【断髪小説】髪切り探偵(8)断髪チンチロ
チエイの屋敷の広間に時坂とチエイ、そして秘書、メイドが10人。
皆同じメイド服に身を包み、手を前に重ねながら綺麗な姿勢で立っている。
先ほど丸坊主になったチアキも、何事もなかったかのように列に加わっている。
坊主頭に白いカチューシャ。一見アンバランスな組み合わせだが、彼女の表情は落ち着いている。
この坊主頭は当たり前だとでも言うように、まるで最初からそうであったかのように、自然にその列に溶け込んでいる。
「次のメイドを選びたまえ」
チエイがそういうと、僕は周りのメイド達を見渡した。
そこで目に止まったのが、黒髪のストレートロングヘアーを、左右で小さく三つ編みにしてハーフツイン風にまとめているメイドだった。
「では、あの人で…」
彼女を指さすと、チエイが言った。
「シズキか。おい、シズキこっちへ来い」
シズキを呼び出すチエイ。
そこで僕は一つ提案をした。
「ただし、公平に勝負をするために、僕にはチアキさん、チエイ、あんたにはシズキさんについてもらいたい」
「あぁ、構わないよ」
そういうとチエイがシズキに指示をした。
シズキは姿勢良く落ち着いた雰囲気でゆっくりとこちらへ近づき、横についた。
髪の毛が切られることはないと思っているのか、涼しい顔をしているように見えた。
それを見た僕は、思わず拳をギュッと握った。
チエイの隣には、黒髪ロングヘアーで毛先に少しウェーブがかかっているチアキというメイドがついた。
断髪される事を既に了承しているからか、チエイの横に着くなり、すぐさま身につけている白いカチューシャを外して、スカートの位置にある小さなポケットの中に閉まった。
彼女の表情には、すでに勝負は決まっているという確信すら感じられた。
「さてと、時坂さん、2試合目と行こうか。
今回は断髪チンチロを行う」
チエイはそう言いながら、テーブルの上にサイコロを3つ転がした。
「ルールは簡単。チンチロリンを行なって負けたら髪を切る。それだけだ」
運のゲームか…。
「一応細かいルールを説明しておこう。
ここにサイコロが3つある。この3つのサイコロを、このお椀に投げる。
出目に関しては、3つのサイコロが揃わなかったら0点。
同じ数字が2つ揃った場合、残った1つのサイコロの1から6までの出目が高いものが勝ちとする。
つまり、1、1、6と4、4、5の場合は、1、1、6の方が6と出目が高いため、勝ちとなる。
それと特殊役がいくつかある。
1、2、3はヒフミと言って2倍払う。4、5、6はシゴロと言って2倍貰う。
ゾロ目(2、2、2〜6、6、6)は3倍貰う。
ピンゾロ(1、1、1)は5倍貰う。
お椀から落ちることをションベンという。この場合も負けとなる。
これが通常のチンチロのルールだ。
だが、今回は断髪チンチロなので、シゴロの2倍貰う等に関しては2回切る。
というルールになり、ヒフミの2倍払うの場合は2回切られる。
2倍払う状態で更に相手がピンゾロの場合は2かける5になるので10回切る。と言った感じになる。
そしてどちらかのメイドの髪の毛が切るところがなくなり丸坊主になった場合に負けとなる。
ルールに関しては以上だが、不明点はあるかね?」
「いや、大丈夫。ルールは理解した」
「今回のこの断髪チンチロに関しては、断髪じゃんけんみたいに戦略というものがとれない。
なので完全に運のゲームだ。
もちろんサイコロにも細工はない。
そしてこのゲームに私が勝った場合は君の負けだ。
覚悟はできたか?」
「あぁ、ここに来ると決めた時から覚悟はできている」
「よかろう。では、断髪チンチロを始める!」
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