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子供の名前に込めた親の願い #② 【息子への手紙】

子供の名前に込めた親の願い #① からの続き


(2)次男は「太爾(たいじ)」と命名

小学校五年生の太爾が部屋から出てこない、とお母さんが騒いでいる。二階の部屋に行ったら、押し入れに入って出てこない。「どうしたんだ?」と聴いても返事もしない。
「学校で何があったか言ってみな!」と言っても、ただ拗ねた目をして膝を抱えてうつむいて何にも言わない。

「・・・・・・」

押し入れから引きずり出して、抱きしめて、「お前にはお父さんが付いているんだから、どんなことでもして助けてあげるから」「何があったか言ってごらん」「言わなきゃ判らないだろう」と幾ら言っても何にも言わない。

しょうがないので、お母さんが学校の友達に聴いてみたら、「クラスの女の子とほうきの取り合いになって、負けたみたいよ」と言う。

そうか、女の子に負けたか。それで悔しかったのか。小学校ぐらいの年齢だと女の子の方が成長が早いから女の子も強いよな。まあいろいろあるさ。

「どっちにしろ、明日は、学校には行くんだよ!」「学校休んじゃダメだぞ!」と言いながら、心配したが、翌日は学校に行ったので、少しは安心した。

太爾は、「食べ物を少量しか食べないので、ヒョロヒョロしていて弱いのか、それで虐められっ子になっているのか」、「引き籠もりにならなければいいが」と心配したが、その後は何ごともなく過ぎて良かった。

しかし、10年くらい後になって本人にあの時のことを聴いた。
「俺は、あの頃クラスのボスで、みんなに命令していたんだけど、あの時は、あの女の子にそれを反撃されて、負けたんだ」と言う。そうだったのか。ボスが女の子の反撃にやられて、悔しくって、何も言わなかったのか、と事実が判明した。心配して損した。

そうだよね、君は気が強い人間だから、引き籠もりの心配などして損したよ。
だけど、その後も君は自己主張が強すぎるので、「バイクを買ってくれ」「車を買ってくれ」「クレジットの保証人になってくれ」等々と何度も無理難題を私に吹っかけてきたね。聴かないと、雪の降っている庭に飛び出して「どうせ俺は親に愛されていないんだから、ここで凍え死ぬ!」と動かないこともあったね。私も庭に降りて、君を抱きしめて、「親の私が、お前を大事に思わないはずがないだろう」「ともかくこのままでは風邪を引くから家に入れ」とようやく抱き入れるしかないこともあった。

ホント、君には驚かされ、困らされることが多かった。そんな君が「引き籠もりになんかなるわけがないよね」。

君の名前を「太爾」としたのは、私が営業マンで苦労していた頃だから、息子の君には「図太い男」になるようにその名を付けたのだった。だから私の願い通りに「図太い男」になってくれたが、君には少々手こずった。

だけど、今は社長になったのだから、それくらい強い方が良いかもね。社長は企業ではボスだ。ボスは天守閣に登って、将来を見通し、下に降りたら、社員と同じレベルで現実の中で生きなければならない孤独な立場である。心が強くなければとてもやって行けない。

「知性」と「図太さ」の両輪で世の中になくてはならない企業に育て上げて下さい。

期待しているよ。


子供の名前に込めた親の願い #③へ続く


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