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記事コメ:コロナワクチンの副反応は「良いこと」?

今日は表題の様なふざけた記事を見掛けたのでコメントしておこう。
問題の記事は以下のものである。

記事で紹介されている内容の主旨は、副反応が激しい人ほど抗体が多く作られるから副反応は良い事だというものだ。もちろんこの理論は完全に間違っている。

第一に、因果関係の考察に大きな問題がある。言うまでもなく副反応は免疫応答の一環であり、免疫応答が十分に起こっている人だから抗体も作られているというのは「結果」として当然のことであるが、副反応が起きたから抗体が作られた訳では決してない。過去の記事でも紹介した通り、免疫応答は自然免疫応答と獲得免疫応答に分けられ、獲得免疫応答は細胞性免疫と液性免疫に分類される。抗体反応というのは液性免疫であるが、副反応に関わる可能性のある免疫応答は自然免疫応答と細胞性免疫応答である。もちろんこれらの免疫反応は相互に関連しており、その強度に関してある程度の相関があるだろうが、シビアな副反応が起きる事が抗体産生に大事かの様な理論は大間違いである。ただの結果の相関をあたかも重要な因果関係があるかの様に論じる典型的な偽科学である。事実として、記事の中でも「副反応が起きなくても抗体反応が十分な人は多く居るから安心しろ」と書いてある。自分で矛盾を述べていることに気付かないのだろうか。

第二に、免疫のバランスという観点を欠いている。抗体反応も含めて、免疫反応というのは強ければよいというものではない。活性化と抑制のバランスが最も重要な視点なのである。これまでの既存のワクチンと比較して、核酸ワクチンの免疫活性化能が異常に高いのは言うまでもない。その機序についても過去に説明してきた通りだ。この様な核酸ワクチンによる「強過ぎる活性化」は、仮に抗体産生や細胞性免疫の促進によって感染防御に寄与したとしても、それ以上に免疫疾患のリスクという重大なマイナスとなる。免疫のバランスという観点を欠き、強過ぎる免疫応答のリスクを無視した論調は全く以てナンセンスである。

強過ぎる副反応は明らかに核酸ワクチンによる異常な免疫応答の活性化であり、それは抗体反応の良い指標などではなく、免疫疾患リスクの明確な指標である。また記事ではお手本の様に「新型コロナウイルスに感染または重症化した場合のリスクは、ワクチン接種後の副反応よりはるかに悪い」と締めくくっているが、いつも言っている通り比較するものが間違っている。新型コロナウイルス感染症に対してはそもそも感染防御・感染対策の徹底が大前提であり、比較するべきはそれを前提とした長期的悪影響のリスクである。健康な人間が自分のことを考える場合はその様な正しい科学的視点が必要となる。

この記事の研究者がこの様な視点を押し出すのは、この医者の主な対象が癌患者だからである。免疫状態が元々抑制的であるからこそ、副反応などの免疫応答を指標にしたがるし、感染防御に関して最優先にしたがる。それは間違っていないだろうが、議論を一般化することや誤解を招く論理展開は許されることではない。常に個別の状況に応じて最善を考察することこそが真に科学的な姿勢である。


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