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特殊相対論: 世界線と固有時
**固有時**(proper time)は、ある観測者(もしくは粒子)にとっての経過時間を表すもので、観測者自身の時間を計測するための重要な概念です。この固有時を計算する際に、**世界線**(worldline)の概念が不可欠です。
### 1. **世界線(Worldline)とは?**
世界線とは、時空内におけるある粒子や観測者の軌跡を指します。具体的には、時間の経過とともに粒子や観測者がどのように位置を変えていくかを4次元時空内で記述したものです。例えば、ある粒子が時刻 \( t \) に空間座標 \( \mathbf{x}(t) = (x(t), y(t), z(t)) \) にいるとすると、その粒子の世界線は次のように表されます:
\[
\mathbf{X}(t) = (ct, x(t), y(t), z(t))
\]
この式は、時間 \( t \) に対する粒子の位置を4次元ベクトルとして表したものです。
### 2. **固有時の定義と計算**
固有時 \( \tau \) は、観測者が自身の世界線に沿って移動する際に、計測する時間です。ミンコフスキー空間での時空間間隔に基づいて計算されます。固有時は次の式で与えられます:
\[
d\tau = \sqrt{ -\eta_{\mu \nu} \, dX^\mu \, dX^\nu }
\]
ここで、
- \( dX^\mu = (cdt, dx, dy, dz) \) は微小な世界線要素を表す4次元ベクトル
- \( \eta_{\mu \nu} \) はミンコフスキー計量テンソル
これを展開すると、次のようになります:
\[
d\tau = \sqrt{(c^2 dt^2) - (dx^2 + dy^2 + dz^2)}
\]
### 3. **固有時の計算**
観測者がある経路(世界線)に沿って移動するとき、その経路に沿った固有時 \( \tau \) を求めるには、世界線に沿って積分を行います:
\[
\tau = \int \sqrt{(c^2 - v^2)} \, dt
\]
ここで、\( v \) は観測者の速度で、\( v^2 = \left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dz}{dt}\right)^2 \) です。したがって、この式は観測者が速度 \( v \) で移動しているときの固有時を示しています。
### 4. **例:等速度運動の場合**
例えば、観測者が一定の速度 \( v \) で直線的に移動する場合、上記の式は次のように簡略化できます:
\[
\tau = \int \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}} \, cdt = \sqrt{1 - \frac{v^2}{c^2}} \, ct
\]
この結果は、観測者の移動する時間が速度に依存して短縮されることを示しています。これは相対論的な時間の遅れ(time dilation)の効果を反映しています。
### 5. **まとめ**
固有時は、観測者の世界線に沿って計測される時間であり、特殊相対性理論において重要な役割を果たします。この概念を理解することで、時空間の構造や相対的な時間の変化をより深く理解することができます。