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『ありがとう』の正体

こんにちは。対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。

私のホームページ:https://tatsuyautexas.wixsite.com/mysite

この記事は:

- 家族や職場などでの人間関係に違和感やストレスを感じている人

- 『ありがとう!』という言葉がもたらす力に興味がある人

- 人とうまく付き合っていくためのヒントが欲しい人

に読んでもらうことによって、新たな気付きが得られるかも知れません。

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みなさん『ありがとう!』などの感謝の言葉が大切なことはご存知だと思います。この前、ちらっとインターネットを見ていたら、『ありがとう!』と伝えることの大切さが詳しく書いてあり、私自身参考になりました。そのことは私が書く必要はないなと感じた程です。

私が書きたいのは、なぜ『ありがとう!』といった感謝の言葉が人間関係を豊かにするのか、そのメカニズムについて研究結果を交えて紹介したいと思っています。

こんな研究結果があります:

被験者がある人に対して、お手伝いをしてあげます。

被験者グループAは、その相手から感謝の言葉が含まれたメッセージをもらいます。

被験者グループBは、感謝の言葉が含まれないメッセージをもらいます。

みなさまの予想通り、グループAの被験者の方が、グループBの被験者よりも、その相手のことをもう一度手助けしてあげても良い、と答えました。つまり、感謝の言葉をもらったことにより、その人のことをまたサポートしてあげたい、と思うわけですね。(下から読めます)

https://www.researchgate.net/publication/44642300_A_Little_Thanks_Goes_a_Long_Way_Explaining_Why_Gratitude_Expressions_Motivate_Prosocial_Behavior

このように、感謝の言葉をもらう人は、もらわなかった人よりも、

- その感謝の言葉を述べた人のことをもっと助けたいと思う

- その感謝の言葉を述べた人ともっと仲良くしたいと思う

という研究結果が出ています。(下から読めます)

https://www.researchgate.net/publication/264627488_Warm_Thanks_Gratitude_Expression_Facilitates_Social_Affiliation_in_New_Relationships_via_Perceived_Warmth

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さて、なぜでしょう。なぜ私達は感謝の言葉を述べてくれる人に親しみを感じ、助けてあげたいと思うのでしょうか。そのメカニズムとされる要因を述べていきます。


要因1:感謝の言葉をもらうことによって、『自分には価値があるんだ』と思えるから。(Social Worthと言います)

他の要因と比べてもこの要因が大きいとされています(Grant & Gino, 2010; Algoe, 2012)。やっぱり、私達は感謝をされることで

『自分が相手の人生を少しでも良くすることができた!』

『自分がいることで、社会に良い影響を与えることができるんだ!』

と思い、それが嬉しいんですね。

当然ですが、相手に何かをしてあげたのに、相手からなんの感謝の言葉もないと『せっかくやってあげたのに。。。』と不満を持つことは当然だと考えられます。それはつまり『あなたのやったことに価値はない』と言われているのも同然だからでしょう。


要因2:感謝の言葉を表す人は、人として『温かい』と思われるから。

感謝の言葉を表せる人は、やはり人として温かい印象(Interpersonal Warmth)を持たれるようです(Williams & Bartlett, 2014)。人の印象は、人間関係を構築する上で非常に大切です。例えば笑顔であることが印象を良くすることは言うまでもありません。そのように温かみや、明るさを持ち合わせた人には、やはり『もっと一緒にいたい』と思うでしょうし、『また助けてあげたい』と思うと考えられます。ちなみに筆者は笑顔がすごく苦手で、学生にも距離を置かれています笑


要因3:感謝の言葉は、相手を受容するメッセージとして機能するから。

感謝の言葉を表す人は、相手に受容的な態度(Responsiveness)を示しているように見えるようです(Algoe, Frederickson, & Gable, 2013)。実はこのResponsiveness、以前のnoteで紹介しました。

その中でこう書きました

『Reisという研究者はResponsivenes、つまり人をしっかりと受容する態度、が親しい人間関係を構築する上で欠かせない要素だと言っています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2891543/

そのResponsivenessの構成要素は3つで

1. Understanding (理解)

2. Validation (肯定)

3. Caring (思いやり)』


つまり、『ありがとう!』と伝えることで、相手に理解を示し、相手を肯定し、相手を思いやる、ことができると考えられます。


上記以外にも、感謝の言葉の機能はもっとあるかと思いますが、一応まとめると、以下のようになります:

- 『ありがとう!』と感謝の言葉を述べることで、相手から親密になりたいと思ってもらえたり、相手から助けの手が差し伸べられる可能性が高まる。

- その理由は主に3つあり

1. 感謝の言葉を受け取った側が『自分には価値があるんだ!』と思ってもらえる

2. 感謝の言葉を表した人の『温かみ』が増加する

3. 感謝の言葉が、相手を受容するようなメッセージとして機能する


ということです。

さて、書きたいことの30%くらい書いたところで、結構な分量になってしまいました。ここまで読んだらきっと:

- じゃあ、どうやって感謝の言葉を述べたらいいの?具体的にどうすればいいの?

- 感謝の言葉を表すと、その後どのような人間関係の発展が望めるの?

- このブログのテーマである『自分らしさ』とはどう関係してくるの?(実は、ものすごく関係すると考えています。)

といった疑問が湧いてくると思います。

その辺りについては、オンライン授業やその他もろもろの雑務が落ち着く奇跡の瞬間がまた訪れたら書きたいと思います笑 今回は学期中でしたが、一瞬30分ほど空いた時間ができたので、書いてみました。みなさんの人間関係への気付きになれば幸いです。

今回も読んでいただいてありがとうございました!人に読んでもらって、役立つことができるということは、やはり嬉しいものですね!

コロナ渦だからこそ、人とのつながりに疲れ、絶望することもあるかと思います。でもそこからきっと救ってくれるのも人だと思っています。

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