記事紹介:意外と知られていない、麻疹(はしか)のリスクとは?
今日は最近流行しているはしかについて、よくまとまった記事を見掛けたので紹介しよう。
この記事に注目したのは以下の内容を説明してくれていたからだ。
麻疹が改善した後も『長い間、さまざまな感染症にかかりやすくなり』『長い間、現在の医学では治すことのできない脳炎のリスクを抱える』ことになることは思ったほど知られていません。
そこで今回は、それらの『麻疹が治ったと思っても長期間抱えるリスク』を簡単に解説してみたいと思います。
記事を見てもらえば分かる通り、これは麻疹ウイルスが長期間中枢神経系に持続感染して発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という難病の話である。頻度が高い訳ではないが、麻疹に罹患後およそ2~10年という長い潜伏期を経て、知能低下、性格変化、動作緩慢などで発症し、進行性に大脳機能が障害され、高度の認知症、植物状態となり死に至る神経変性疾患である。また、この疾患の治療が難しいのは、SSPEにおける神経障害がSSPEウイルスの脳内での増殖が直接的に関わっているため、脳内でウイルス増殖を抑制しなければならないのだが、中枢神経系は血液脳関門などによって外部から遮断されており多くの抗ウイルス薬や免疫細胞の活性化など、その影響が限定される点にあるのだ。これが中枢神経系に持続感染するウイルスの恐ろしさであり、リスクだということを学んでほしい。
潜伏期間の長さからも分かる通り、ウイルスの脅威を正しく理解することは容易ではない。私がこの記事を紹介したのも、いつも言っている新型コロナウイルスの中枢神経系感染と関連している。新型コロナウイルスは明確に中枢神経系感染のリスクを有しており、「調べるのが難しい」というだけであって、一定割合で回復後も中枢神経系にウイルスが残存している可能性が高いのだ。既に認知機能や記憶など中枢神経系に影響を及ぼすことは示されているところだが、その長期的影響が明らかになるのはこれからである。ウイルスの中枢神経系リスクを改めて認識し、麻疹にしても新型コロナウイルスにしても十分に注意してほしいと思う。
また、記事では麻疹ウイルスによる免疫抑制についても言及している。
麻疹ウイルスは特殊な性質を持っていて、感染した数週間の間、免疫の働きを強く押さえ込みます。さらに、免疫細胞の記憶を損なう機能を発揮し、何年間も『免疫が健忘状態になる』ことが知られています。すなわち、麻疹以外の感染症にもかかりやすくなるということです。たとえばオランダの研究では、麻疹に罹患した子どもは、麻疹が治ったあとも1ヶ月は4割以上、1年間は2割以上、さまざまな感染症の発症するリスクが高まることを報告しており、その影響は5年間続くとしています。
これは免疫細胞の機能と麻疹ウイルスに関する話であり、昔から研究されている分野でもある。麻疹ウイルスをヒトのリンパ球に感染させると、活性化・増殖が低下することが知られており、ウイルスが直接的に免疫応答を抑制することが知られているのだ。この様なことも頭に入れておこう。