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地域イベントに爪痕を残した話題のあの人は今!? ~コロナ禍の歩み~ 城陽市のシェフオーナー・松本真さん、木津川市の美容師オーナー・城野尚美さん、聞き手/徳永祐巳子

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自己紹介

徳永:まず自己紹介をお願いします。

松本:株式会社Simple plan取締役の松本真です。il fico(イルフィーコ)というお店をしています。10年ほど祇園や京都で料理人をして、15年前に地元城陽へ戻り、3店舗ほどお店を出しました。食を通じて地域の方にハッピーになっていただきたい、盛り上げたいということで地域活動の中で「城陽メルカート」というイベントを5年間主催しました。そこで様々な料理人、農家、ボランティアの方々と一緒に事業を行い、地域にいろんな刺激をつくり、共にチャレンジしていける仲間ができました。

城野:木津川市で生まれ育ち、創業58年の、母が始めた「パロン美容室」で2代目オーナーをしている城野尚美です。短大卒業後、大阪警察病院で医療クラークとして半年、南京都信用金庫で6年勤め、双子の出産を機に退職、30歳で美容師の免許をとりました。美容師は仕事のためで、本当にやりたいこととして、アートの力でまちに光をあてる芸術祭「木津川アート」の立ち上げスタッフや、地元の食・手作り品・ワークショップが楽しめる「青空バル+クラフト」を企画し、イベントに情熱を燃やしていました。その後、7年ほど前に出会ったトップヘアメイクアーティストの上田美江子先生の影響を受けて、美容の世界にどっぷりとはまっていきました。

京都南部で大きなイベントを企画して

徳永:お二人の共通点といえば、城陽や木津川市で大きなイベントを企画されたこと。いろんな人とのつながりが生まれるイベントですが、良い面も大変な面もさまざまなことを乗り越えてこられたと思います。

松本:イベントは地域のみなさんに喜んでもらうことが大前提にありますが、「城陽メルカート」の目的は、城陽という町を知ってもらうことで、自分のお店やお店に関わる人たちが潤うことでした。商売的にスタートしましたが、賛同を得られないこともあり、自分としてはジレンマがありました。地域で広げていきたいけれど、地域にはビジネスを目的に活動することを捉えにくいと感じている人が多く、ボランティア的に動いていかないといけません。続けていく中でビジネスとして地域にどんな刺激を与えていけるだろう、と行政の方や商工会議所の仲間と話しをすることは勉強になりました。その中で規模感を広げるにはどうしたらいいのかを考えた時に、各団体の橋渡しができれば、繋がりの中の価値を生み出すことができるのではないか。行政も商工会議所も青年会議所も、あるいは他団体のボランティア、学校、シルバーさんを繋げていく作業をしたときに、新しい繋がりが生まれ、できることが増え、価値を生み出すことができたのではないかと思います。

徳永:1年目は大変だったのではないでしょうか?

松本:初速は元気でいけますが、2年目は初速の元気がなくなり、さまざまな問題が浮き彫りになりました。地域のイベントは3年目にピークを迎えます。疲れもやり方もピークがくるので、続ける場合は、ビジネスにふるのか、地域(行政・福祉)にふるのか、どちらかにふりきらないといけません。「城陽メルカート」は地域にふることを選びました。

徳永:イベントの3年目は節目ですね。実際にやってきたメンバーだからうなずけることが多いですね。

城野:ほんとわかります。

松本:やりだす時はなんであんなに無責任になれるんでしょうね。楽しいことしか考えてないですね。

城野:同感です。私の場合は、まず「木津川アート」のボランティアスタッフに参加しました。でも、繰り返すことが苦手で、3年目に違うことがしたくなりました。地元の同級生が自分の作った商品を売り出したいということでお手伝いをしたのですが、売るだけではなくマルシェをしようとなりました。ちょうどその時に奈良でシェフェスタという食の祭典をしていて、すごく感動しました。普段レストランでしか食べられないメニューを公園で楽しめるなんて、まるで海外のようで!これを地元でやりたいと思いました。仲間を巻き込み、怖いもの知らずでスタートしました。どんな人を呼ぼう、どんなものを売ろう、しょぼいイベントにはしたくなかったです。でも、1年目は嵐で、途中中止になったんです。
 

松本シェフ:それもテントがひっくりかえるような嵐でしたよね。

城野:そうなんです。不完全燃焼で終わったので、2回目はリベンジをしたかったんですが、2日間のうち1日が嵐でした。ようやく3回目に成功。でも、どんどん規模が大きくなり、ボランティアの範囲では厳しくなっていきました。松本シェフがおっしゃっていたように、楽しいだけでは難しくなり、どうするのかの判断を迫られました。結果、一旦立ち止まることになり、終わりました。

徳永:天候はどうしようもないですね。

松本:イベントあるある、天候は一番影響を受けますよね。「城陽メルカート」も2年目に特別警報がでるくらいの大雨で敢行したんですが、とんでもないくらい苦情の電話がかかってきて、ネットの書き込みも激しかったですね。

徳永:決断が難しいですね。どちらもリスクがありますから。

城野:私はイベントをして五十肩を煩って、半年苦しみましたよ。

松本:ボランティアでここまで担わないといけないの?と思いますよね。 

徳永:いろいろ苦しいことも経験しておられますが、イベントを立ち上げるには、パッションが必要ですね。お二人はかなりのパワーをお持ちですよね。地域にはそういう人が必要だと常々思っています。では、その後について教えてください。

イベント後の変化

松本:城陽メルカートは5年やりましたが(2012~2016年)、5年でやめようと思っていたので、「最後のメルカート」と銘打って終えていく形になりました。その後、京都府の観光資源を生かしていこうという取り組みがあり、「海の京都、森の京都、お茶の京都」の実行委員会に入りました。地域での最終イベントとしてマルシェをやろうとなり、「城陽メルカート」のノウハウを行政に託し、私は遠隔的に支援をし、一つの役割を終えていきました。
地域を元気にするということは1日元気にしてもそれほど経済効果はなく、一過性のものでは地域は盛り上がったふうで、実は疲れが残るだけです。思い出づくりにはなりますが大きな地域活性を生んでいるかは疑問が残りました。一旦立ち返り、自分はビジネスをするためにこの町に帰ってきたのだから、ビジネスとして100年続く産業を起こしていくという次の行動へと移っていきます。それは「ワインをつくる」ということです。1日だけ盛り上げたというところから、100年長く盛り上がっていく地域づくりを始めようと思いました。さまざまな活動をしている頃にコロナがきました。 

徳永:ワインづくりは大変な道のりですよね?

松本:想像を絶します。果たしてこのままやり続けて私の生涯大丈夫でしょうか?という感じです。使命感のみでやっています。ワイナリーをつくるために、会社をつくって、会社の売り上げの余剰でワインづくりをしています。ま~給料があがらないという状況です。イベントより持ち出しもとんでもなく多いですね。

徳永:城野さんはどうでしょうか?

城野:コロナ前の話でいくと、「青空バル+クラフト」を卒業し、上田 美江子先生との出会いから、自分探しに走りました。これまで地域に注いできた力を、次は美容を極めることに。上田塾に入りさまざまなショーについていき、アシスタントをしました。見たことのない世界へのチャレンジです。
イベントは団体プレーでしたが、完全真逆の個人プレーにシフトチェンジしていきました。
ポーランド、パリ、ロンドンなど年に2回ほど海外のショーやコシノジュンコさんのショーでアシスタントをしていましたが、その後コロナがやってきて、すべてなくなりました。一人悶々と美容室を営業することになるのですが、私たちの仕事は、休んでも休まなくても保証対象にはならなかったんです。生活するために開けてないといけませんが、コロナが出る不安もあり。でも、リアルな仕事がストップすると収入源がなくなるので、オンラインの勉強を始めました。 

徳永:新しい挑戦、美容の世界はどうでしたか?

城野:ハードルが高かったです。30歳から美容師を始めたので、上田塾に入ることも悩みましたし不安もありましたが、ワクワクしたらゴー!の私なので。上田 美江子先生に誘われたら二つ返事で「はい」と、絶対に断らないということを決めていました。技術向上の早道でしたね。恐れながらも私は、「何かあったら呼んでください」と先生にアピールしていました。

コロナ禍で自粛などの状況で

徳永:シェフのコロナ禍はどうでしたか?

松本:コロナが流行り出したのが2020年の3月頃でしたね。怪しいなと思って4月1日に店を閉めました。世界が変わるのではないかと思っていて、普通では営業できないなと思っていました。僕はほとんど失敗の人生で、そもそも失敗が怖くないということもあります。マイナスをマイナスのままにしたくないので、これを機会としようとして、一番最初に行動をとったのが「閉める」という作業でした。「続ける」は機会を逃すと思いましたから。それこそこの地域では一番早かったのではないかな。コロナが広まる前に無期限休業としました。そこに批判もありました。「先んじてあなたが閉めたらえらいことです」と。何をしても批判ですね。とにかく従業員も10数名いたので、彼らを食べさせることを考え、来ていただくお客様がゼロになっても食べていけるステージをつくるということにシフトチェンジしました。オンラインの作業やインターネット販売をしていき、2年半たった今多くの形になってきました。今はご来店いただく機会も増えてきましたので、これまで停止させていたものを動かすという次のステージにきました。9月からお店を再開し、地域に対する温度を入れていく作業と、一番お金のかかるワイナリーを動かしています。 

徳永:決断ですね。

松本:百貨店の売り場との関係性も築けました。売り場は困っていましたので。城野さんがおっしゃっていたことと近いですが、声をかけてもらったら「とにかくやります」というお返事をしていました。大きな波に流されないようにと手を取り合っていました。その後も百貨店からオファーがくるようになりお取引の幅が広がりました。もし守りに入って、とにかく経費を抑えて、傷つかないようにしていたら全部が終わっていたと思います。止めるところ、動かさないところ、新しく動かすところをどうわけていくのかの機会をコロナではいただいたと思います。

徳永:お二人ともに最初の立ち上げが好きなタイプですよね。(私も同類)

松本シェフ:エネルギーが枯渇しないんですね。

城野:好奇心旺盛ですからね。見つけるのが得意で、行動も早いです。

徳永:私はお話を聞かせてもらうことで、パワーをいただいています。松本シェフ、ワインのことをもう少し詳しく教えてください。

松本:河内ワインさんを参考にしたとき、あの地域は、いちじく、梅、お米と、名産が城陽と全く同じなんですね。ぶどうだけが城陽にはなかった。全国のワイナリーを回ったときにあるワイナリーのかたが、「日本でブドウを作るのは雨が多く湿度も高いので、気候は適さないけれど、日本人には技術、覆せるパワー、学び、続けられる忍耐があるので、日本のワインは世界のトップをとる」とおっしゃっていて、おもしろいプロジェクトだと思ったんです。マイナスなこと、人より恵まれていない状態を機会転換して、チャンスと捉え、お金持ちがお金持ちのままいくのではなく、這い上がっていく方が面白いと思っています。今も馬鹿にされているんですけどね。馬鹿にされればされるほど面白くなるというか、少なくともあと5年くらいではワイナリーを完成させたいと思っています。ごちゃごちゃ言っていた人たちの掌が返っていく感じがおもしろいでしょうね。1億円くらいの価値があるなと思ってがんばっています。正直難しいし、リスクも高いです。実は、これまで5年やっていた畑を閉めないといけなくなり、一緒にやっていた親父も亡くなってしまったため、やめようと思ったのですが、大きな土地を借り入れることができたので、去年から再始動しました。今は農家さんや多方面からのサポートをいただき、お給料をしっかり払ってやっていこうと思っています。 

徳永:がんばっておられる姿勢が、周りにとって励みになっていますね。

城野:私も同じです。パソコンが苦手でしたが、この先を考えると必要になってきます。オンラインセミナーにお金を投資して勉強しました。1年目は、全角半角もわからず使い方で四苦八苦。息子にも教えてもらいながらなんとか今はオンラインでヘアとメイクを教える講座ができるように成長しました。自分ができないところから成長していく過程も好きです。かめの歩ですけど、1年後には形になっていると思うんですね。まずはやってみることが大切だと思います。チャレンジは素晴らしいなと思っています。

これから目指していること

徳永:では最後にこれから目指していることについてお話ください。

松本:大きく3つ目標があります。人が輝くステージをつくることがテーマなので、今働いてくれている社員20数名のステージをつくることです。1年前まではこの時間ごろごろしていたのよという主婦が今はタルトを作っていて、その商品が百貨店に並んでいます。これってめちゃくちゃすごいことで、エネルギーを一個創出しているということですね。
このステージをつくることは、自分が料理人として料理と向き合っているだけではできなかったことです。
2つ目が、100年続く産業をつくることです。これは自分が死んでから産業が続いているかということがポイントです。城陽ワインが誰かの口に入っていることを天国から見守りたいです。
3つ目は、あまり言っていないことですが、小説家になることです。
純文学が好きで、芥川賞をとろうという目標で執筆をしています。これは前提として、クリエイトをし続けることでしか生きている感覚がないということです。ステージづくりも、料理もワインも経営も、素晴らしいクリエイトなのですが、料理は商業でやっていることで、とてつもない責任が伴っています。一方、芸術はとてつもなく無責任で、登場人物は誰に咎められることなく自由にクリエイトできます。 

徳永:どこにそんな時間があるんですか?

松本:ほぼ毎日2時間くらいお風呂に入るので、その間に携帯に入力して、それをパソコンに起こして推敲していきます。誰かに認められることは目指していません。それが面白いんです。
僕の好きな作家さんがおっしゃっていましたが、5人強烈なファンができた時点であなたは作家です、ということです。今後ともご支援お願いします。

城野:今、日常でもご自身でメイクやヘアをできるようになれるようオンラインで伝えていますが、女性が美しくなったことを認めたときの内からのエネルギーや、オーラーをすごく感じるんですね。女性は母、主婦、歳を理由に外見磨きを諦める人が多く、外見を磨くことで得られるマインドに気づかれていない人が多いんです。自分でレベルアップができるようになった人は、日常でも美容室帰りの美しさを保てるので、そんな人を増やしていきたいと思っています。他人任せではなく自分で自分をきれいにする技。一段階、二段階と内面や仕事にも生かされてくると思っています。外見をきれいにすることは、内面のエネルギー、女性の喜びをつくります。
外見力を上げると、人間性として成長すると思っています。 

徳永:確かに、誰かに褒められると人に優しくなりますよね。

松本:みなさん人生を楽しんでください!

城野:ワクワクしたらゴーです!

取材後記

お二人のひと言ひと言にエネルギーを感じていただけたのではないでしょうか?
コロナの波は普段よりは大きかったかもしれませんが、どんな状況であったとしても、
常に前を向いて、自分と向き合い、大切にしたいこと、心が動く方向へ。
そして、関わる誰かのために自分にできることを見つけて歩みを進める姿がありました。
たとえそれが苦行だったとしても、振り返れば笑い話にできてしまう、
それはきっと、その経験をばねに今を楽しんでいる証拠なのだと思います。
私自身もちゃっかりパワーをチャージさせてもらいました。ありがとうございます。

◎対談出演
・株式会社Simple plan 代表取締役 松本真
PIZZERIA ILFICO(イルフィーコ)
公式HP:https://www.simple-plan.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/ilfico.ichijiku/

・パロン美容室 2代目オーナー 城野尚美
公式HP:https://7033.shopinfo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/joe_joe_paron.beauty.salon/ Facebook:https://www.facebook.com/paron.bi/

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場所提供:プルンニャ +cafe 公式HP http://kagu-cafe.com/cafe.html ・・・・ ・
聞き手:徳永祐巳子 公式HP:https://amucoto.jp/
動画撮影、編集:平野裕基 公式HP:https://kyotofu-nanbu.com/
企画考案:東谷修子

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