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記事紹介:暑くても人混みでは「マスク」したほうがいいこれだけの理由:新型コロナ第11波で

オミクロン株KP.3の台頭によって、既存の獲得免疫が回避され、新型コロナウイルスの感染拡大が進んでいる。最近の変異株研究は既存の免疫回避が主となっており、わざわざ紹介する事でもないので話題にしていないが、以前から述べている通り、そもそもRNAウイルスに対してワクチンで対抗しようというのが間違いである。その変異の速さは絶対にワクチンで対応できるものではないからだ。また、変異による免疫回避は下手をすれば抗体依存性感染増強(ADE)の原因にもなり得る。新型コロナウイルスはそれに加えて神経系感染・神経系症状というやはりワクチンで防げないリスクを抱えており、感染対策の徹底以外には意義ある対応が存在しない。これは純粋な理論である。

さて、今日は以下の記事を見掛けたので、自身の情報アップデートと記録も兼ねて紹介しておきたい。

この記事では最近の論文も引用しながら、マスクと感染対策の重要性について説明してくれている。過去にも紹介した話だが、記事にもある通りマスクに感染防御効果が無いという勘違いは、通常のコミュニティ環境における一貫性のない結果を曲解しているだけだ(Eurosurveillance 25, 2000725 (2020)、Cochrane Database Syst. Rev. 11, CD006207 (2020)、など)。マスクは正しく使わなければウイルスを運んだり広げたりしているだけになってしまう。つまり、無知な人間が適当に使えば逆効果になるのは当然なのである。一方で医療機関などの研究では感染を大幅に減少させることが知られている(Lancet 395, 1973-1987 (2020)、Proc. Natl.Acad. Sci. U.S.A. 118, e2014564118 (2021)、Science eabg6296 (2021)、など)。正しく使えば当然の事ながら効果があるのだ。記事の中でも過去の研究における着用の正しさや着用されたマスクの種類などについて問題点を指摘している。

また、記事では以下の様な新しい研究も紹介している。

一方、最近の研究によれば、直径1マイクロメートルから2マイクロメートル程度の粒子は長距離の空気感染に重要であり、そのため換気のほうが効果的だが、直径2マイクロメートルから4マイクロメートル程度の粒子については濾過性能の高いマスクの着用が効果的なようだ(※6)。つまり、粒子の直径5マイクロメートルという閾値にはあまり意味はなく、必ずしもN95マスクでなくても不織布マスクなどのマスク着用には一定の効果があるということになる(※7)。また、最近では、マスクに感染拡大を防ぐ効果と同時に感染しない効果もあるという見解に移行しつつある(※8)。

初期の雑多な研究の問題点が概ね解決され、共通の見解としては確実にマスクの正しい着用意義が証明されてきていると言えるだろう。また、空気感染にはマスクが意味無いという人間も居るが、一定の濾過効果があるので十分なのだ。そもそも息苦しいからマスクしたくないとか言う奴は、空気感染を防げないから意味無いという発言と矛盾している。その息苦しさこそが濾過効果の証明ではないか。世の中にはマスクをつける程度の事すら嫌がる子供の様な精神性の大人が多く存在する。彼らは言い訳に間違った科学を引用するが、その道は確実に狭まっている。感染対策を怠る事は、自身の健康は勿論、周囲の人間への害悪でもある。科学的な知識を正しく運用し、正しい感染対策の訓練と実施を徹底する事が何よりも大事なのだ。

(参考記事・論文)

※6:Xiaowei Lyu, et al., "Size dependent effectiveness of engineering and administrative control strategies for both short- and long-range airborne transmission control" Environmental Science: Atmospheres, Vol.4, 43-56, 5, December, 2023
※7-1:Hiroshi Ueki, et al., "Effectiveness of Face Masks in Preventing Airborne Transmission of SARS-CoV-2" mSphere, Vol.5, Issue5, October, 2020
※7-2:John T. Brooks, Jay C. Butler, "Effectiveness of Mask Wearing to Control Community Spread of SARS-CoV-2" JAMA, Vol.325(10), 998-999, 10, February, 2021
※8:Trisha Greenhalgh, et al., "Masks and respirators for prevention of respiratory infections: a state of the science review" Clinical Microbiology Reivew, Vol.37, No.2, 22, May, 2024

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