対する自己反応性T細胞やB細胞が連鎖的に出現するイメージを表しており、典型的にはこれが心筋炎とそれに伴う心筋障害の背後にある可能性のあるメカニズムとも考えられている。この様な内容も興味深い示唆である。
この総説の様に核酸ワクチンの免疫学的なリスクを正しく理解し、危険性を訴える科学者はいくらでも存在する。しかしながら、一般人はその様な警鐘に触れる機会が少ない。科学的に何が正しいのかを常に考え、正しい科学的知識を基に正しい考察をし続けてほしい。