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論文紹介:コロナ感染およびコロナワクチンとギランバレー症候群

今日は下記のレビュー論文を見掛けたので紹介しておこう。

「Guillain-Barre syndrome and link with COVID-19 infection and vaccination: a review of literature」
(Front Neurol. 2024 Jun 5:15:1396642.)

過去に何度か取り上げた事があるが、ギラン・バレー症候群(GBS)は末梢神経に対する自己免疫反応による自己免疫疾患である。原因については不明な部分も多いが、その一つとして少なくとも様々な感染症がGBSと関連している。近年、新型コロナウイルス感染やいくつかの核酸ワクチンがGBS発症に関与していることが注目されている。このレビュー論文では、GBSと新型コロナウイルス関連の事象との疫学的および病態生理学的関連に関する文献をよくまとめてくれているので参考に読んでみてほしい。

本文でも最初に取り上げられている通り、大前提として新型コロナウイルス感染はGBSのリスク要因となり得る。いつも言っている事だが、新型コロナウイルス感染最大のリスクは神経系への影響である。新型コロナウイルス感染によるGBS発症の正確な機序は不明であるが、予想されるメカニズムとしてこのレビュー論文でも神経系への直接の侵入などを挙げている。ウイルスによる神経障害が味覚嗅覚の異常や、末梢神経の異常に伴うGBS症状などを引き起こしている可能性は大いにある訳だ。同時に、それらの神経組織に感染したウイルスに対する免疫応答が原因となっている可能性も示唆されている。これも当然考えられる機序であり、重要な示唆である。

また、アデノウイルスベクターワクチンについてもGBS発症リスクが提示されている。これも過去の記事で紹介した事があったと思うが、核酸ワクチンに特有のリスクであると言える。RNAワクチンに比べてウイルスベクターワクチンで高リスクである事も含め、その機序には不明な点が多いが、ウイルス感染と共通のメカニズムも含め、論文中では多様な考察がなされている。先の述べた通り、神経への直接的な侵入やそれに伴う炎症反応、また二次的に誘発される自己免疫反応の促進もよく研究されている。これも、過去に紹介した事があるが、本文中でもウイルス抗原と自己抗原の交差反応がGBS症例の患者で確認された例もあるそうだ。この様な分子模倣仮説はGBS発症機序のひとつとして有力と考えられており、新型コロナウイルス感染はもちろんだが、それに対するワクチン接種も、末梢神経系の標的に対する自己免疫と抗体産生を誘発し、GBSを引き起こす可能性があるという訳だ。

神経系および免疫系というのは生物学に遺された2大ブラックボックスであり、実際に難病と言われる特定疾患の大部分は神経系または免疫系の異常である。それらに対して長期的に悪影響を及ぼし得る存在が新型コロナウイルス感染であり、それに対しての核酸ワクチン接種も同様に大きな免疫学的リスクを伴っている。また、新型コロナウイルスの中枢神経系感染はワクチン接種で防げるものではなく、完全な感染対策によってのみ防御が可能である。

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