ふるさと納税における寄付と自治体のファンを最大化する「ふるさとリピートマップ」について<前編>
「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行う株式会社イミューが提供する、自治体向けふるさと納税分析ツール「ふるさとリピートマップ(以下、FRM)」について聞きました。
▼前回記事
ー今回は、イミューが自治体の方々へ提供する“リピート寄付者”に着目した分析ツール「ふるさとリピートマップ」について教えていただきます。まずはツールの簡単な紹介をお願いします!
ふるさとリピートマップ(通称:FRM)はふるさと納税で複数年に渡って同じ自治体に寄付している“リピート寄付者”に着目して開発した分析ツールです。このシステムの強みは大きく分けて、ふるさと納税におけるポータルサイトごとの寄付情報を横断して見ることができる点と、寄付の最大化やふるさと納税を起点とした自治体へのファン化といった、自治体の目標の達成に貢献できる点の2つだと自負しています。
まずデータの横断について説明すると、現在約40のポータルサイトが存在するふるさと納税市場では、自治体がそれぞれのサイトで抱える寄付者の情報を包括して分析することが難しくなっています。実際にイミューとお取組みのある自治体の中にも10個以上のポータルに登録している自治体があり、それら1つ1つのサイトから情報を集約するだけで1~2時間もかかってしまうのが実情です。
FRMを用いることでこれらのポータルサイトや、返礼品の受注や発送を管理する受発注システムのデータを1つのシステムで分析できるようになるため、現場で働く自治体担当者の方の作業時間を減らすことが可能になります。
ー様々な業務を抱える自治体の担当者にとって、これまで数時間かかっていた作業時間をより分析にあてられるようになるのは嬉しいですね。
時短が可能なことももちろんですが、先ほど強みとしてあげたように、寄付の最大化や寄付者のファン化といった自治体の目標の達成に向けて、FRMでのリピート寄付者に着目した分析が貢献できると考えています。
ご存じの通りふるさと納税の仕組みそのものは、地域で生まれ育った方が都市部に移住したために大都市に集中してしまった住民税の一部を、また地方に分配していくという構想で作られた制度です。そのため自治体の方々は、より良い自治体運営のために寄付の拡大を目指していますが、それと同時に、活動を通して自治体の外に住んでいる方から注目される環境を作り、寄付者と地域との距離をどんどん近づけていきたいと思っています。
こういった目標に対して、継続して寄付をしてくださるリピート寄付者の存在が到達の突破口になります。
自分が元々ネット通販のマーケティング支援会社にいたからこそ驚いたことなのですが、一般の通販と比較してふるさと納税は継続率が異常に高いです。詳細はまた後ほど説明しますが、去年寄付した方が今年も寄付する確率が3割、過去2年連続で寄付した人が今年も寄付する確率が6割と、継続寄付年数によって翌年の寄付率に大きな開きがあることがふるさと納税の特徴です。そのため、ある程度リピート寄付者の数が正確に把握できると、翌年の寄付額の想定ができ安心材料になります。
さらに、リピート寄付者のほうが新規の方よりも寄付単価が上がることもわかっていて、高いコストをかけて新規の寄付者を獲得するより、既存の寄付者の方にいかに継続して寄付していただくかにフォーカスする方が重要だと言えます。そのため、FRMを導入することで町のリピート寄付者に関するデータを可視化・分析し、その結果を基に戦略と施策を立てることで寄付の拡大につなげることが可能です。
実際に、例えば寄付額30億円の自治体の場合、寄付のリピート率を10%から30%に伸ばすと、寄付額の差は3年間で20億円になると試算しています。
※詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000081865.html
ー効率的かつ安定的に寄付を集めていくためにはリピート寄付者に注目することが重要で、そのデータ収集と分析にFRMが欠かせないということなんですね。
その通りです。ただし、FRM最大の強みはふるさと納税の先にある寄付者のファン化にあります。
こちらは自社で行ったインタビュー調査でも結果が出ているのですが、毎年寄付を続けてくださるリピート寄付者は、自治体への興味や理解が年々深まっていくことが分かっています。ホタテを例にすると、寄付を始めたころは「北海道のホタテ」という認識だったところが、年を経るにつれて「〇〇町のホタテ」のように市区町村レベルまで認識していただけるようになるんです。イミューでは、このように継続的な寄付を行っていて、さらに自治体への認知が高い人を「応援人口」と定義しています。
この応援人口を増やすためには、魅力的な返礼品の紹介だけではなく、より踏み込んだコミュニケーションが必要です。例えば、ふるさと納税で集まった寄付の使い道は町の取組みをDMなどでお伝えすることで、これまで節税やただ飯を目的としていた寄付者の方にも、「これだけ自分のお金を寄付しているからこそ、町のことを教えてくれて嬉しい」といったポジティブな感想をいただける関係になります。
ー応援人口を増やしていく活動が、寄付の増加と自治体のファン増加の両方に寄与するんですね。
また私たちはFRMを用いて定量的なデータ分析を行いますが、地域の抱える課題はそれぞれ異なり、個別で解決策を描く必要があります。そのため横断したシステムできれいなレポートを提出するだけでなく、そこからどう考えていくと良いのかを自治体ご担当者の立場に立って提案するとともに、それらを実行する伴走パートナーとしての貢献ができます。
ー実際にFRMを導入した場合、どのような分析ができるのか教えてください。
上に掲載した画像は実際の自治体の分析結果を参考にしたダミーのデータなのですが、2020年から23年の寄付における新規寄付者の層が青、継続寄付者の層が赤、逆に寄付をやめてしまった離反寄付者の層を黄色で示してあります。
例えばこのデータの場合、20年は5万人の寄付があったものの、21年はその内3.5万人の寄付が翌年で抜けてしまっていることが分かります。一方で新規に6万人が入ったことにより合計7.5万人で着地しており、新規も継続もどちらも増えているため成長している良い状態だと言えます。
しかし直近の23年でいうと、寄付者全体の数値は昨年の22年から1万人増えたものの、22年の10万人から8万人もの寄付者が離反していて、新規獲得によって数字を維持することができたといえます。このような場合は、自治体のことを全く知らない新規層にアプローチするよりも、一度何かのきっかけで寄付を決めた離反層に向けてコミュニケーションを取った方が、獲得が容易な上、自治体の目的により近づくことが見込めます。
また、これを寄付額と寄付人数の両軸から分析をすることも可能です。
ーこういった分析も、そもそもFRMを導入しないと見ることができないんですね。
実際にこの記事を読んでくださる自治体担当者の方にはご理解いただけると思うのですが、現状だとこの寄付者が何年目なのかといった情報はおろか、ポータルサイトを横断した寄付の平均単価すら見ることができません。
これは今後ふるさと納税における制度の見直しなどで変わってくる可能性もありますが、数多くのポータルサイトがひしめく状況だからこそ、横軸を刺してデータ取得を行い、信頼できる評価基準を持った上で分析を行うFRMのようなサービスは不可欠です。
ーありがとうございます。これまでにFRMの概要から、分析結果のイメージまでご説明いただきましたが、続く中編では実際の分析事例について教えてください。
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