
子供の名前に込めた親の願い #① 【息子への手紙】
(1)長男には「亮爾(りょうじ)」と命名
早大大学院で尊敬していた師事教授の野村平爾先生の「爾」を頂き、当時東京都知事だった美濃部亮吉さんの「亮」を頂いて、付けた名前だ。
「亮」とは、誠、嘘をつかない等の意味がある。
「爾」とは、前の字を強調する意味がある。
だから、「亮爾」とは、「本当に嘘をつかない、自分に正直な人間になって欲しい」と想う親の願いがこもっているのだ。
さて、亮爾はそういう成長をしてくれただろうか?
後で本人から聴いたことだが、小学時代は成績が悪く、虐められていたと言う。全く気付かずに悪いことをした。言ってくれたら、何とかしたのに、と残念だ。
その反動か、中学生になった頃から空手やボクシングを習い、以前虐めた子より強くなり、はみ出しグループとも付き合い始めて、夜はほとんど家に居なくなった。勿論、勉強などしていないので、成績も悪く、高校受験は無理だ、と先生に言われることになった。
仕事にかまけて気がつかなかった私の責任だが、何とか高校には行かせてあげようと、「亮爾、俺がお前を高校に行けるレベルまで勉強を教えるから8時~10時の時間は俺と勉強する時間に取れ!」と言うと「判った!」と言う。
7月から、3月の受験日まで、中学一年の国語、数学、英語から初めた。やってみると、さほど頭が悪いわけではないことが判った。
「走れメロス」の感想文を書かせると「友達との約束を守って最後まで走り続けたところは凄いと思うが、自分だったら途中で諦めたかもしれない」というような素直な感想文を書いてきた。これは「単なるストーリーを書いただけでなく、自分の考えまでをしっかり書いているので、望みがあるぞ」と感じた。
「会社の仕事が如何に上手く行っても、息子が一人でもでき損なったら、私の人生は失敗と言える」と想ったので「今は、息子の方が大事だから、今年は仕事より息子の教育に専念する」と宣言して、二人で勉強した。そうやって中学二年生の二学期まで教科書が進んだところで受験日が来た。
「何とかなるところまでこぎ着けたので、後は思いっきり、思ったことを書いてこい!」と送り出した。
そして、何とか合格できた。
しかし、入学後の6月、「廊下でジュースを飲んでたら、先生に9発蹴られたので、こんな学校辞める!」と言う。
早速、学校に行って先生と話をした。先生は、「暴力をふるったことは謝ります」となったが、息子は「もう行かない!」と言う。
「せっかく入った学校だから、ともかく一学期は行きなさい」と言うと「判った、行くし、試験も受けるよ」と言う。しかし、一学期の試験が終わったら「お父さん、約束通り学校にも行ったし、試験も受けた」「だから、もう学校には行かないよ!」と言う。
参ったね。そのまま何とか学校になじんでくれるか、と期待していたのに、これだ。
その後、アメリカ留学になり、いろいろの問題があったが、ヘアーメイクアーティストになることになるが、「亮爾」の名の通り「自分に忠実に、自分のやりたいことをやる人間」になった。私の想像を超えた生き方になったが、これで良いのかもしれない。
子供の名前に込めた親の願い #② へ続く