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記事・論文紹介:新型コロナワクチンはコロナ後遺症を予防する?

今日は下記の記事を踏まえて新型コロナウイルス後遺症に関する最新の論文を紹介しておこう。

過去にも同様の研究についていくつか紹介してきたが、新型コロナウイルス後遺症とワクチンの関連はよく調べられている事項である。今回の研究は米国の大規模な電子カルテデータを用いて、ワクチン接種が後遺症のリスクに与える影響を調べたもので、32万人以上のCOVID-19患者を対象に、ワクチン接種者と未接種者で発症率を比較している。論文は以下のものだ。

「Post-COVID conditions following COVID-19 vaccination: a retrospective matched cohort study of patients with SARS-CoV-2 infection」
(Nat Commun. 2024 May 22;15(1):4101.)

記事にもあるが、今回の研究では循環器系や血液系、皮膚の症状で顕著な差が見られ、ワクチン接種によってこれらの症状のリスクが10%以上低下している。これは過去の類似研究とも同じである。一方で、いつも言っている通り、新型コロナウイルス後遺症としての精神・神経系症状に関してはワクチンの効果は殆ど認められない。記事でも触れられているが、むしろ精神症状などはワクチンによってややリスクが高くなっている。筆者はこれを受診バイアスと考察しているが、神経系感染の機序を考えた場合に、獲得免疫が有効な末梢の組織で増殖できないウイルスが、獲得免疫無効な中枢神経系へと移行しやすくなってしまう可能性すらあるのだ。いずれにしても、新型コロナウイルス最大の脅威である神経系感染・神経系症状についてワクチンが無意味であることは重ねて証明されたと言える。

また、今回の論文ではオミクロン株とそれ以前の変異株に関する知見が加わっている。オミクロン株以降の変異によって、呼吸器症状は随分と軽減したと考えられている一方で、神経系に対する影響はあまり変わっていない。場合によっては、神経系症状が出やすくなっている事もある。これは感染経路や部位の変化(獲得免疫の効果もあって呼吸器系に感染が成立しにくくなった分、むしろ獲得免疫が無効な中枢神経系への感染が促進される?)が関係しているかもしれないが、これを調べるのは相当に困難であろう。いつも言っているが、中枢神経系への感染はその検出自体が難しいからだ。少なくとも重要な事は、新型コロナウイルス特有のリスクは何ら軽減されておらず、変わらぬ感染対策の徹底こそが健康を守る唯一の手段であるという事実だ。

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