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休眠預金事業に来年から新たに「活動支援団体」が加わります

休眠預金事業は5年おきに見直しがされることになっています。その一環で関連する法律の一部を改正することになり、その中で「非資金的支援による団体の能力強化を行うため、もっぱら人材・情報面からの非資金的支援を行う活動支援団体を創設すること」が新たに発表されました。

これまで、指定活用団体・資金分配団体・実行団体の3者で休眠預金事業を行っていましたが、そこに活動支援団体が加わることになります。

これはどんな背景があるのでしょうか。基本方針案(クリックすると方針案のPDFが開きます)をみながら考えていきたいと思います。


伴走支援の成果についての共通認識

休眠預金事業では、資金分配団体から実行団体へ、資金的支援と非資金的支援が行われます。通年事業では3年間と長期間となるので、その支援は伴走型で行われてきました。それに対して特筆すべき成果と評価されています。

また、社会課題解決のための自律的かつ持続的な仕組みの構築に向けては、本制度開始後、民間公益活動の担い手における組織基盤等が、当初の想定に比して自立途上で脆弱であり、ソーシャルセクターの一層の強化を図ることが認識された。こうした問題意識の下、「伴走支援」という支援手法を導入したことは、この間の特筆すべき成果といえる。助成による資金的支援と併せて、担い手に寄り添いながら非資金的支援を実施することが、特に草創期の活動支援に効果的であり、その後の自立にもつながることは既に関係者における共通認識となっている。今後、民間公益活動の自立した担い手をより多く育成するためには、付随的業務として行われている伴走支援を体系化・制度化し、それを通じたソーシャルセクターの担い手の一層の育成を図っていく必要がある。

基本方針案 P2-3の改正後から抜粋

休眠預金事業の持続可能性についての基本原則

休眠預金事業においては事業の成果も問われますが、組織の能力強化もはかるべきとして原則でうたわれています。そして、活動の社会的意義や成果の発信や、民間からの資金調達・人材確保が求められています。

資金分配団体及び活動支援団体は、支援先の団体等に対し、事業の成果をより確実なものとし、その自立性を高めていくため、非資金的支援を必要に応じて外部の団体や専門家とも連携しつつ、支援先の団体等に寄り添って支援する伴走型で提供することにより、組織の能力強化(キャパシティ・ビルディング)を図っていく
(中略)
資金分配団体、活動支援団体及び実行団体は、民間の資金や人材を確保する観点から、自らの活動の社会的意義や成果を対外的に積極的に発信し、その理解を広めていくことで、休眠預金等に係る資金をてこに民間からの資金調達や人材の確保などにつながるようにすることが求められる

基本方針案 P8の改正後から抜粋

資金分配団体の実行団体に対する支援への期待

資金分配団体は、諸課題の分野や地域の実情に精通していることが求められ、事業実施を通じて、自律的かつ持続的なしくみの構築を期待されています。つまり、事業終了後も取り組みが継続していけるように3年間で実行団体に組織基盤を高めていってもらわなければいけないわけです。

資金分配団体は、実行団体に対して資金支援を行うという役割にとどまらず、革新的な手法による資金の助成、貸付け又は出資、事業実施に係る経営支援や人材支援といった非資金的支援を必要に応じ伴走型で行うこと等を通じ、活動支援団体とともに民間公益活動の自立した担い手を育成する中心的な役割を担うことが期待される。 また、社会の諸課題は地域や分野ごとに様々であり、実行団体が行う解決のための手法も多種多様であることから、休眠預金等に係る資金の活用に当たっては、特定の社会の諸課題の分野や地域の実情等に精通した資金分配団体を経由することにより、実行団体に対し適切な支援を行い、社会の諸課題の解決のための自律的かつ持続的な仕組みの構築を促進することが期待される

基本方針案 P14の改正後から抜粋

実際に資金分配団体の評価アドバイザーとして関わっていて思うのは、資金分配団体は社会的インパクト評価のプロセスを回すのも難しいですし、そもそも条件を満たす実行団体に申請してもらうことすら難しかったりするなかで、実行団体の組織基盤強化や民間の資金を調達できるようにするなんてところまで手が行き届かないのが現状です。

活動支援団体の役割

こうした資金分配団体だけでは実行団体の支援は担いきれない背景があることから新たに活動支援団体が定義されたのだと理解しています。

活動支援団体の役割は以下のように書かれています。

活動支援団体は、支援対象団体に対し助言又は派遣を行う団体であって、当該助言又は派遣に必要な資金について、指定活用団体から休眠預金等に係る資金を原資とする助成等を受けるものであり、その決定は、公募の方法により行われる。

活動支援団体は、支援対象団体が目指すべき姿や実現したい事項に対し、各活動支援団体が有する専門性をいかし非資金的支援を伴走型等で行うこと等を通じ、資金分配団体とともに民間公益活動の自立した担い手を育成する中心的な役割を担うことが期待される。 以上を踏まえると、活動支援団体に期待される役割は以下のとおりである。

① 指定活用団体が提示した優先的に解決すべき課題を踏まえ、地域・分野等ごとの実情及び課題を俯瞰的かつ具体的に把握・分析し、案件の発掘・形成を積極的に行う。
② 社会の諸課題の解決に取り組む自立した担い手の育成に向け、「活動支援プログラム」を企画・設計し、これに基づき、支援対象団体を公募により選定し、伴走型等による非資金的支援を提供する。
③ 関係規程の整備、事業形成・実施能力向上に関する助言など、組織基盤の整備や事業立上げに必要な支援により、新たな民間公益活動の担い手の育成と制度への参入を促進する。
④ 成果評価への指導、ファンドレイジングへの助言、人材のネットワーキングなど、事業の継続・拡大につながる専門性向上に必要な支援により、民間公益活動の担い手の自立を促進する。
⑤事業の立上げから終了まで、支援対象団体の抱える課題に応じて、伴走型で支援する。
⑥ 民間の創意・工夫の発揮を促すように支援を行うことで、社会の諸課題を解決するための革新的な手法を開発することを目指す。
⑦ 支援対象団体に対して、継続的な進捗管理及び目標達成度の点検・検証を実施し、その結果等の有効活用を促す。

基本方針案 P15-17の改正後から抜粋

私が、資金分配団体の評価アドバイザーとして抱えていた、「評価以外の内容も支援しなければ、評価どころではないよな・・・」「事業成果ばかりみていても、3年後人が辞めていって団体つぶれるのでは?」「寄付集めとか全く意識していないし、助成金申請する体制もなくて、今後大丈夫?」といったことが、活動支援団体が提供する伴走支援プログラムで解消されるかもしれません。

活動支援団体の選定

活動支援団体は公募の方法によってとり行われます。どのような基準で選定されるのか見ていきましょう。

休眠預金事業を組織として実施できるような組織体制が必要であることや、伴走支援実績、資金的管理能力などが問われます。

資金分配団体と活動支援団体が兼ねることを想定されていることも注目かなと思います。

c)活動支援団体の選定
指定活用団体は、活動支援団体の選定の基準等の事項を定めた民間公益活動促進業務規程をこの基本方針に即して定め、活動支援団体の決定を法に基づき公募の方法により行う。 指定活用団体は、活動支援団体を選定するに当たり、最初に活動支援団体の公募に申請する団体が、公正かつ適確に業務を実施するに足りる組織体制等を有していることを確認しなければならない※19。
※19
指定活用団体は、活動支援申請団体の組織体制等について資金分配申請団体のものに準じた点に加え、
支援分野の専門性及び伴走支援等の非資金的支援の実績を有していること活動支援団体が資金分配団体を兼ねる場合、両者の間で適切な資金の区分管理や公募の公平性が確保される措置を講ずることなどを確認しなければならない。
その上で、活動支援申請団体が提出する活動支援プログラム(提供しようとしている非資金的支援の対象や方法等をまとめたもの)の内容について、以下のア)からウ)までに示すとおり審査しなければならない。 なお、非資金的支援の提供方法等については、あらかじめ固定化するのではなく、支援対象団体の要望や状況に応じてより最適化した形で必要な非資金的支援を提供することが望ましい。
ア)選定における審査対象及び基準
指定活用団体は、活動支援団体を選定するに当たり、活動支援プログラムについて、以下の事項に関し必要な基準を定め、審査しなければならない。
・支援対象団体を選定するに当たり、支援対象団体が作成する支援の要請に関する計画において、解決しようとする社会的課題、支援対象団体が自立や休眠預金等活用事業への参入等に向けて抱える組織や活動上の課題、要請する非資金的支援の内容、活動支援団体による支援の出口、支援期間等の明示を求める旨を確認することとしていること

・資金調達の期間及び出口等について、合理的な事業計画等が策定されていること

・活動支援団体による支援に依存した団体を生まないための仕組み(例えば、支援の出口を見据えた上での組織基盤の発展段階に応じた支援方法や支援終了後の自立可能性を向上させるための手法等)が組み込まれていること
・活動支援プログラムを適確に実施するに足りる能力を有すること20 また、指定活用団体は、民間公益活動に係る情報を積極的に収集して、非資金的支援の対象となり得る民間公益活動の案件を発掘・形成するための調査及び研究を行うこととしている活動支援申請団体を優先して活動支援団体として選定することが望ましい。

イ)審査の方法 指定活用団体は、b)「イ)審査の方法」で示した事項に準じた対応をとらなければならない。
ウ)選定における留意事項 指定活用団体は、活動支援団体を選定するに当たり、資金支援に係る内容を除きb)「ウ)選定における留意事項」で示した事項に留意しなければならない。

基本方針案 P23-25の改正後から抜粋

休眠預金事業への拠出額

休眠預金事業は今回が初めての見直しとなります。休眠預金は令和元年~4年の平均で年間1400億円程度です。平成26年~28年度平均が毎年700億円でしたから約倍です。その全額が休眠預金にあてられているわけではなく、約5%ほどの年間30億円~40億円が拠出されていました。それが改正されると、約1.4倍程に拠出されるようになると見込まれます。

資金分配団体及び活動支援団体に対する助成等
令和5年度から令和9年度における5年間の助成総額については、資金需要の動向や、本制度を担う団体の体制等を踏まえる観点から、これまでの活用額の趨勢21を念頭に約300億円を目安とした上で、令和8年度を目途に、案件の発掘状況や、本事業による社会的インパクトの評価等を通じて、必要に応じて見直しを行うこととする。

基本方針案 P25の改正後から抜粋

令和元年度から令和4年度までの採択額(令和元年度29.8億円、令和4年度39.9億円)の年平均伸び率は約10%。

基本方針案 P59の改正後から抜粋

休眠預金による助成は2022年度までに累計221億円(予定額)に上る。助成を受けた公益活動を行う団体(実行団体)は延べ966団体(今年4月時点)に達し、多彩な事業に活用されている。

https://www.komei.or.jp/komeinews/p308456/

さいごに

休眠預金事業のこれまでの5年間は一定の評価がされたことがわかりました。それと同時に、非営利組織が主に担う実行団体の支援は一筋縄ではいかないことも課題として明確になり、活動支援団体が新設され、これから5年間でその成果がみられることになります。

活動支援団体は信頼ある組織が公募に応募するので、私のような個人事業主には難しそうです。

が、私が2020年から関わってきた休眠預金事業における伴走支援が、次の5年でどの団体も当たり前にうけられる時代になるのだなと思うと嬉しいです。

この流れがしっかりと根付くように、私もできる範囲で伴走支援に対する多くの期待に応えるはたらきをしていきたいと思っています。


私はこれまで、NPOのファンドレイジングの伴走支援や、休眠預金の評価アドバイザーをしてきました。この記事を読んで、伴走支援や評価アドバイザーに関心を持った方は公式LINEやホームページからご連絡ください。

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