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オーストラリア日本語教師奮戦記129コアラ談義②赤ちゃんコアラの離乳食

イマニュエルカレッジ日本語教師2年目。Year 11 日本語クラス。大学受験学年1年目の生徒たちは大学入試の語学科目を日本語で受ける。イマニュエルカレッジで日本語の勉強を始めてから、前任の先生の指導を含めて今年で4年目になる。ひらがな、カタカナはもちろん漢字の読み書きもかなりのレベルのものをマスターしている。ただ、少し込み入ったことになると、特に話したり、文章を作ったりするときに苦労するようだ。

今年から授業の初めの10分間、自分たちの身の回りのことを題材にして質疑応答をすることにした。テキスト授業開始前の予備練習として大いに役立つことを期待していた。私の方から話題を振ることもあれば、生徒の方から問いかけてくることもある。その中で出てくる難しい言い回しや単語などの確認などが、生徒たちの日本学習の進み行きにプラス効果をもたらすことを期待していた。話題は「コアラ」。先週に続き今週も「コアラ」。日本の動物園で、ひたすらかわいい姿でほとんど寝ている様子を見たことがあるだけで、実情についてはほとんど知識ゼロだったので新鮮な驚きを覚えた。

生徒たち:S 私:K
S: ARAISENSEI KOARANOAKACHANWA TOTEMO CHISAIDESU
 SHITTEIMASUKA
(アライ先生 コアラの赤ちゃんは とても 小さいです 知っていますか)
K: IIE SHIRIMASEN DONOKURAINO OOKISADESUKA
(いいえ 知りません どのくらいの 大きさですか)
S: ICHISENCHIMETORU KURAIDESU
(1センチメトル くらいです)
K: SOODESUKA TOTEMO CHIISAIDESUNE
(そうですか とても 小さいですね)
S: HAI OKAASANKOARANO ONAKANOFUKURODE YAKUROKUKAGETU SODACHIMASU 
(はい お母さんコアラの おなかのふくろで 約六か月 育ちます)
K: OTONANO KOARAWA OOKISAWA DONOKURAIDESUKA
(大人の コアラは 大きさは どのくらいですか)
S: SHINCHOO 70SENCHIMETORU TAIJYUU 10KIROGURAMU KURAIDESU
YAKU10NEN IKIMASUYO
(身長 70センチメトル 体重 10キログラム くらいです 約10年 生きます) 
K: SOODESUKA MOTTONAGAKU IKITEHOSHIIDESUNE
(そうですか もっと長く 生きてほしいですね)
S: HAI WATASHIMO SOOOMOIMASU
(はい 私も そう思います)
K: KOARAWA ITUMO TOTEMO SHIZUKADE OTONASHIIDESUKA
(コアラは いつも とても 静かで おとなしいですか)
S: IIE CHIGAIMASU territory OMAMORUTOKIWA TATAKAIMASU territory WA NIHONGODE NANITOIIMASUKA
(いいえ ちがいます territory を守るときは 戦います territory は 日本語で 何といいますか)
K: HAI territory WA NAWABARI TOIIMASU
(はい territory は なわばり といいます)
S: NAWABARI MAMORUTOKIWA OOKIIKENKA SHIMASUYO
(なわばり 守るときは 大きいけんか しますよ)
K: KOARAWA ITUMO KINOUEDE SEIKATUSHIMASUNE NAZEDESUKA
(コアラは いつも 木の上で 生活しますね なぜですか)
S: HAI enemy WA NIHONGODE NANIDESUKA
(はい enemy は 日本語で なにですか)
K: HAI enemy WA TEKI TOIIMASU
(はい enemy は てき といいます)
S: HAI TEKINI attacked NAITAMEDESU attacked WA NIHONGODE NANIDESUKA
(はい てきに attacked ないためです attacked は 日本語で 何ですか)
K: attacked WA OSOWARERU DESU DEMO TORIGA OSOIMASENKA
(attacked は おそわれる です でも 鳥が おそいませんか)
S: YUUKARINO ABURAGA KIRAIDESU DAKARA DAIJYOOBUDESU
(ユーカリの あぶらが きらいです だから 大丈夫です)
K: SOODESUKA OMOSHIROIDESUNE KYOOMO TAKUSANNOKOTOGA WAKARIMASHITA
(そうですか おもしろいですね 今日も たくさんのことが わかりました)

コアラ愛にあふれた生徒たちは、普通ではわからないようなことを教えてくれる。嬉しそうにいろいろと教えてくれるので、こちらもついつい引き込まれて予定時間を過ぎてしまった。ただ、一生懸命日本語で話そうとする姿勢が素晴らしいのであまり気にはならなかった。

有袋類で、哺乳類のコアラは袋の中で赤ちゃんを育てる。お母さんコアラのおっぱいは子育てする袋の中にあり、その中で生活するのは、約6ヶ月間。半年近くお母さんのお腹の袋の中で守られていることになる。コアラの赤ちゃんは、1円玉程度の大きさで生まれてくる。最初の5ヶ月は母乳で、外に出る1ヶ月前から「パップ」を食べ、袋から出た後もしばらくは母親の縄張り内で暮らし、生後1年~3年で巣立っていくという。

離乳の時期にはお母さんコアラは、赤ちゃんコアラに「バップ」と呼ばれる「離乳食」を食べさせる。自分が食べたユーカリを腸内で半消化し、おしりから出したものだ。こうすることによって、お母さんコアラからユーカリを消化するのに必要な微生物を受け継いで、毒性の強いユーカリを安心して食べられるようになるのだという。

ユーカリは1000種類以上もあり、その中でもほんの数種類だけがコアラ食料になる。コアラはたいへんな偏食家。動物園では、その食料を入手するために一苦労するという。

コアラの学名は「ファスコラルクトス・シネレウス」。ギリシャ語で「袋を持つ灰色の熊」という意味。体長は65~82cm、体重は4kg~15kgで、平均寿命は13~18年といわれている。生息地によって大きさや体格が異なり、雄のほうが短命だという。 

群れを作らず、単独で生活をする。縄張り意識が強く、1匹あたり数百メートル四方の縄張りを持つ。自分の縄張りに他のコアラが入って来ると、歯を剥き出しにして噛みつき、引っ掻き、組み付いて蹴り、全力で侵入者を追い出す。繁殖期には、雌をめぐっての雄同士のみならず雌雄間でも激しい争いがあり、暴力的な一面もあるという。
ストレスに非常に弱く、人間に抱かれると強いストレスになるそうだ。ストレスが溜まると、クラミジアという細菌の影響が強まり、失明や不妊、最悪の場合は命を落とすことがあるという。

コアラが背が高いユーカリの木を選ぶのは、外敵から身を守るためだと考えられている。ユーカリの葉に含まれる「シネオール」という油の匂いを嫌がる動物が多いことで、コアラにとって木の上は安全な場所ということになる。コアラの尻尾が短いのは、木の股に長時間同じ姿勢で座っていても邪魔にならないよう、退化した結果だという。前足の5指のうち2指が手の平の側面から生えていて、親指が2本あるような見える。この2本の親指と中指の間に枝を挟み、しっかりと樹皮にしがみつくことができる。

日本でのコアラの飼育にはたいへんなお金がかかることで有名だ。餌代の額が、1匹につき年間1000万を超えるといわれている。寒暖差が激しい日本ではユーカリの栽培が難しといわれているが、特定の土地でしかおこなえない、農薬が使えない、風害対策が難しいなどの理由が挙げられる。


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