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ニューアカデミズム関係者の整理


ニューアカデミズムに関連する主要人物の主張とその関係性

1980年代の日本において、「ニューアカデミズム」と称される文化運動は、文学・哲学・建築・美術などの領域で同時並行的に展開されました。その中心的な思想家・批評家・建築家・美術家として挙げられるのが、柄谷行人、浅田彰、磯崎新、岡崎乾二郎などです。彼らは、それぞれの分野においてポストモダニズム的な視点を取り入れながら、既存の知の体系や美術の制度を批評的に捉え直しました。

以下に、それぞれの主張の概要と相互の関係性を整理します。


1. 柄谷行人(1941-)|ポストモダン批評と「他者の声」

主な著作: 『日本近代文学の起源』(1980)、『探究Ⅰ』(1986)など

主張

  • 日本近代文学の批評的再考

    • 夏目漱石や森鷗外などの近代文学の形成過程を分析し、日本の「近代」という概念が西洋の模倣として成立してきたことを指摘。

    • 近代文学の「内面性」の確立が、国民国家形成と密接に関わっていると論じた。

  • ポストモダニズムの批判的継承

    • フーコー、デリダ、ドゥルーズ、バルトらのポスト構造主義の思想を取り入れ、近代の「主体」概念を解体。

    • 特に、「他者の声」 という概念を重視し、歴史や文学を単一の視点ではなく、異なる立場から読み直すことを提唱。

  • 「言語=思考」からの脱却

    • 西欧の理性中心主義を批判し、日本的な思考の枠組みを再構築しようと試みた。

ニューアカデミズムとの関係

  • 柄谷の思想は、日本のポストモダニズム的な思潮の土台となり、浅田彰らに影響を与えた。

  • 美術批評の分野では、岡崎乾二郎などが柄谷の視点を取り入れ、作品の多声的な解釈を進めた。


2. 浅田彰(1957-)|ポストモダンのアイロニーと知的遊戯

主な著作: 『構造と力』(1983)

主張

  • ポストモダン思想の紹介と展開

    • フランスのポスト構造主義(ドゥルーズ=ガタリ、リオタール、バルト)を日本に紹介し、これを日本の社会・文化に適用した。

    • 『構造と力』では、近代的な「力の構造」を批判し、流動的でアイロニカルな知性を肯定。

  • 「遊撃的知性」の提唱

    • 既存の学問や権威に依存しない、流動的な知的態度を重視。

    • 「デタッチメント(距離をとること)」を強調し、状況に応じて立場を変えられる知性が必要とした。

  • 大衆文化との接続

    • フランス哲学を難解な学問の枠に閉じ込めるのではなく、ポップカルチャーやファッション、アートと接続させた。

    • 例えば、ニューウェーブ音楽やアニメをポストモダンの視点から分析するなど、文化批評を積極的に行った。

ニューアカデミズムとの関係

  • 浅田は、ニューアカデミズムの「理論的支柱」となり、ポストモダン思想を知的に遊びながら広めた。

  • 彼の理論は、磯崎新や岡崎乾二郎の作品解釈にも影響を与え、批評と実作を横断するスタイルを確立した。


3. 磯崎新(1931-2022)|建築におけるポストモダンと歴史の再解釈

主な著作: 『建築の解体』(1986)、『空間へ』(1984)

主張

  • モダニズム建築批判とポストモダン建築

    • 近代建築の機能主義や合理主義を批判し、建築における「歴史的文脈」を再評価。

    • 1970年代後半からポストモダン建築に傾倒し、歴史的な装飾や形式を引用する手法を用いた。

  • 建築の記号性と都市空間

    • 都市空間を単なる物理的な場ではなく、意味の交錯する場として捉える。

    • 例えば、「つくばセンタービル」(1983) では、伝統的な日本建築の意匠を再構成し、歴史と現代の融合を試みた。

  • 脱構築的アプローチ

    • 1980年代後半には、デリダの脱構築理論を建築に応用し、建築の意味の不確定性を探求。

    • これは後の解体主義建築(デコンストラクティヴィズム)にも影響を与えた。

ニューアカデミズムとの関係

  • 磯崎の建築思想は、ニューアカデミズムの「視覚的実践」として機能し、美術・建築・都市論を横断する役割を果たした。

  • 浅田彰とは思想的に共鳴し、対談などを通じてニューアカデミズムの思想的枠組みを形成。


4. 岡崎乾二郎(1955-)|ポストモダン絵画の可能性

主な著作: 『ルネサンス経験』(1992)

主張

  • 絵画の復権

    • 1970年代以降のミニマリズムやコンセプチュアル・アートに対して、絵画の物質性・具象性を再評価。

    • しかし単なる復古ではなく、美術史を批評的に読み替えながら新しい表現を模索。

  • 歴史的視点の導入

    • ルネサンス美術や日本の伝統絵画(琳派など)を独自の視点で解釈し、それらを現代美術に接続。

    • 作品において、色彩・構成・マチエールを通じて、時間的な奥行きを表現。

  • ポストモダンとイメージの操作

    • イメージの引用や再構成によって、絵画が持つ制度的な枠組みを批評する。

ニューアカデミズムとの関係

  • 岡崎は、美術の実作と理論の両面でニューアカデミズムの中核を担った。

  • 柄谷行人や浅田彰の理論を美術に応用し、ポストモダン的な批評精神を視覚芸術に落とし込んだ。


まとめ

ニューアカデミズムは、柄谷行人の文学批評、浅田彰のポストモダン理論、磯崎新の建築思想、岡崎乾二郎の美術論といった形で多角的に展開されました。彼らは共に、西欧中心的な近代の枠組みを批判しながら、ポストモダニズム的な視点で文化を再解釈し、日本の知的風土に大きな影響を与えました。

5. その他言及すべき人物

伊東豊雄(1941-)|ポストモダン建築の実践

  • 磯崎新と同様、ポストモダン建築を推進。

  • 特に、透明性と流動性を重視したデザインを展開。

東浩紀(1971-)|ポストモダン以後の批評

  • 浅田彰の影響を受けつつ、1990年代以降の情報社会におけるポストモダン批評を展開。

  • サブカルチャーやオタク文化を哲学的に分析。

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