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【断髪小説】ヘアフォールウイルス(6)リンコの断髪

割引あり

「こ・・・これは!?」

リンコは自宅で特殊能力を試していた。
姿鏡を見つめながら、自分の目を見つめて『イメチェン』と叫び、リンコの髪型がセミロングヘアに変わった。再び『イメチェン』と叫ぶとすぐにボブヘアへと変わり、そしていつものロングヘアーに戻った。

「ウィルスの呪い・・・。私の特殊能力はどうやら、自分や他人の髪型を自由に変えられるらしい。
発動条件は相手の目を見ること。そして、『イメチェン』と声に出すこと。その際に、イメチェンしたい髪型を頭に浮かべる事で、その髪型にする事が出来る。
今流行っているヘアフォールウィルスを直すのにはうってつけの能力。
ただし、私の事が好きじゃなくてはならないため、それをどうにかしなければいけないのと、沢山の人に対してこれを使うのは難しする・・・。
だけど、この能力があれば、皆を救えるかもしれない!」

リンコは皆を救う決心をした。
だが、それと同時に問題を解決しなければならないと頭を抱えていた。
1つ目は、自分の事が好きじゃなくても能力を発動できること。
2つ目は、能力を拡散出来ること。
方法が見つからず、サクラやアンナに連絡するも、能力が使えるようになった事はわかったのだが、解決できそうになかった。
そんな中、1本の電話がかかってきた。

プルルルルル…

「もしもし、伊藤さん?俺、高橋だけど・・・」

「あら、高橋くん、どうしたの?なにか問題でも?」

「・・・うん。その俺もウィルス感染してしまっていて、それで・・・。
坊主にならなければならないんだ。だから・・・」
ソウタは言いにくそうにリンコへと事情を説明する。

「!高橋くん、今どこにいるの?」

「え?駅前の商店街だけど」

「わかったわ、すぐいく」

「あ・・・うん」
リンコはソウタのいる商店街に向かった。
リンコには確認するべきことがあった。実行した能力で坊主にした場合、対象のウィルス感染が収まるのか?それが知りたかった。
そのためにソウタのところへ向かったのであった。

駅前のカフェ「サリ」で待ち合わせした二人は、席に付き、お互いに事情を説明した。

「つまり、伊藤さんは、僕に能力を試してみたいんだね。うん、もちろんいいよ。坊主にするのもそんなに抵抗はないし。それに戻せるって言うからなんのデメリットもないしね」

「高橋くん、ありがとう。それじゃ〜、早速ためすわよ」

『イメチェン!!!!』
リンコはソウタの事をじっと見つめてそう唱えた。
ソウタの髪型はショートヘアから、坊主頭になった。
ソウタはカフェに映る自分の姿を見た。

「はは。坊主・・・似合わないな俺。
じゃーマルメナで確認してみるね。
お!!!!ゼロ!!!!0になってるよ伊藤さん!!!!」

リンコはホッとした感じでフゥっと息をはき、なぜかソウタの坊主頭をなでなでした。

「この頭、気持ちいいわね。私好きよ、坊主頭の男子。
もしよかったら、しばらくその頭で過ごしてくれないかしら?」

「え!?」

「ただの私の趣味よ。嫌かしら?」

「い・・・いやいや、全然!むしろ伊藤さんが坊主頭が好きだっていうなら、このまま過ごそうかな・・・。
そ・・・その、いつでも触ってもいいからね」
再びリンコはソウタの坊主頭をなでなでした。
リンコは密かに嬉しそうな表情をうかべてニヤついている。

「あれ?でも、なんでウィルスが治ったんだろう。好きな人から髪の毛を切られないと治らないって話だったんじゃ?」
不思議そうにソウタはしている。

ゴホンと、あからさまに偽の咳をするリンコ。
「察しなさい!そういう事だから!」
ソウタの頬が赤く染まる。

「あ・・・うん」
嬉しそうにソウタがそう呟く。

「あと、私もウィルスに感染しているのだけれど、自分自身に『イメチェン』を使っても、どうやら効果はないらしいのよね。
だから、高橋くん、私の髪の毛切ってもらえるかしら?」

「あ・・・でも・・・」

再びゴホンというあからさまな嘘の咳をするリンコ。
「あなたの好意は知ってるわ」
顔を赤らめながら自信満々に言う。

「・・・うん」
ふたりとも顔を赤くしながら、二人が顔を見つめ合う。
その瞬間…

『フィールド』

カフェに居るミステリアスな男が、そう口にして、笑みを浮かべている。
ソウタとリンコが特殊な空間に移動した。そこにはハサミ、バリカン、コーム、カミソリ等、美容道具が一式揃えられている、ソウタとリンコ専用の空間に転移した。

「え!?何?ここは!?」

「落ち着きなさい。おそらくこれは誰かの能力によるものだと思う。美容用具が一式揃っている事を見ると、高橋くんが私の髪の毛を切るために誰かが作った空間。そう考えるのが自然だわ」

「一体誰が!?」

「わからないわ。でも、丁度良いわね、ここにハサミもバリカンもある。
さぁ、さっさと私の髪の毛を丸めて頂戴」
そういい、備えられている美容室にある椅子に座り、足を交差させた。

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