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【ライブレポート】『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #01』2022年3月9日 at 下北沢Flowers Loft

新人アーティスト発信プロジェクト「IMALAB(@imalab2021)」が配信している『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST』。新しさと本物をテーマに厳選した本プレイリストにて紹介してきたアーティスト3組+ゲストによるライブが、3月9日に下北沢Flowers Loft(@Flowers_Loft)で開催された。

コロナ禍においてライブハウスで音楽に出会う機会が失われている状況下で、少しでもライブハウスに足を運んでほしいという思いから、無料で行われることとなった今回のイベント。

出演アーティストは以下の4組だ。

シャンディタウン(@shandy_town
Kureai(@kureai_band
中山卓哉(@tk_csn 愛しておくれ / I's)
Carpenter'sBlue(@CarpentersBlue_

結成1~2年の若手中心のラインアップとなった『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #01』についてレポートする。

■シャンディタウン

2021年10月に大学のバンドサークルで結成したという、誕生したばかりのバンドだ。結成から約2ヵ月でミニアルバム『眠れぬ夜を抜けて』をリリースし、すでにライブも数本行っているというスピード感に驚く。

photo by ai.

ライブはクボタヤマト(Vo/Gt)の歌声で幕を開け、1曲目となる「410号室」が鳴り響いた。クリハラアヤカ(Ba)のコーラスも映えるこの楽曲では、スリーピースというシンプルな構成、そして丁寧な演奏によって、一つひとつの音をしっかり味わうことができた。

「少女探検日記」では、スティックを叩いて手拍子を求めるウメザワミオ(Dr)の熱さと、表情を変えずクールにプレイするクリハラの対比も面白い。そして何より、時々かすれるように放たれるクボタの感情のこもった歌声が、叙情的な歌詞とあいまって楽曲をドラマティックに仕上げていく。

photo by Ryohey

「いつのまにか行かなくなってしまった学生街とか、初めて僕を叱ってくれた先生に届くように歌います」とのクボタの言葉に続いて披露された「星が降る街」。

《青春ってやつの終わりに向けて 一歩ずつ歩いています》

という歌詞が、思春期をとっくに終えた大人のノスタルジーを誘う一曲でもあり、20歳のクボタにとっての今、まさにこの瞬間を歌った曲でもあるのかもしれない。

まさに一歩ずつ歩みを刻むリズムに乗せて歌い、最後はマーチのようなウメザワのドラムで気持ちよく〆る心憎い構成だ。

photo by ai.

最後の曲を前に、初々しい物販告知を挟みながらクボタは語る。毎週のように下北に通い、いつかやりたいと思い続けてきたバンドを、今ようやくやれているんだと。そしてライブハウスで、たくさんの人に自分が書いた曲を聴いてもらえること、そのきっかけを貰えたことへの感謝を告げる。

最後に「これから絶対に、大きくなります。シャンディタウンのライブを観たことがいつか自慢できるように頑張るので、これからもよろしくお願いします」という挨拶で締めくくると、リズミカルなテンポと共に熱唱する「初恋の行方」を披露し、ささやかな笑顔を浮かべながらステージを去っていった。

結成5ヵ月、本格始動から3ヵ月というシャンディタウンが25分に全力を込めた演奏は、キャリアやスキルを超えてフロアに届いたことだろう。

photo by Ryohey

セットリスト
01.410号室
02.少女探検日記
03.灰と姫
04.星が降る街
05.初恋の行方

■Kureai

2番手は下北沢を中心に活動するスリーピースバンド、Kureaiだ。くるりの「言葉はさんかく こころは四角」が流れるなか、ステージへと現れる。黒系衣装で揃えたフタミ(Vo/Gt)、ニシヤマ(Ba)、あんどう(Dr)の3人は向かい合って音を鳴らし、「雪と自転車」でライブをスタートさせた。

photo by ai.

軽快に跳ねるドラムを叩き出す、笑顔たっぷりなあんどうの音を土台にして、3人がお互いに目や表情で積極的にコミュニケーションを取りながらのステージングは、聴覚だけでなく視覚でも楽しませてくれる。

2曲目「Blue」での、スローながらもダイナミックなドラムの存在感が光るイントロを経て、歌パートでの音の引き算によってフタミの歌声を引き立たせる構成に引き込まれる。バンドサウンドの濃淡を作ることでメリハリも生まれ、楽曲がより立体的に浮かび上がってくるようだ。

photo by ai.

続く「追想」は、ゆっくりとページをめくりながらひとつの物語を読み進めていくかのような演奏が広がる。音源とは異なるライブアレンジも施され、大きな盛り上りや急展開などもあり、聴きごたえ抜群だ。フタミの切なさ溢れる歌声との組み合わせもハマっている。長い余韻を与えるアウトロはまるで物語のエピローグのようにも感じた。

MCでフタミは、酷いことばかりな世の中でも、今日は純粋に音楽を楽しめたら…と語り、さらに「僕らの出番くらいは、日頃の嫌なこととか忘れられればいいなと思って演奏します」と続けると、4曲目「color」を演奏する。

一段ギアを上げるかのように高音へと挑むフタミの歌声が沁みる雄大なナンバーだ。

photo by Ryohey

ラストを飾るのは「暮合」。バンド名と同じ読みのこの楽曲はエネルギッシュなサウンドやスケールを感じさせるギターソロ、さらにはニシヤマのコーラスなど注目ポイントも豊富。たった4行にまとめられたシンプルな歌詞でここまで豊かに音楽を表現していることに驚く。

しっかりと歌詞を届けようという意思と、音の可能性を引き出す試みが感じられるステージだった。

photo by Ryohey

セットリスト
01.雲と自転車
02.Blue
03.追想
04.color
05.暮合

■中山卓哉(愛しておくれ / I's)

3番手として登場したのは、本日のExtra Guestである中山卓哉だ。若手バンドばかり出演する今日のライブで、ひとり群を抜いたキャリアと実績を持つアーティスト。グッバイフジヤマとしての活動を経て、現在は愛しておくれ、I'sのメンバーとしても活躍中。

本番直前のリハではグッバイフジヤマの「All You Need Is Love」「ダーリン!」をさらりと披露し、空気を作ってライブ開始。

今日は弾き語りということもあってか、カバー曲多めのセットリストとなっていた。

photo by ai.

最初に歌ったのは小沢健二「ある光」だが、キュートでポップ、かつパワフルな中山の歌声が見事にフィット。それでいてしっかりと彼の色が出ている楽しいカバーだ。

MCでは、「今日は歌う場所を用意してくださってありがとうございます」と、弾き語りの場を求めていた自分に声をかけてくれたことへの感謝を述べる。さらに昨今の音楽業界やリスナーの苦境を踏まえながら、新しい音楽や若手アーティストとの出会いの場に参加できる喜びを、ジョークを交えつつ語る中山。豊富なキャリアを証明するような巧みなMCで会場をさらに盛り上げていく。

次なるカバーとして、自身がギタリストとして参加しているI'sから「あなろぐめもりー。」を歌う。本家はあのちゃんがボーカルを務めており、女性曲のカバーということになるが、少しガーリーな要素を含んだ中山ボーカルが違和感なく耳に飛び込んできた。

滑らかにギターを操り、楽譜を表示していると思われるタブレットも操作しながら、弾き語りでも躍動感やエネルギーを感じさせるパフォーマンスが展開する。

さらにはオレンジの照明の下でホブルディーズの「花咲く街で」も披露。ポップさを待つ歌声で哀愁をも感じさせる、その表現力はさすがだ。

photo by Ryohey

ライブ後半のMCでは、聴いてくれる人、受け取ってくれる人がいる…そんな音楽をずっとやり続けることができるのは限られた人だという実情を話しながら「自分の音楽を一生続けていきたいと思っている」と語りつつ、今日出演の若いアーティストたちへエールを送っていた。

「最近、救われている歌を」との言葉から、フロアの観客に笑いかけながらクリープハイプの「二十九、三十」を歌い上げると、続く最後のブロックでは自身のバンド・愛しておくれから小畑哲平(Gt)がスーツ姿で登場。

育休中のバンドメンバーに関する近況報告や曲のコード設定についてのバタバタしたやり取りなど、メンバー同士ならではの空気が生まれ、ますます会場が温まっていく。

photo by ai.

このふたりで演奏するのはもちろん、愛しておくれの楽曲。「わたしを夢からつれだして」では小畑のエレキギターとコーラスが加わったアンサンブルがグループを生む。楽しそうに演奏するふたりの姿が印象的だ。

ラストナンバーは同じく愛しておくれ楽曲で「愛しておくれ」。今度は小畑がアコギを持ち、中山はマイクスタンドを握り、ど真ん中のラブソングを力強くピュアでストレートな歌声とともに披露する。

先輩アーティストとしての面目躍如、素晴らしいステージでフロアを盛り上げていた。

photo by Ryohey

セットリスト
01.ある光(short ver.) / 小沢健二 
02.あなろぐめもりー。/ I's
03.花咲く街で / ホブルディーズ
04.二十九、三十 / クリープハイプ
05.わたしを夢からつれだして / 愛しておくれ
06.愛しておくれ / 愛しておくれ

■Carpenter'sBlue

本日のトリを務めるのは、東京・町田を拠点に活動する、2020年12月始動の3人組バンド、Carpenter'sBlue。

きのこ帝国「FLOWER GIRL」をバックに登場した彼女たちは、サポートドラムを迎えて4人編成でライブに臨む。

全員が一斉に放った轟音が、ライブの始まりを告げる。最初の一音が持つ爆発力と迫力が「ライブハウスで爆音を浴びる喜び」をあらためて喚起させてくれた。

photo by Ryohey

オープニングナンバーは「BonusStage」。伸びやかなオギタテッペイ(Gt)のギターとアグレッシブにかき鳴らす青木9歳(Ba)のベースを両脇に配し、堂々とセンターに君臨するoma(Vo/Gt)の圧倒的なボーカルにロックオンされてしまう。

高低差のあるメロディの波を、色気を伴いながら自在に乗りこなし、爆音だけでなくミニマルな演奏の中でも映える歌声が頼もしい。

2曲目の「lefty」では、《アイロンをかけたような 長い睫毛に見惚れる》という歌詞に続けて「皆さんにも、そんな人はいますか?」と語りかけ、ライブ感を高めていく。

photo by Ryohey

続いて披露されたのは、どこかたゆたうような、幻想的なギターイントロで始まる新曲「gianna」。AhやOhといったスキャットでさえも胸に刺さる歌声の存在感たるや。

間奏で畳み掛けるドラムに、負けじと暴れまくる弦楽器隊のコンビネーションプレイから一変し、夢うつつな世界へと誘うサウンドが広がったかと思えば、アウトロではテンポを上げ爆裂アンサンブルをぶちかます、オルタナパフォーマンス。

まるでCarpenter'sBlueの手のひらの上で転がされているような感覚を味わった。

photo by ai.

本日のラストナンバーとなった「stone/flower」のイントロに重ねて、omaは「世の中は悲しいニュースがたくさん溢れていますが、今日はもうこの空間のことだけ考えて、好きに楽しんでいってください」と告げる。

“隗より始めよ”ではないが、曲の途中でomaは「最後にこれだけ言わせてください。Flowers Loftのカレーはホントに美味いから全員買って。それだけ忘れないで!」と叫びつつ、ナチュラルにこのメッセージをメロディの中に溶け込ませていく。

まさに“好きに楽しむ”かのように、自由に歌を、そして音楽をオーディエンスに届ける堂々とした振る舞いを見せつけ、Carpenter'sBlueのステージは幕を下ろした。

歌声や音自体の迫力に加え、存在そのものに圧倒的なスケール感があり、パワフルで生命力に溢れ、さらに遊び心とテクニックも兼ね備えた素晴らしいパフォーマンスだった。

思えば、最初に鳴らされたあの爆音の時点で、彼女たちはFlowers Loftにいる人々の心を掴んでいたのかもしれない。

photo by Ryohey

セットリスト
01.BonusStage
02.lefty
03.gianna
04.stone/flower


若手バンド3組と経験豊富なバンドマン弾き語り1組という組み合わせで開催された『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #01』。少しずつ光りが見えてきたとはいえ、まだまだコロナ以前には及ばない現状のなか、ライブハウスという場所で、音楽を通じてオーディエンスやアーティストたちがそれぞれに新しい出会いと刺激を得た、そんなイベントになったのではないだろうか。

特に、なかなかライブもできないこの時代にバンドを結成し、活動を始めた3組にとって一つひとつのライブは大事な経験になっていくだろう。

今日出演したシャンディタウン、Kureai、中山卓哉、そしてCarpenter'sBlueという4組のアーティストたちはこれからどんな活躍を見せてくれるだろうか。

彼らについて気になったという方がいたら、SNSはもちろん、サブスクやYoutube、CDあるいはライブ等でその活動や音楽をぜひチェックしてほしい。彼らの音楽が、あなたにとって良い出会いになりますように。


■photo by Ryohey(@rrrryonnnn1) / ai.(@123a_17)
■flyer design by Megumi Kato(@meg_livephoto__)
■text by ほしのん(@hoshino2009)


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