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【ライブレポート】『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #02』2022年6月15日 at 下北沢Flowers Loft

新人アーティスト発信プロジェクト「IMALAB(@imalab2021)」が運営する、ニューカマーをピックアップした「IMALAB NEWCOMER PLAYLIST」。このプレイリストをきっかけに出会ったアーティストたちに声をかけ、ブッキングしたイベントが『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE』だ。

#01と題して開催された2022年3月9日のイベントに続き、新進気鋭の5アーティストが共演する『IMALAB NEWCOMER PLAYLIST LIVE #02』が、2022年6月15日に下北沢Flowers Loft(@Flowers_Loft)にて開催となった。

出演アーティストは、以下の5組。

Khaki(@khaki_band
Hwyl(@hwyl_band
Sleepless Sheep(@sleeplesssheep0
板歯目(@banshimoku
chef's(@chefs_band

前回に引き続き、下北沢Flowers Loft全面協力のもと、チケット代金無料のフリーライブが実現。当日は100名を超える観客が集まり、大盛況のなかで各バンドがしのぎを削るかのような熱いライブを繰り広げた。

■Khaki

イベントのトップを飾るのは、東京発のオルタナティブバンド、Khakiだ。

サポートベースを迎え、白シャツにスラっとしたいで立ちのギター&ドラムが目を引く5人のライブは「Hazuki」でスタート。橋本拓己(Dr)のドラムソロから始まるメロウなナンバーがじっくりとフロア全体へ浸透し、Khaki独特の空気を作っていく。そのまま曲が終わるかと思いきや、煌めく照明にアップテンポなアウトロと、1曲目にして一筋縄ではいかない楽曲を披露する。

「Khakiです、よろしくお願いします」と中塩博斗(Vo/Gt)が短く挨拶し、2曲目「子宮」へ。先ほどのアウトロから再びテンポを落としたオープニング。繰り返されるリズムパターンと共に響く、ドリーミーな歌声とサウンドがFlowers Loftを包み込んでいく。

かき鳴らされる平川直人(Vo/Gt)のギターがアクセントとなり、まろやかでありながらグッと引き締まった構成となっていた。

続く「眠りの午後」は、タイトルから連想されるような気だるさを帯びた味わいのある一曲だが、曲全体を通して奏でられる穏やかな音色とは裏腹に

≪おれを笑ったいじわるな顔を 思い出すのさ≫
≪追いかける脚ももぎとられてしまうんだろう≫
≪死んだ猫を埋めた庭の土≫

といったドキっとさせる歌詞とのギャップが面白い。

4曲目の「Cut 3」はこれまでの3曲とは異なり、小さく跳ねるリズムが特徴的な、1分ほどで終わる短い曲。もっと聴いていたくなるポップな楽曲だが「子宮」における平川のギターのように、全6曲となるセットリストの中でアクセントとなる存在となっていた。

5曲目の「Kajiura」で、これまでボーカルを務めていた中塩から平川に歌い手がチェンジする。少しざらつきもありながら、幼さも感じさせる平川の声によってまた違ったKhakiの色が打ち出される。

間奏でのギターのアルペジオも心地よく、曲終盤に向けてのテンポアップや中塩のギターソロなど1曲の中に様々な要素を詰め込んで、密度の濃いステージを見せていた。

最後の曲となった「車輪」では、黒羽広樹(Key)による、たゆたうようなキーボードのイントロが印象的。サビで照明とサウンドが一体となって勢いを増していく様は圧巻だ。BPMではなく感情で楽曲に緩急つけている演奏は、これぞライブの醍醐味だと思わせてくれるものだった。

独自の世界観を持ち、まさに“オルタナ”を鳴らすバンド、Khaki。多種多様なアーティストの楽曲が詰まったプレイリストからのブッキングライブ、そのトッパーとしてふさわしいパフォーマンスだったのではないだろうか。

セットリスト
01.Hazuki
02.子宮
03.眠りの午後
04.Cut 3
05.Kajiura
06.車輪


■Hwyl

2組目に登場するのは、下北沢を中心に活動する二人組バンド、Hwyl。ライブではドラムとベースにサポートを迎えての演奏となる。

RYKEY「Baby」をSEで流しながら登場したHwylは、小柄な女子ふたりというビジュアルをいい意味で裏切る、力強いアクトで観客を引き込んでいった。

≪好感度なんてもんは とっくに捨ててる》というパンチのあるフレーズから始まる「セカイヘイワ」で強烈な幕開けとなったオープニング。あきたりさ(Vo/Gt)はマイクを通して思いをフロアにぶつけるように言葉を吐いていく。

続く「Flower Moon」は、ゆったりした前半から曲中のテンポに変化をつける楽曲で、ペースチェンジする瞬間のギアの上げ下げが面白い。

終盤にグッとBPMを上げ、疾走感を携えながら英詞で“過去を、日々を、自分自身を越えていけ”と歌うシーンは「カッコいい」と体現した瞬間でもあった。

「オマエアレルギー」での、弦の一音一音がハッキリ伝わってくるイントロにも引き込まれる。ポップなサウンドに合わせてリズミカルに体を動かしながら演奏するメンバーに誘われるように、フロアも身体を揺らしながら楽しんでいる。アウトロではあきたの笑顔もキラリと光る。

「こんばんは、H・W・Y・Lで『ひゅいる』と申します」
「平日にも関わらず、今日この場所を選んで来てくれて本当にありがとうございます」

あきたの自己紹介兼挨拶を挟んで、続く曲は6月リリースの最新シングル「暮らし」だ。

≪節約のために抜くコンセント≫
≪ウーバーイーツは贅沢モン≫
≪炊いたご飯ソッコー冷凍≫

といったヒリヒリするシビアな現実に寄り添う歌詞が沁みる。クマダノドカ(Gt)の指弾きギターがこの歌の世界をさらに解像度高く表現しており、あきたの叫びに呼応するよう、ギターが咆哮を上げるシーンも強烈だ。

IMALAB NEWCOMER PLAYLISTにてピックアップされた「i don't know」はあきたのアカペラで始まる。曲前のMCではほっこりした空気を醸し出していたHwylだが、そんな空気を一気に引き締めた。

小さな体から生み出されるスケール感のあるナンバーで、中盤ではクマダがステージ前に出てきてギターソロを炸裂させるなど、アグレッシブに展開。ラストはピンスポット照明を浴びながらの歌で締めるといった豊かな構成の楽曲だ。どこか温もりを感じさせるギターソロが耳に残る「戯れ言」では、クマダが観客に手拍子を促す場面も。

ライブを締めくくるのは、7月6日リリースが決定したという新曲「SIREN」。

≪頭の悪いお医者さん≫
≪中身がブサイクな美人さん≫

という、再びのパンチ力たっぷりな歌いだしで初めて聴く者の耳にグサッと楔を打ち込むと、〆の歌詞≪絶滅5秒前のサイレン≫を全力で叫び、歌いきった。

満たされない日々をユニークなフレーズで彩りながら歌うHwyl。歌詞と音の一つひとつに感情を乗せたライブは、観る者の心にしっかりと刻まれたことだろう。

セットリスト
01.セカイヘイワ
02.Flower Moon
03.オマエアレルギー
04.暮らし
05.i don't know
06.戯れ言
07.SIREN


■Sleepless Sheep

3番手として登場したのは、東京を拠点としたボーカル、ギター、ドラム、ベース、キーボードという5人編成のオルタナティブバンド、Sleepless Sheepだ。

まずはオープニングナンバーとして「Pale」を披露。四つ打ちサウンドのエレクトロ・ダンスミュージックでKhaki、Hwylとは全く違ったグルーヴを生み出していく。

2曲目の「lab.」は、激しさとクールさが同居しているような楽曲で、Nanae(Key)のキーボードによる音色が「lab.」をドラマチックに演出。「Pale」ではシンセベースでエレクトロ感を増幅させていたLeon(Ba)も、ここではエレキベースでのアクト。ジャズテイストも散りばめられており、巧みな演奏技術が楽曲の強度を上げているようにも思えた。

続いての曲は、今や幅広い楽曲が“シティポップ”というジャンルに括られる中、2020年代のシティポップ、その王道とも呼べるような「red lips, high heels」。

個々の楽器隊それぞれが粒だった音を出し、インストバンドとしても成立するようなスキルで聴かせる楽曲にもなっている。そんなトラックの上にRuka(Vo)のボーカル、そしてNanaeによるコーラスが乗ることで全体的に華やかな印象を与えるナンバーだ。

「びっくりしました。こんなにたくさんの人々が前に居てくれるのは珍しいので。今日は精一杯楽しみたいと思います」

そんなRukaのMCを挟んで、後半戦へと突入する。

街のざわめきを取り込んだイントロからアーバンな空気を纏った「Vain」では、思わず体を横に揺らしたくなるグルーヴがFlowers Loft全体を覆い尽くす。観客一人ひとりが自由に揺れつつ楽しむ姿に、ステージとフロアが一体となっている様を感じ取ることができる、そんな名場面でもあった。

ファルセット駆使した、Rukaの表現力溢れるボーカルも素晴らしい。

最後の曲は「edy」。まず印象的だったのはソリッドなギターサウンド。そしてSleepless Sheepが25分の中で繰り出した引き出しの多さの仕上げともいうべき、骨太なロックに心掴まれる。

曲の後半、怒涛の盛り上りのなか、クールにキメるRuka。スキル豊富な楽器隊を背負いながら、ひとりハンドマイク一本で挑む姿は堂々たるものだった。

ジャンルの壁を越えて様々な音で楽しませてくれたSleepless Sheep。出演バンドの多いライブでは途中で雰囲気が緩んでしまうこともあるものだが、そんな隙など一切与えない、強く、そして高い演奏力による適度な緊張感を帯びたステージだった。

セットリスト
01.Pale
02.lab.
03.red lips, high heels
04.Vain
05.edy


■板歯目

続いて登場するのは、この春高校を卒業したばかりというティーンズバンド、板歯目。先日のライブでは打首獄門同好会、the telephonesの対バンイベントでオープニングアクトを務めるなど注目度急上昇中のスリーピースだ。

ライブの幕開けは「KILLER,Muddy Greed」から。庵原大和(Dr)が叩くド迫力のドラムを筆頭に、圧倒的爆音でフロアへと襲い掛かる板歯目。千乂詞音(Vo/Gt)の信じられないような声量と、それに負けないゆーへー(Ba)のベースも凄まじい。

総じて言えるのは、これはスリーピースの音量ではない、ということ。3人でここまでの爆音を放てるのかと、驚くばかりだ。

2曲目に披露したのは、60年代テイストのあるロックンロールナンバー「dingdong jungle」。強弱をつけた千乂のボーカルがうねりを生み、フロアでは年齢性別関係なく、たくさんの手が上がる。庵原はスティックを回しながらドラムを叩き、千乂の真後ろでゆーへーがベースを鳴らせば、それを楽しそうに受けつつ千乂が歌う。

3人それぞれにライブを心から楽しんでいるのが伝わってくる、そんな瞬間の連続で成り立っているようなステージだ。

「dingdong jungle」から流れるように「芸術は大爆発だ!」へと繋ぐ。迫力の絶叫に耳を奪われがちだが、整ったメロディと気持ちのいいベースライン、そして腹の奥に響く、重量級でありながらも軽快なドラムが贅沢な音楽体験をもたらしてくれる。

4曲目にして一転、ムーディなギターで始まった「絵空」。おしゃれなサウンドに上書きするように爆音を乗せつつも、絶妙な音の足し引きがなされている。板歯目には珍しい、どこか哀愁を帯びた楽曲だ。“間奏”を、歌と歌の間を繋ぐアクセントとしてではなく、シンプルに全力で音に集中する時間として全開パワーで挑む3人の姿は清々しい。

いくつか告知を挟みながらも「ほんと喋るのだめなので…」と切り上げた千乂のMCを経て、ライブ後半戦は「沈む!」から。千乂のギターと歌による、シンプルなリズムとフレーズの繰り返しが続き、後半にゆーへーと庵原が加わりサウンドが超加速。目で歌うかのようにギラギラした千乂の瞳にもパワーが宿る。

続く「Ball & Cube with Vegetable」は、板歯目には少し珍しい、メロディの立ったサビが印象的だ。どこか90年代の香りを感じさせつつ、Nirvana「Smells Like Teen Spirit」のフレーズを随所に散りばめた遊び心満載の楽曲でフロアを盛り上げると、7曲目には圧倒的スキルでリズムを操るドラムと、自由に振る舞いながらも爆裂のベースで音楽ファンを虜にする「ラブソングはいらない」を披露し、ラストとなる一曲「地獄と地獄」へ。

聞き取るのが困難なくらい超高速で歌詞を連射し、それでいて力強さも損なわない千乂のボーカリストとしての輝きに圧倒されてしまう。その横で突然ベースをステージに置くと、まるで琴のように弦を爪弾くゆーへーのオリジナリティ溢れるアクトにも目を奪われる。

無邪気な自由さを持ちながら、確かな技術と抑えきれない感情を爆発させるパフォーマンスは唯一無二。旋風…あるいは暴風でもってFlowers Loftに衝撃を与えたステージだった。

セットリスト
01.KILLER,Muddy Greed
02.dingdong jungle
03.芸術は大爆発だ!
04.絵空
05.沈む!
06.Ball & Cube with Vegetable
07.ラブソングはいらない
08.地獄と地獄


■chef's

本日最後に登場するのは「おいしいおんがく」をコンセプトに活動する4人組バンド、chef's。

アナウンスが組み込まれた自身の楽曲「SHOW TIME」をSEにステージに現れた4人。アヤナ(Vo/Gt)を除く3人はまさしくシェフのユニフォームともいえるコックコートを身に纏っている。

「chef'sです、よろしく」という、アヤナの挨拶からバチッと揃ったバンドサウンドでライブスタート。

1曲目は「スピンオフヒロイン」だ。アヤナの真っ直ぐで芯の強い、綺麗な歌声がフロアに潤いを与えていく。切れ味があって気持ちのいいフルギヤ(Gt)のギターは、タッピングも駆使して変化をつけながら豊かな音を繰り出す。

曲中「めっちゃ人いっぱい、楽しい!」と真路(Ba)が声を上げ、大勢の観客を前に喜びを感じながらのパフォーマンスは続く。

2曲目は「エイプリル」。伊吹(Dr)のドラム、そして真路のベースが引っ張るイントロから始まり、メンバー全員が加わって熱量を上げると、そこからペースを変化させてミディアムバラードとなった楽曲をしっとり歌い上げる。リズム隊が巧みにグルーヴを作り上げるなか、アヤナの「ギター、フルギヤ!」を合図にステージ前面でギターソロが炸裂させ、魅せるステージも展開するchef's。

MCで真路は「トリということで…初めてなんですけど、ありがたいです。遅くまで残っていただきありがとうございます」とコメント。初のトリという重責を跳ねのけながら、続く3曲目「Hamlet」を演奏する。

スウィングするようなイントロを筆頭に、テンポやグルーヴを自在に変化させ、ジャズテイストも織り混ぜながら様々なサウンドを駆使して多彩な演奏を繰り広げていく。その試みが届いたのだろう。興奮が伝播したフロアではたくさんの手が上がるほどの盛り上がりを見せている。

静寂に包まれた「Hamlet」ラストから四つ打ちで再びグッと盛り上げて「huit」へ。インスト曲かと思うほどに各楽器隊が生き生きとプレイするイントロで観客を引き込む。芯の固いボーカルを披露するアヤナが、チラリ挟み込むファルセットも魅力的だ。キャッチーでのびやかなギターソロでも聴かせてくる。

最後の曲を前に、アヤナが今日のライブに対する感謝を伝えると、ラストを飾る「ヒーローコンプレックス」へと突入する。ピンスポットと共にひとり弾き語りで始まり、テンポからボリュームまでひとりで操る。

ソロパートが終わると「ありがとう、chef'sでした」という挨拶を挟み、バンドサウンドで一気呵成に攻める。一点集中する音の迫力をまざまざと見せつけながら、フロアに手拍子を促し、観客を巻き込んでライブを仕上げていった。

イベントのトリという大役を務めあげると、満面の笑みを浮かべながらステージを去っていくメンバーたち。

しかし、フロアからはアンコールのリクエストとなる手拍子が起こり、ほどなくして再びステージへ戻ってきた4人。

アンコールは予想外だと慌てるchef's一同。「本編で明るい曲をやり尽くしてしまった」と戸惑う真路だったが、メンバー間で意思統一はできているようで、彼らの今の代表曲ともいえる「スピンオフヒロイン」をオープニングに続いてもう一度披露することに決定。

本日二度目となる同曲だったが、無事トリを終えて緊張も解けたのか、本編よりもさらに華やかでポップなオーラが溢れていて、フロアのノリも、本編以上。まさにイベントのオーラスを飾るにふさわしいキラキラした空間を作り出しており、アヤナの笑顔がこぼれるHAPPYなステージで全5バンドによるライブのラストを締めくくった。

セットリスト
01.スピンオフヒロイン
02.エイプリル
03.Hamlet
04.huit
05.ヒーローコンプレックス
EN.スピンオフヒロイン


若きミュージシャンたちが自由に、そして楽しみながら全力でプレイし、フロアに笑顔と興奮をもたらした3時間の熱いライブ。バンドマン同士が刺激を与え合ったステージは対バンイベントならでは。

新たな胎動を感じさせる、まさに音楽でドキドキするような幸せな時間をもたらしてくれる、素晴らしいライブだった。

新曲リリースや自主企画、新作MV等これからも様々なアクションを起こしていくであろう、彼らの活動にぜひ注目してほしいと思う。今後の活躍を想像するだけでもワクワクしてくる、そんなアーティストたちの未来が楽しみだ。


■photo by ai.(@123a_17
■flyer direction by 梁取瑶(LiNK-UP) (y_yanatori)
■flyer direction by 享保拓也(LiNK-UP)
■text by ほしのん(@hoshino2009


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