高校生インターンシップ研究会 Vol.2
前回は、株式会社アッテミーの紹介と、インターンシップの事例について紹介させていただきました。
今回は、高校生インターンシップ研究会の3人のディスカッションの一部についてお届けしたいと思います。
まずは、私から、社会環境の変化などについての情報提供をさせていただきました。
社会は大きく変化している。これまでの日本企業は、少しずつ変化・進化を遂げている。
社会は変化して、働く環境や、働く制度、働き方について、どんどん変化している。
つまり、学校の先生にとっては、自分の就職活動の時、大学生の時の価値観と、今の学生・生徒の状況は異なります。また、家族の方も、「自分の若い時は、こうだった」という点は、今は通用しずらい環境にもなっています。
昔の「良い企業」が、今の若者にとって、今の若者の20年後・30年後の「良い企業」ということと異なります。
このような状況の変化を理解するのは、高校の先生、大学の先生単独では困難で、さまざまな人たちと協力しながら、共に創る、まさに「共創」する中で、若者の個人のキャリアを中心に添えて、将来の幸せなキャリアを支援するような取り組みだどれだけできるかを検討していくことが求められます。
社会が変わり、企業も変わり、働き方も変化しています。
そして、それに合わせて、小学校・中学校・高校での学び方も変わります。
大学も変化し、大学の入学方法も変化し、大学で何を学び、どのような経験・知識・スキルを身につけるかについても変わってきています。
そのような中で、インターンシップはとても重要な一つの手段ではないでしょうか?
若者を主語に添えながら、一緒に何ができるかを考えていくことが重要ではないでしょうか?
伊藤さん
「高校生の就職活動は、まだ変化が乏しい状況にあります。高校生のインターンシップを進めるにあたって、就職の仕組みはまだ変わらない中で、キャリアの変化の中で、どのようなことが大切だと思いますか?」
吉田さん
「社会の変化に対して、気づいている高校の先生と、そうではない先生もいます。高卒就職する生徒が多い中では、就職する仕組みとしては、社会のセーフティーネットとして有効に働く部分もある(一人一社制で、学校を経由して応募する制度)。高校生にとっては、さまざまな業界や職種を理解して、納得する企業を選ぶために、インターンシップは価値があると考えています。一社選んだ後に、その後働くことや、その後のキャリアを考えるためには、先生や親など以外の、働くリアルの大人、ロールモデルと会うことが、しなやかに折れずに幸せなキャリアを形成するために必要だと思っています。」
今永
「企業が求める人材は、一つではなくて、企業によって異なります。つまり、企業にとって「優秀な人」は異なることになります。ともすると、大学・高校の教員は、一律で「優秀な学生」として捉える傾向にあります。これを解決するためには、教員そのものが、社会のいろんな人と会えるか、ロールモデルとなり得る人に、教員そのものがたくさん出会い、働くことが何かを理解することが重要であると考えられます」
伊藤さん
「インターンシップは職業体験というイメージがあって、進学校などでは、まだまだかな?と思うという声も聞くが、高校生のインターンシップが進んでいくことは、どのような意味があるとお考えですか?」
今永
「進学校こそ、インターンシップは大事だと思っています。偏差値が高いから進学するのでインターンシップが不要というのはおかしいと思っています。得意な科目や成績を基準に進路選択をするのではなくて、将来のなりたい姿、なりたい職業などがぼんやりでもイメージがあって、そのためにどのような大学を目指すのか、そしてそれに必要なものを学ぶことが重要であると思います。つまり、まずは、インターンシップなどで、ロールモデル
インターンシップを得て、学習意欲が増加することなどの効果もあるので、このようなことも含めて、生徒の将来のために考えることが重要です」
吉田さん
「進学実績が過度に求められる高校の事情や、企業の採用方針などが変わらない点に課題があるかもしれないと思います。少子化の中で人が集まらないので、企業としても、ある程度の学歴などがあるような学生を採用してしまっている実態がある気がします。一方で、高校生でも主体的に動く学生に関しては、大学生と比べても、一緒に働きたいと思えるような生徒がたくさんいます」
今永
「企業としても、採用してしまった後に、組織内での影響を及ぼすのに、数年間がかかっている。つまり、もうこの時点で、将来にわたって、じわりじわりとダメージを受けているような状況にあると考えられます」
伊藤さん
「2020年度から探究学習が必修科目として展開されるようになっています。生徒が自主的にという点がポイントになっています。
一方で、課題として、ビジネスプランコンテストや調べる学習が長いのみ、発表の場を設ける、プレゼンテーションを行うなどの取り組みが多くなっている。これまでの地域との関わりに応じて濃淡があるが、発表で終わってしまうことが多いと感じる。ビジネスプランコンテストのような形式も増えてきていて、参加して発表することがゴールになることも多く感じます。
また、大学の過半数が定員割れするような状況にあって、大学入試のあり方が、従前と変わってきている。これまでの筆記のペーパー試験ではなくて、総合型選抜などが増えている。どんな課外活動に取り組み、どんなことを考えて、何を学んで、何ができるようになったかが問われるように変わってきている。このような変化は、進学校であっても、探究学習やインターンシップの需要が高まってきていると考えています。
近年は、通信制高校への通学する学生の割合が増加している。これらの学生に対しても、インターンシップの機会は有益であると考えています。」
今永
「これからの教育は、マスで一方的に講義を行うようなスタイルではなくて、一人一人の学生に対する個別対応が求められるように変化している。
大学生でもインターンシップを、全員必修のプログラムとして大人数へ実施することは困難です。
また、全員必修のプログラムだと、「学生が単位だから参加しました。この企業には全く興味ないです」という発言があると、企業の人はどう思うのでしょうか??
インターンシップに参加する学生には、「やる気と愛想、マナー」がある程度良い学生に企業は来てほしいと思うのが本音ではないでしょうか?
少なくとも「単位だから、やる気なくイヤイヤくる学生」に対して、企業の人が、本気で、仕事の魅力を伝えるのはなかなか難しいのではないでしょうか?
→このすり合わせをどのように行うか重要ではないでしょうか?
「平等」とは何か?インターンシップにおける平等とは何か?
・インターンシップを受ける機会の均等なのか?
・企業に行きたい人、やる気のある人の相性を合わせることなのでしょうか?
吉田さん
「この学校だから、このインターンシップということではなくて、生徒個人のキャリア意識、社会との接続に必要な準備、心構えや社会人スキルなどの目的意識が、同じ学校の中でも千差万別で、それぞれの学生に応じたものが必要である。生徒の成熟度、経験によって、同じプログラムでも、生徒の状況によって満足度や効果が異なる可能性があります」
「高等学校の探究学習の広がりは、インターンシップニーズを高めていると考えている。探究学習が軌道に乗ってきた高校は、実践的な取り組みが探究学習の中でできてきたが、学校のプロジェクトではなくて、さらに実践的に、学外での実践の場で、本気の場面での取り組みが求められるような形へと発展しているところもあると思います」
といった形で、社会環境の変化、高校の状況など、いろんな点を踏まえた議論が行われました。
参加者の方からの感想
まずはインターンシップを経ることで様々な大人と触れ合い、多くの価値観と接することで生徒自身の思考をより深いものにすることができるのだなと思いました。これがやりたい!ということがインターンシップで見つけられれば、学習の捉え方も大きく変わるでしょうし、本当に生徒自身のキャリア形成につながっていくのだと思いました。
一方で、懸念として、「やらされている」感で行く人も一定数いるのだろうなとも危惧してしまいますし、やる上での負担感というところに目がいってしまう教員の気持ちもわからなくはないです。理想と現実の差が大きいからこそ、インターンシップという活動になかなか一歩が踏み出せないのかな。と感じました。
「インターンシップから進路が実現できる高校」がとても魅力に感じています。生徒が社会とつながって、やりたいことを見つけることで、学習や進路に向けても積極的になっていくのではと期待していますし、ゆくゆくは学校の魅力、アピールポイントにもなっていくのかと思います。
<感想>
インターンシップが全てではないと思いますが、将来のキャリア形成に向け、単なる勉強の成績による志望校選択ではなく、自分の将来のなりたい姿から、何をどのように学ぶかを考え、努力を続けることで、実現していくことにつながる可能性があると思います。
一方で、これを実現するためには、関係者の教員の人たちも非常にハードな業務になることも想定されます。組織的にも取り組む必要があり、一致団結して行う必要がありますが、意思統一するのもなかなかむずかしい状況かもしれません・・・。
また、制度としての就職のあり方、企業との関係性も個別に異なると言ったように、なかなか複雑で難しい問題も抱えているような気もしましたが、一方で、この状況から目を背けるのではなくて、だからこそ、高校生一人ひとりに向き合いながら、一人一人の幸せなキャリア形成、良い就職や進学などの意思決定に、どれだけ寄り添っていけるかということが問われているように感じました。
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