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PERFECT DAYS 【極私的感想】

役所広司がカンヌ映画祭で最優秀主演男優賞を受賞したからとか、
あのヴィム・ヴェンダースが監督だからとか、
そんな情報に導かれたのではなく、このタイトルと映画のポスターグラフィックに誘われて映画館に妻とレイトショーを観に行った。

昨年60歳を迎え、
膀胱癌が見つかり、
初めての手術〜入院という、年齢を感じざるを得ない一年を過ごした。
そんな人生の最終ターンの始まりでこの映画に出会えた事は、僕にとってとても大きな出来事だった。

日々、自らのルーティンを淡々と暮らしていく初老のトイレ清掃員の日常を演じる68歳の役所広司。
そしてその日常をドキュメンタリー的にリアルに記録した78歳のヴィム・ヴェンダース。
この68歳と78歳の二人が共に信頼し合って、作り上げた世界観は、何の力みもなく、極力贅肉を落とし、ある意味観る者に勝手に読み取るスキマを与えたような不思議な作品だった。

今まで「毎日の景色が変わる」そんな日常でないと日々の抑揚や刺激を感じる事が出来ないと思って暮らしてきたけれど、この作品を観てからは人生の最終ターンは大きな抑揚や刺激ではなく、小さな揺れを味わうような暮らしをしてみたくなった。

これは映画を制作した人たちのメッセージではないかもしれないが、僕にはこの作品からそんなギフトをもらったような気がした。

点数などつけられないほど素晴らしい作品だった。

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