建設業における偽装請負問題
こちらでは、建設業における偽装請負問題について書きたいと思います。
偽装請負問題は、我々の電気通信工事業においても年々、働き手不足により大きな問題となっております。
偽装請負を述べる前に、請負と労働者派遣についておさらいします。
1.請負とは
請負とは、注文者が請負者に対して、仕事の完成を目的として作業を委託し、仕事の完成という「結果」に対して報酬を支払うことを約束する契約です(民法632条)。
請負者の労働者は、所属する請負者の指示命令に従って作業するものであり、工事の注文者が当該労働者に対して直接指示をすることはできません。
基地局工事を通信キャリアから請負う元請負者等がこれに該当します。
2.労働者派遣とは
労働者派遣とは、派遣元の事業者が自己の雇用する労働者を、派遣先事業者に派遣し、当該派遣先事業者の指揮命令を受けて派遣先事業者のために労働に従事させることです。 ここで、派遣元の事業者より派遣された労働者は、派遣先の事業者の指示に従って作業することになります。いわゆる事務所内の事務派遣さんや技術派遣さんがこれに該当します。
3.偽装請負とは
偽装請負とは、実態は2.の労働者派遣(または労働者供給)ですが、労働者派遣法や職業安定法等の規制を免れるために請負契約・準委任契約その他労働者派遣以外の名目で契約を締結することです。
また、建設業務については、労働者派遣法において、建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業またはこれらの作業の準備の作業に係る業務)等の一定の業務について、労働者派遣事業が禁止されています(労働者派遣法4条1項)。
4.なぜ偽装請負が起こるのか?
偽装請負は、以下のようなメリットを不当に享受しようと考える事業者によって行われています。
①労働基準法等が適用されず、最低賃金規制、割増賃金の支払、有給休暇の付与等の義務を免れるため。
②健康保険や年金、雇用保険等の保険料の負担義務を免れるため。
5.偽装請負の代表的なパターン
①代表型(典型的パターン)
請負と言いながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤・勤務時間の管理を行うパターンです。
②形式だけ責任者型(単純業務型パターン)
現場には形式的に責任者を置いていますが、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じパターンです。
③使用者不明型
事業者Aが事業者Bに仕事を発注し、Bは別の事業者Cに請けた仕事をそのまま出すもので、Cに雇用されている労働者がAの現場に行って、AやBの指示によって仕事をするパターンです。
④一人請負型
実態として、事業者Aから事業者Bに対して労働者を斡旋するものの、Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるというパターンです。