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【断髪小説】ヘアフォールウイルス(4)アンナの断髪

割引あり

山本 杏奈(やまもと あんな)はマルメナの数値が6になり、政府からはハサミとバリカンが届いた。

「ど、どどどどぅしようぉ〜!
んー。これがハサミとバリカン」
アンナは段ボール箱からハサミとバリカンを取り出し吟味している。

「ハサミはまぁ、普通にハサミよね。
だけど、このバリカンって、こんなにずっしりと重くて黒い塊なんだなぁ〜。
って関心してるばあいかぁ私!」

ハサミを机に置き、バリカンを手に持ち、額にあててみる。
「いやいやいやいや・・・こわい。私には自分で坊主になんてできない・・・。
で・・・でも、坊主頭にならなかったからって、それで死んだらお母さん悲しむよね・・・。それにリンコも。リンコに髪の毛切ってもらいたいなぁ」

ふぅっとため息をついた。

「うーーーん、だけど、結局やらなければイケないんだよね〜。
でも、無理!無理無理無理ぃ〜〜!絶対バリカンなんて怖くてむりぃ〜〜〜!」

アンナはバリカンをテーブルに置き、ハサミを取り出した。

「こっちなら・・・まだ・・・出来なくもない」
卓上鏡を机におく。
ハサミを手に持ち、左手は前髪を掴む。
「こ・・・このくらいなら・・・切っても怖くないかなぁ〜」

恐る恐るアンナは前髪にハサミをあてて、鏡を覗くと、目を閉じる。

ジョキッ!

ジョキッ!

ジョキッ!

断髪音と共に目を開けると、そこにはパラパラと前髪が床へと落ちていく。

「うわぁ。切っちゃった・・・」

テレビからはニュースが流れている。
「・・・好意がある人、好きな人から髪の毛を坊主頭に丸められた場合のみ、ヘアフォールウィルスの効果がなくなります」

「え!ってことは自分で自分の頭を丸めたところで、丸め損ってこと!?あっぶない〜わたし〜〜〜、セーフ、セーフだったぁ〜!
っと、いっても前髪切っちゃったよぉ〜。パッツン前髪とか・・・私らしくないよぉ〜。
って、ことは、私を好きな人に丸めて貰う必要がるってことかぁ〜・・・そんなのわからないよ・・・。
私が好きな人なら・・・簡単なんだけどなぁ。
うーん、本当にどうしよう。もうだって今日中に私の事好きな人を見つける必要があるってことだよね」

アンナは深く考え込んだ。
だがしかし、何も浮かばず、とりあえずアンナは家を飛び出した。
近所の商店街へ向かい、あたりを見渡す。

そこで同級生を見かけて、目があった。
だけど、今はそれどころじゃないと、軽くスルーした。

(・・・3)

「ん!!!!!なんだ、今の数字は!?3?脳裏に3が浮かんだけど、どういうことなんだろう?気のせいかな?」

アンナはその場で立ち止まり、再び、あたりを見渡す。
近所に住む親しいお姉さんと目が合う。

(・・・5)

「ん!上がった!」

「え?なにアンナちゃん〜。上がったってなに?」
アンナの近所に住むお姉さんの山田 美咲(やまだ みさき)が話かけてきた。

「あ、ごめんなさい!ミサキさん!そのなんていうか、ちょっと私疲れているみたいで・・・その・・・ごめんなさい!また!!」

アンナは混乱してミサキと話している暇はないと思い、その場を後にした。

「アンナちゃん、なんだったんだろう〜?」

再び、キョロキョロしていると、全く見ず知らずのおばさん2人と目があった。

(・・・1)
(・・・2)

その後、中年のおじさんとも目があった。

(・・・6)

「え!?どういうこと、これって、人と目が合うと数字が頭に浮かぶ!?
最初に会ったのは同級生が3、そしてアンナさんが5、知らないおばさんが1,2、知らないおじさんが6・・・。
これってもしかして私への好意が数値化している?ってことなのかな?
試してみよう。
まずは、全く私には好意がなさそうな女性を・・・」

アンナは全く好意がなさそうな女性と目を合わせた。

( ・・・1)

「おぉ〜。じゃー好意がありそうなぁ〜・・・目線を感じる人に・・・」
目を合わせた。

(・・・5)

「おぉ〜!間違いなさそう!なんだろう、ウィルスのせいでこんな特殊能力に芽生えたのかな?・・・でもそれはまだわからないし、今はそれどころじゃない!
でも、とりあえず、この能力があれば、乗り越えられそう!!
でもでも、この数値、好意が高い人は分かったけど、どのくらいの好意があれば、ウィルス撃退出来るんだろう。今のところ最大は6かぁ・・・。
でも、6の人は全く知らないおじさんだったし、おそらく本当に好きってレベルじゃないと思う。そうなると、6以上、何段階表記かはわからないけど、無難に9以上あれば、おそらく大丈夫?
ただ問題は、好意レベルが9あったとしても・・・その人にいきなり髪の毛切ってください、なんて言えるかな?
・・・でも・・・やるしかない!さがそう!」

アンナは虱潰し(しらみつぶし)に商店街の人達と目を合わせた。

(・・・3)
「違う!」

(・・・1)
「違う!」

(・・・4)
「違う!」

(・・・2)
「違う!」

(・・・5)
「違う!違う!違う〜!」

いくら目を合わせてもアンナに好意を抱くものは見つからずに、諦めかけていた。

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