特殊相対論: ミンコフスキー空間
**ミンコフスキー空間**(Minkowski space)は、特殊相対性理論において、時空の構造を記述するために使われる数学的な枠組みです。この空間では、時空の各点を**事象**(event)と呼びます。事象は時間と空間の座標で表され、4次元ベクトルとして記述されます。
### 1. **事象と4次元ベクトル**
ある事象 \( E \) を時刻 \( t \) と空間位置 \( \mathbf{x} = (x, y, z) \) によって表すと、その事象は次のような4次元ベクトル \( \mathbf{E} \) で表されます:
\[
\mathbf{E} = (ct, x, y, z)
\]
ここで、\( c \) は光速です。光速を掛けることで、時間と空間の次元を揃えています。
### 2. **時空間距離(不変間隔)**
二つの事象 \( \mathbf{E}_1 = (ct_1, x_1, y_1, z_1) \) と \( \mathbf{E}_2 = (ct_2, x_2, y_2, z_2) \) の間の**時空間距離**(または不変間隔、interval)を求める際、ミンコフスキー空間では次のような計量(metric)を用います:
\[
s^2 = -(c(t_2 - t_1))^2 + (x_2 - x_1)^2 + (y_2 - y_1)^2 + (z_2 - z_1)^2
\]
この式は、次のように内積としても表現できます:
\[
s^2 = \eta_{\mu \nu} (x_2^\mu - x_1^\mu)(x_2^\nu - x_1^\nu)
\]
ここで、\( \eta_{\mu \nu} \) はミンコフスキー計量テンソルであり、次の形をしています:
\[
\eta_{\mu \nu} =
\begin{pmatrix}
-1 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 1 \\
\end{pmatrix}
\]
### 3. **時空間距離の分類**
時空間距離 \( s^2 \) の符号により、二つの事象間の関係は次の三つに分類されます:
1. **Timelike(時間的)**: \( s^2 < 0 \)
- この場合、二つの事象は因果関係にあり、光速以下で情報が伝達可能です。たとえば、ある事象が他の事象の原因となる場合です。
2. **Spacelike(空間的)**: \( s^2 > 0 \)
- この場合、二つの事象間の距離は空間的に広がっており、光速を超えなければ一方から他方に情報を伝えることはできません。つまり、これらの事象間に因果関係は存在しません。
3. **Lightlike(Null、光的)**: \( s^2 = 0 \)
- この場合、二つの事象は光速で結ばれており、光や他の質量を持たない粒子が移動する経路上にあります。
### 4. **まとめ**
ミンコフスキー空間における事象間の距離の保存は、特殊相対性理論の基本原理の一つであり、この保存があらゆる慣性系において成り立ちます。これにより、時空の性質や事象間の因果関係を考察する際の基盤が確立されます。
このように、ミンコフスキー空間は、時間と空間が一体となった4次元の幾何学的構造を提供し、その上で事象の関係性を解析する枠組みを与えてくれます。