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コンピューターが大好きな君へ【息子への手紙】

朝の連ドラ「すずらん」で、主人公の「萌」が保育園を造ろうとしているのに、隣のマンションの住民達に「子供の泣き声や騒ぎ声でうるさくなるのでやめろ!」「静かに老後を過ごそうと買ったのに、金儲けの為に生活を乱されてはかなわない!」と猛烈な反対運動をされている。しかし、萌は住民説明会で言う。

私は北海道の明日萌という駅に捨てられた捨て子でした。
そしてそこの駅長に育てられました。
結婚して主人を戦争で亡くしてからは子供を育てる為に働きました。
私は自分一人で子供を育てたと思っていました。
しかし今思えばそれは間違いでした。
私は一人ではありませんでした。
私を育ててくれた父を始め、竹ちゃん、竹ちゃんのお父さんとお母さん、写真屋のおじさん、食堂のおかみさん、弁当屋の社長等と皆に助けられ何時も皆と一緒でした。
子供は一人では育てられません。
私は温かい人の集まる明日萌という駅で守られ育てられたのでした。
私は幸せでした。
それと比べて、今の子供達は不幸です。
子供達を見守り育てる温かい人の輪がありません。
今の母親は孤独です。
子供を預かってくれる人がいません。
まして父親のいない子供は預けるところがなくて、お母さんは働くこともできません。
子供達の未来は輝いていなければなりません。
私は私にとっての明日萌駅のような温かい人の集まる保育園を造りたいのです。
どうかよろしくお願いします。

と。

ドラマなのに涙があふれて止まらなかった。
そうだそうだそのとおりだ!
「周りの人やその地域に溶け込み、必要とされることをやるからこそ人の集まる場所になれる」。そのことを忘れて、「どうしたら儲かるか」ばかりを考えていると、仕事としても成功しない。
バブル崩壊後経営が厳しくなり、いつのまにか私もどうしたら利益が上がるかばかり考えていたかもしれない。従業員にも成績を上げることばかり要求してプレッシャーを掛け続けたかもしれない。反省しよう。もう一度何が大切かを考えよう。

君がコンピューターの仕事をしようとしていることは判っている。しかし、「いくら君がコンピューターいじりが好きでもそれだけでは仕事としては成功しない!」
だから私の会社のコンピューター化をさせて、そのチャンスを与えたのだ。

まず私がどんな仕事をしようとしているかをいろいろ言うので、それに対してどんなコンピューターを買い、どんな使い方をすれば、不動産の仕事の能率を上げ、仕事の成果を上げることができるかを提案して欲しい。
パソコンが2000万台普及したとか、インターネット時代が来たと言われているが、本当に使いこなしている人が何人いるだろうか。
ほとんどの人が「高いコンピューターが買いたいのではない!」「どうしたら自分に必要な使い方ができて、自分の仕事の効率が上がり、結果として利益が向上するかを求めて購入するのだ!」。
にもかかわらず、「ほとんどの人が高いコンピューターを買ったのに、期待通りの成果に報われてはいない!」と思う。
だから、「君が、その人々の要求を的確に掴み取り、指導し、効率よい使い方の提案ができ、成果が上げられるならば、それは、本当に良い仕事になる」と思うからだ。

だから、まず私の希望をかなえてくれ。私は人一倍要求がきつくて大変だから覚悟したほうがいいよ。しかし、それを満たした時、君は一流のコンピューター指導者に、そして、一流の不動産屋になっていることだろう。
そのために君がやるべきことは、まず不動産屋の仕事を理解する為に今年は宅地建物取引主任者の資格を取ること、東海大学建築科を卒業して建築士の資格を取ることである。その上で明和地所を使えるコンピューター基地にすること。

考えてみると、この町に住もうとした人が、アパートであれ住宅購入であれ、店舗や工場開始であれ、まず初めに立ち寄り、相談するところは不動産屋である。
そして冠婚葬祭、結婚、誕生、入学、卒業、就職、転勤、退職、死亡で生活が変わるたびに関わる仕事であり、不動産屋とは「町の関所」のようなところである。
こんな仕事に関わりながら、町のことを知らないことは罪である。町の情報ステーションでなければならないわけである。
だから、ここにはどんな人が住んでおり、どんな生活をしているか、何処に学校があり、保育園は何処が良いか、バス便はどうか、買い物は、等々のこの地域に関わるあらゆる情報の基地としてもらいたい。
明和地所には無料のインターネットを置いてお客さんが勝手に家やアパート探しができるようにできないだろうか? この地域に溶け込んで、この地域の人に必要とされる不動産会社になれたらいいなあ! と思う。

社員にももう一度基本に戻って、利益を出す為だけでなく、この地域の役に立つ企業としての働きをするように、そのことこそが結果として永く生き続ける企業の条件であることを判ってもらえるようにお願いするつもりです。
そして君の力も必要なのでどうかよろしくお願いしたい。

テレビに泣かされながら、今日はこんなことを考えた。「本気でそう思ったことは必ず実現する」と思っている。
君の起業にも役立つことと思うので今日はこれを君に伝える。
がんばれ太爾!

( 1999年 9月25日 記 )


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