オーストラリア日本語教師奮戦記130コアラ談義③ 赤ちゃんは「ジョーイ」
イマニュエルカレッジ日本語教師2年目。Year 11 日本語クラス。大学受験学年1年目の生徒たちは大学入試の語学科目を日本語で受ける。イマニュエルカレッジで日本語の勉強を始めてから、前任の先生の指導を含めて今年で4年目になる。ひらがな、カタカナはもちろん漢字の読み書きもかなりのレベルのものをマスターしている。ただ、少し込み入ったことになると、特に話したり、文章を作ったりするときに苦労するようだ。
今年から授業の初めの10分間、自分たちの身の回りのことを題材にして質疑応答をすることにした。テキスト授業開始前の予備練習として大いに役立つことを期待していた。私の方から話題を振ることもあれば、生徒の方から問いかけてくることもある。その中で出てくる難しい言い回しや単語などの確認などが、生徒たちの日本学習の進み行きにプラス効果をもたらすことを期待していた。話題は「コアラ」。先週、先々週、そして今週も「コアラ」。次々にわかってくるコアラの生態は、今まで自分が予想していたものとだいぶ違うので、一つ一つが新鮮な驚きだった。
生徒たち:S 私:K
S: ARAISENSEIWA KOARANOKOEO KIKIMASHITAKA
(アライ先生は コアラの声を 聞きましたか)
K: IIE KIITAKOTOGAARIMASEN DONNA KOEDESUKA
(いいえ 聞いたことがありません どんな声ですか)
S: BUTAYA USHINI NIMASU TOTEMO OOKII KOEDESU
(豚や 牛に 似ます とても 大きい 声です)
K: ITU KOEO DASHIMASUKA
(いつ 声を 出しますか)
S: HAI breeding season NI KOEODASHIMASU breeding season WA NIHONGODE NANDESUKA
(はい breeding season に 声を出します breeding season は 日本語で 何ですか)
K: breeding season WA HANSHOKUKI DESU CHANSUGA AREBA KIITEMITAIDESU
(breeding season は 繁殖期 です チャンスが あれば 聞いてみたいです)
S: ARAISENSEI KOARANO AKACHANNO YOBIKATAO SHIRIMASUKA
(アライ先生 コアラの 赤ちゃんの 呼び方を 知りますか)
K: IIE SHIRIMASEN NANIKA TOKUBETUNA IIKATAGAARIMASUKA
(いいえ 知りません 何か 特別な 言い方がありますか)
S: AKACHAN KOARAHA JOOI DESU
(赤ちゃん コアラは ジョーイ です)
K: SOODESUKA HAJIMETE KIKIMASHITA OBOEYASUIDESUNE
(そうですか 初めて聞きました 覚えやすいですね)
K: YASEINO KOARAWA MORINONAKADE ANZENNI KURASHITEIMASUKA
(野生の コアラは 森の中で 安全に 暮らしていますか)
S: YASEINO TO KURASHITE WA NANNOIMI DESUKA
(やせいの と くらして は 何の意味 ですか)
K: HAI YASEINOWA wild DESU KURASHITEWA live DESU
(はい 野生のは wild です 暮らしては live です)
S: TAKUSAN MONDAIGA ARIMASU YAMANOKAJI KURUMAJIKO INU YUUKARINO BYOOKI TAKUSAN ARIMASU
(たくさん 問題が あります 山の火事 車事故 犬 ユーカリの 病気 たくさん あります)
K: SOODESUKA ZENBUNOKOARAGA SHIAWASEJYA NAINODESUNE
(そうですか 全部のコアラが 幸せじゃ ないのですね)
S: HAI DAKARA KUNIGA MAMORIMASU
(はい だから 国が 守ります)
S: ARAISENSEI KOARAGA HASHIRU SHIRIMASUKA
(アライ先生 コアラが 走る 知りますか)
K: EE! KOARAWA HASHIRUNODESUKA
(ええっ!コアラは 走るのですか)
S: HAI HASHIRIMASU TOTEMOHAYAKU HASHIRIMASU
(はい 走ります とても速く 走ります)
K: KOARAWA ITU HASHIRIMASUKA
(コアラは いつ 走りますか)
S: HAI enemy GAKURUTO NIGEMASU SONOTOKI HASHIRIMASU enemy WA NIHONGO NANDESUKA
(はい enemy が来ると 逃げます その時 走ります enemy は 日本語 何ですか)
K: enemy WA TEKI TENTEKI TOIIMASU
(enemy は 敵 天敵 と言います)
S: TEKIGAKURUTO KOARAWA 20 KIROMETO per hour DEHASHIRIMASU per hour WA NIHONGO NANIDESUKA
(敵が来ると コアラは 20キロメト per hour で走ります per hour は 日本語が 何ですか)
K: per hour WA JISOKU TOIIMASU SOODESUKA JISOK 20 KIROWA TOTEMO HAYAIDESUNE ODOROKIMASHITA
(per hour は 時速 と言います そうですか 時速20キロは とても 速いですね 驚きました)
各生徒たちが次から次へとコアラのことを話してくれた。どの生徒もコアラ愛にあふれていて微笑ましかった。これからもオーストラリアにしかいないコアラを愛し続けてほしいと切に願っている。嬉しかったことはどの生徒も自分たちの国にしかいないコアラを誇りに思っていることだった
コアラはそのかわいいすがたからは想像できないような声を出す。カタカナで表せばば「ブーブー」、あるいは「ゴーゴー」。ブタやウシが大きな声を出している感じだ。コアラのオスは鳴き声でなわばりを主張すると同時に、メスの注意をひきつけようとする。繁殖期になると、ブーブー、ゴーゴーと、とてもにぎやかになるという。きれいな声もあれば、かなりヒドイ声もあり、音量も音質も千差万別。ためしに鳴きまねをしてみると、オスはニューフェイスの出現に反応し、さらに大きな声で鳴き始めるという。また、いびきやゲップのようないくつかの鳴き声を出すことにより、コミュニケーションを図る。
コアラはそれぞれ生活する木と呼ばれる、いくつかの木から成る“家”があり、定期的にそれらの木々を訪れるという。これらの区域はコアラの生活圏と呼ばれ、他のコアラと重なる部分がある。これは繁殖期に他のコアラに会うためで、通常コアラは縄張り意識の強い動物なので、他のコアラの生活圏は訪れない。
通常メスのコアラは毎年1匹の赤ちゃんコアラを生むが、野生のメスのコアラがすべて毎年子どもを産むわけではない、特に、年を重ねたメスのコアラは2~3年に1匹のペースで出産する。赤ちゃんコアラはジョーイという呼び名で知られる。また、パッチ・ヤングやバック・ヤングなどと呼ぶこともあるという。
コアラの住む森はある一定の数のコアラしか住むことができまない。これは森の収容力と呼ばれ、羊の放牧地の様に、限りあるユーカリの葉は一定数のコアラにだけにしか食料として供給する事ができないからだ。おとなのコアラは毎晩0.5~1kgのユーカリの葉を食べる。コアラには消化器官として2mほどの長い盲腸がある。繊維質を分解し、体内に吸収しやすい他の物質に代える細菌が何百万もいるが、それでもコアラは摂取した繊維質のわずか25%しか体内に吸収することができないという。そのため大量のユーカリの葉を食する必要がある。
ほとんどの健康なコアラの身体組織にはクラジミアという微生物がいる。このクラミジアはコアラの頭数をコントロールすることに関係があると考えられている。コアラの生息地が失われると、自動車事故、飼い犬の襲撃、食糧不足というような悪状況が大きなストレスになり、クラミジアによる病気を引き起こす。生息地の減少は、土地開発、森林火災、立ち枯れのようなユーカリの木の病気が原因で、コアラが直面する最大の問題だ。オーストラリアは世界の中でも、最も高い割合で土地開発が行なわれている国のひとつで、すでに80%ものコアラの生息地が失われてしまった。コアラ自身は法律によって保護されているが、ほとんどのコアラの生息地は法律により保護されていないのが現状だ。
コアラは動作が遅いためほかの動物に捕獲されやすいので、ほとんど木の上で過ごしているが、もし木から降りると自分がいた木を見失って、迷子になってしまうといわれている。動きの鈍いコアラは、地上に降りると命の危険に晒される。天敵に狙われ身の危険を感じると、時速20km程度走ることができる。時速20kmというと、長距離ランナーや箱根駅伝の走者と同じ程度の速度で走ることができることになる。
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