なぜか最近「NPO法人って理事何人以上いないといけないんだっけ?」と周りからNPO運営を知っている人と思われている人におすすめの本紹介~書籍 「NPO法人のための業務チェックリスト」
私はIT企業で10年間システムエンジニアと人事系の職で働いた後に、NPOに転職したのですが、マネージャーになって驚いたのが理事会や総会に参加できることでした。企業でいうと役員会議や株主総会で、社員時代にはそうした会はコーポレート部門の誰かが担当していて自分には関係ありませんでした。なので、理事会に参加して理事や監事の方に会ったり、総会で正会員の方に向けて議決を問うたりする場面を見て、少し感動したのを覚えています。感動もつかの間で、そうした場で、マネージャーとして事業の進捗や結果を報告する立場になってくると、とても緊張する場になってしまいましたが(笑)
そうしてNPOで経験を積んでくると、なぜか周りの人から「NPO法人って理事最低何人必要なんだっけ?」とか「活動報告書などは何年保管するんだったっけ?」など、NPO法人の運営に関する質問を受けるようになります。このように全く知らないところから学ぶためによい本が以下「NPO法人のための業務のチェックリスト」です。
このチェックリストが扱っている内容は、NPOの理事や監事が法人運営をチェックすることを想定しています。さらに作成したのはNPO会計税務専門家ネットワークのNPO支援の経験豊富な士業の方々なのでぬけもれなくリスト形式になっているので、端的に重要ポイントがわかります。
この領域の話は言葉遣いが難しかったり、理解に時間がかかったり、これ本当に必要なの?と半信半疑で読むことが多いのですが、これは本当に必要なことを、必要なことだけ、効率的に知れます。
理事、監事とはどんな役割の人?
理事会に参加して気づくのは、いつも一緒に仕事をしている代表理事以外にも理事が複数人いるということです。そして、監事と呼ばれる方もいます。理事、監事とはどんな役割なのでしょうか。
理事の役割
理事は法人の運営を委任され、業務を行う役割があります。就任する際には委託関係を承諾する旨が記載されている就任承諾書を提出します。理事には「善良な管理者の注意義務(一般に通常期待されている程度の注意義務で、予測が難しい事故や過失の損害は除く)」があるので、例えば、グループホームで虐待が行われて、それを知りながら理事が適切な措置を講じなかった場合には、NPO法人が被害に賠償した後、理事に対して求償されることも考えられます。(P3~P4の内容を一部修正して抜粋)
この理事の中で、定款において理事の代表として定められているのが「代表理事」「理事長」になり、対外的に法人を代表することになり、運営全般について大きな責任を負うことになります。
つまり、理事は、社会問題を解決するためのビジョン・ミッションを実現するために、経営資源を調達し、事業を行う役割があるのですが、そのためになにをやってもいいという訳ではなく、NPO法(特定非営利活動促進法)に沿った法令・税務・労務を行い、定款を遵守していく責任があります。
監事の役割
監事はNPO法によってNPO法人に必須の役員として位置づけられており、理事が権限を濫用することがないように監視する役割があります。主に以下の対応をしていきます。
・理事の業務執行の状況の監査
法令・定款や内部規定に違反していないかや、理事の判断が妥当であったかについても監査する
・NPO法人の財産の状況の監査
NPO法人の帳簿、預金通帳、伝票類や支払証拠書類等を調査し、財務諸表に計上された金額が、活動を正しく反映されたものかを監査する
・不正行為の報告や必要に応じた社員総会の招集
・理事への意見
こうした役割のため、監事は、理事またはNPO法人の職員(常勤、非常勤を問わず)を兼ねることはできません。
NPO法人には何人の理事、監事が必要か?
タイトルにもあったNPO法人は理事を何人おかないといけないか?については、NPO法で「理事3人以上及び監事1名以上を置かねばならない」と規定されています。それ以外にも様々な項目について記載されています。挙げだすと全てが大切なことなのできりがないので、私が気になった項目を抜き出して以下に紹介します。
・役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の1/3以下になっているか
事務局長が専務理事になっていて、代表理事と事務局長が有給の場合、理事3人監事1人の団体だとNG。
・事業報告書等の閲覧対象書類を、3年間事務所に備え置いているか
閲覧対象書類とは、前事業年度の事業報告書、財産目録、年間役員名簿、社員名簿です。
・10名以上の職員がいる場合、就業規則を労働基準監督署に届出しているか
短時間勤務者を含めて常時10人以上の職員を使用する場合は必要なので、組織が大きくなってくると社労士さんとの連携が必要になります。
・職員の賃金は、地域の最低賃金を下回っていないか
東京は1,013円/時。有償ボランティアは参加を強制したり、恒常的に職務を分担させるとアルバイトとして捉えられて、労働基準法や最低賃金法違反になることもあるので注意が必要です。
・正会員の入会に対して、不要な条件を付けていないか
NPO法人は議決権がある正社員になることについて「不要な条件を付さないこと。」と規定されています。
・長期借入金がある場合、その償還予定(計画)を変更する必要はないか。
設立時の理事が個人的に団体に貸付をし、返却については「余裕ができたら」とあいまいになっているケースが多い。金銭消費賃借契約書や償還計画書などを作成し、きちんと返却をする。
※各項目はチェックリストからの抜粋、コメントは筆者にて記載
この本のよいところは左ページに項目の記載があり、その右ページに対応するように準拠する法律や内容の説明がされているところです。何に基づいているのかが簡潔・明瞭でわかりやすいです。
<NPO法人のための業務チェックリストP14-15抜粋>
さらにすごいのは、このチェックリストの内容がPDFで公開されているところ。全てのNPO法人においてこのチェックリストを使って欲しいという認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワークさんの思いが伝わってきます。価値ある情報提供に感謝!!ダウンロードはこちらからできます。
さいごに
企業は会社法、NPO法人はNPO法、公益法人は公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律など、各法人格によって準拠する法律が異なります。NPOを運営するための各種ルールはこうした法律に沿ったものなので、とっつきにくいですがきちんと守らないといけません。NPO法人のマネージャーになるということは、より団体の運営に関わっていくことですので、こうした運営ルールに関する疑問や問合せが増えてくるのだと思います。PDFで無料公開されているこのチェックリストを是非活用してください。
私はNPOの伴走支援を仕事にしていますので、このnoteを読んでいいなと感じた方や、無料相談をうけてみたいと思った方は以下のホームページのお問い合わせからご連絡ください。