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論文・記事紹介:「新型コロナ後遺症の原因」の手がかりを示す新たな研究

今日は下記の記事を見掛けたので、基の論文と併せて紹介しておこう。

記事では初回感染から数カ月経過した新型コロナ後遺症患者の血液中にSARS-CoV-2タンパク質を検出したという論文を紹介している。これは、潜在的な持続的ウイルス感染が起こっており、それが新型コロナウイルス後遺症と関連している可能性を示している。基の論文は以下のものである。

「Measurement of circulating viral antigens post-SARS-CoV-2 infection in a multicohort study」
(Clin Microbiol Infect . 2024 Sep 27:S1198-743X(24)00432-4)

この論文はそれなりの人数を集めたコホート研究であり、SARS-CoV-2感染後数日から14ヵ月までの異なる時点で、4つの独立した研究に参加した成人から血漿および血清サンプルを採取してサンプル中のスパイクタンパク質を含むSARS-CoV-2抗原を定量している。その結果、SARS-CoV-2に感染した706人から分析した1569検体のうち、いずれかの抗原が陽性であったのは21%(95%信頼区間、18-24%)であった。また、感染後4~7カ月でスパイクタンパク質陽性のサンプルの割合が最も高かった(20%;95%CI、18~22%)。

後遺症に関しては、合計で578人(82%)の参加者が、感染後1カ月以上経過した時点で、解析の対象とした34の後遺症症状のうち少なくとも1つを発症していた。心肺症状、筋骨格系症状、および神経症状は、全参加者の半数以上で最も高い有病率が報告され、これらの後遺症患者のうち平均43%(95%信頼区間、40~45%)が抗原陽性であった。進行中の症状がないと報告した参加者(128 名、18%)のうち、抗原が検出されたのは 28 名(21%)であった。これは後遺症症状と抗原の検出率に偏りがある可能性を表しており、実際に性別、年齢、感染後時間、およびコホートで調整した結果、抗原の陽性率は1つ以上の後遺症症状の存在と関連していた(OR、1.8;95%CI、1.4-2.2)。

つまり、新型コロナウイルスは感染すると少なくとも2割程度の確率で神経系や循環器系などに長期的に潜伏感染する可能性が極めて高いということだ。この様な潜伏感染は通常の検査では検出することができないため、一見陰性になっていても関係無いということだ。そして、このような長期的な潜伏感染が長期的な症状を引き起こすのが、新型コロナウイルス最大の脅威である。

いつも言っていることだが、特に神経系への潜伏感染と神経症状がこの新型コロナウイルス特有かつ最大のリスクである。なぜなら、この様な神経感染はワクチンなどの獲得免疫では防ぐことが出来ないからだ。新型コロナウイルスの本当の脅威を防ぐための手段は徹底した感染対策以外に存在しない。これは大事なことなので何度でも繰り返させてもらう。そして、近年の研究で私がパンデミック最初期より警告していた可能性は確実に証明されてきている。分子生物学的なデータから演繹的に正しく予想すれば、臨床的な真実を高精度に予測する事は可能なのだ。新型コロナウイルスの特徴はSタンパク質の変異に基づく神経系感染であり、先週も述べた通り神経系疾患の難しさを踏まえれば絶対に感染を避けるべきウイルスなのである。呼吸器症状が軽くなったからと言って甘く見るのは、自覚できない神経系感染・神経症状に長期的に晒されるという結果をもたらすだろう。数年後、数十年後に後悔することになるのは感染対策を怠る愚かな者達である。

(参考)


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