【ゆるポタ】漁港の町で魚を食べずに帰ってくる(千葉県/銚子)
ゴールデンウィークのある日。千葉県の銚子で海鮮丼を食べたいと思い、ロードバイクに乗って行くことにした。自宅から銚子まで100km以上あるのだが、どうにかなるだろうとその時は考えていた。
当日、お昼ごろに到着できるように朝4時半に起きた。朝早すぎて、朝ご飯は食欲が湧かなかったので、オレンジジュースをコップ一杯ぐぃっと流し込んで家を出た。
ロードバイクに乗って家を出発し、国道6号線沿いに千葉県の北西部、柏駅まで北上する。多少アップダウンはあるものの、勾配は緩やかできつくはなかった。町並みを見ながらのサイクリングは、周りの風景がどんどん移り変わっていくので楽しい。
国道6号線を途中で右折し、手賀沼を半周ぐるっと回って、千葉県の北東部にある銚子を目指し、真東に進む。手賀沼は道が広く整備されていて走りやすい。まだ朝6時台なのだが、すでにランニングやサイクリングを行っている人たちがいた。みんな朝が早い。
木下(きおろし)付近で利根川に合流し、そこからは銚子付近まで利根川のサイクリングロードをひたすら走っていく。最初は楽しかったのだが、ほぼ同じ景色が続くので次第に楽しさよりも退屈さが上回ってくる。「海まで70.0km」みたいな看板が500m置きに立っていて、「うわぁ、まだそんなに距離があるのか…」と絶望する。途中から、この看板を見るのが嫌になってくる…。
朝ご飯をしっかり食べてなかったこともあり、ペダルを漕ぐ足に次第に元気がなくなってきた。これはいけないと思い、朝から空いている店を探した。ありがたいことに、5、6km先、河内という場所に朝からやっているラーメンショップがあることを発見した。
川の向こう岸にあるので、途中、橋をわたってラーメンショップを訪れた。川を渡ることで、図らずも千葉県から茨城県に入った。看板で茨城県に入ったことがわかるとちょっとテンションが上がった。
ラーメンショップでは醤油ラーメンに餃子というオーソドックスな組み合わせを注文した。まわりはバイク乗りの集団やガテン系の人たちで朝早いのに賑わっていた。少し場違いな感じがして肩身が狭かった。
ラーメンはボリューム満点といった感じで、麺の量が多い。体仕事の人たちが商売相手だからだろう。ここまで30-40km走ってきた身としてはむしろありがたい。普段なら食べ切れない量だが、今日はぺろっと平らげることができた。ラーメンは家系に近い感じだった。普段食べない種類のラーメンだが、スープを飲むと他の人がハマるのもわかる気がした。
餃子は餡がたっぷり詰まっている。置いてあった醤油を使ったのだが、普通の醤油とは何か違う味がした。とことなく、中国や東南アジア系の味がした。
「ごちそうさまでした」と小さな声で言うと、「ありがとうございました!」と威勢のよい返事を返してくれた。ちょっと元気をもらえたかもしれない。お手洗いを借りてラーメン屋を後にした。気持ち、朝ご飯を食べる前よりもペダルを漕ぐ足に力が戻った気がする。
しばらく走ると下総神崎に近づいてきた。「かんざき」と読んでいたが、「こうざき」と読むようだ。看板を見ると成田空港も近い。「発酵の町 神崎」という名前の道の駅を発見したので寄り道することにした。補給のため、コンビニでアイスと飴を買った。他にもサイクリストらしい人たちが水分補給などしていた。お店をぶらぶら眺めた後、特に買うものもなく、道の駅を後にした。
さっきも話した通り、景色が単調なので中継ポイントを決めて走ることにした。次は「水郷の街 佐原」まで頑張ろうと目標を定めた。佐原を観光しても良かったのだが、別の機会にじっくり観光したいと思ったので、今回はスルーすることにした。佐原市街を抜けて道の駅で一休み。露天が出ていて色んな物を売っていた。焼き物やら、アルミ缶で作った風鈴みたいなやつとか、地元の人たちの手作りの品が並んでいた。
このあたりまで来ると、標識に銚子の文字が出てきて「銚子に確実に近づいている」実感が湧いてくる。お昼が近くなってきて気温が25℃と夏日の日だったので、橋の下で涼を取ることにした。
たまたま居合わせたおじさんに「どこからきたの?」と声をかけられたので、「東京からですー」と答えた。「どこまで行くのー?」と聞かれたので、「銚子までですー」と答えた。「銚子!銚子は結構遠いよ。ここから」と驚かれた。地元の人だと思うが、独特のイントネーションで話されていて、千葉県にも方言的なものがあるのかなぁとぼんやりと思った。
銚子まだ後20kmくらいに迫った地点で、サイクリングロードが途切れていた。仕方ないので、356号線沿いを走ることにした。車道が狭く、ロードバイクでは走りにくいなぁと思った。一方で、町並みを見ながらのライドになるのと、目的地が迫っていることもあり、サイクリングの楽しさが回復してきた。
ここまで来るとさすがに足に疲労が溜まってきて、ちょくちょく水分補給をしながら途切れ途切れで走る。5km、4kmと目的地が迫ってきて、銚子駅についたときは達成感というより安堵感のほうが大きかった。
海鮮丼を食べにわざわざ6時間以上かけて来たので、ゆっくりロードバイクを漕ぎながら海鮮丼のお店を探した。ゴールデンウィークということもあって、どこの店も行列になっていて、昔訪れたことのある店も「本日はここまでで受付終了」となっていて、入れるお店がなかった。
途方に暮れて、駅前の「待合室」という名前の喫茶店に入った。そこでアイスオレとピザトーストを注文して食べた。レトロな地元の喫茶店という雰囲気で、ピザトーストを頬張りながら読書した。数時間居ようと思っていたが、最初は誰もいなかった店に次々とお客さんが入ってきた。1時間もせずに店をあとにすることにした。
会計時に「どこから来たの?自転車で来たの?」と聞かれた。ピチピチのサイクルウェアを来ていたので、パッと見でサイクリングしに来たなというのが丸わかりだったのだと思う。急に聞かれたので「えぇ、まぁ…」としどろもどろに答えた。
結局のところ、銚子に来てお昼に食べたのはこのピザトーストだけだった。お腹がぺこぺこだったこともあって、なんてことないどこにでもあるピザトーストだったかもしれないが、めちゃくちゃ美味しかった。
運動は最高の調味料だ。長距離のサイクリング後のご飯は何を食べても美味しい。別に漁港に来て海鮮丼を食べなくてはいけないというルールはない。ピザトーストで満足して、そのまま電車で自宅に帰ることにした。そんな、何でもないゴールデンウィークの1日。