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揺れる歯と揺れる心


インプラントは永遠ではない。

友人の話を聞いたとき、それが妙に現実味を帯びて胸に刺さった。

数年後に入れ歯へと切り替えたという彼女の彼氏の話。

高額で「10年保証」がついているといえども、その10年が過ぎた後、あるいはその前にどうなるのかは、誰にも分からない。

つい先日、私は治療費の支払いをすべて終えたばかりだ。

どう考えても「大人の玩具」どころか、新車が買える金額に匹敵している。

それでも、快適な口腔環境を手に入れるためには必要な投資だと信じて、インプラント&オールセラミックを選んだ。

いや、選ばざるを得なかった。

だが、すでに1本のインプラントが抜けた。

それはまだほんの数年しか経っていない出来事だ。

口の中も一向に「快適」とは程遠い。

違和感、噛み合わせの問題、そして何とも言えない重苦しさ。

今日も歯に優しい鍋を食べながら、考える。

この金属製の「第二の歯」が、果たして私と何年寄り添ってくれるのか。

友人の話を思い出すたびに、彼女の彼氏のその後が自分の未来に重なるような気がしてならない。

それでも、目の前に広がる湯気と、口の中に広がる味わいに集中しようとする。

食事はまだ私の喜びの一つだ。

揺れる歯の未来に怯えながらも、今この瞬間の幸福だけは、できるだけ味わっておきたい。

夜更けの鍋の湯気とともに、私の心も揺れる。

きっとこの「揺れ」も、私自身の一部なのだろう。


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