IMA ニュース 2002年4月号
モットー:果敢にリスクに挑戦し,素早く結論を出し,新しいビジネスを創出し,日本経済再生に寄与する。
IMA (Institute of Mathematical Analysis:数理解析研究所)ニュースをお届け
いたします。
弊研究所における研究開発:ロボットと地下 GPS
最近テレビを見ていると,ホンダやソニーが開発した人型ロボットのことが
報じられることが多い。これらの二足歩行をするロボットが,次第に進化して次第に上手に歩く姿が,多くの視聴者に驚きと期待を持って受け入れられている。特に日本では,手塚治虫の鉄腕アトムのイメージと重なっているようで,人型ロボットに対する憧れが,幼い日に漫画を通して埋め込まれているので,なんの抵抗もなく大歓迎されている。
人型ロボットが広く社会に広まって,我々と共存するような時代が来るかど
うかよく分からないが,日本におけるロボット技術がかなり成熟してきていることは間違いない。また,ユーザーの声を取り上げて絶え間のない改良を必要とするであろう様なロボット技術のようなものは,日本人にとても向いているテクノロジィであろう。これまでの産業用ロボットは工場の中の生産システムに組み込まれていて,あまり一般人の目に触れることはなかったが,これから普及するサービスロボットは我々の日常生活に大きな影響を及ぼすであろう。
ロボットが進化すると,ロボットと人間の恋愛とか我々の想像を超えたことが起きるに違いない。同性愛どころではない。
このようなロボット社会で,ロボットが正確に行動するためには,地下 GPS
の技術は重要なインフラになるであろう。ロボット技術が大変進歩して人間と変わらない情報処理が可能となれば,ロボットは僅かな手がかり,それも人間と共通のものから自分の位置を把握できるようになると思われるが,なかなかそこまでは行かない。ロボットでも可能な方法で位置を知らねばならない。そう考えると,地下 GPS の技術はロボットが自分の位置を知るための重要な手段を提供するものと思われてならない。
そのために現在すべきことは何か?一番大切なことは,システムのコストダ
ウンを実現することであろう。GPS 技術は大変高価なものと思われがちであるが,これまでの蓄積のお陰で,実は大幅なコストダウンが可能な段階に達しているのである。
3月の仕事
(1)地下 GPS 実用化提案(信号源に関する提案)
(2)高感度 GPS のデモ実用化作業
(3)高精度 GPS のデータ解析(長基線キネマチック)
(4)通信変復調基礎理論(Wavelet)の調査
4月以降の予定
(1)地下 GPS の実用化提案
(2)高感度 GPS の実用化作業
(3)高精度 GPS のデータ解析(長基線キネマチック)
(4)通信変復調基礎理論(Wavelet)のソフト開発
(5)ION GPS 2002 シンポジウムへのアブストラクト応募
(9月/ポートランド)
http://www.ion.org/meetings/meetings.cfm#gps
(6)UT2002 シンポジウムで論文講演(4 月/東京)
http://underwater.iis.u-tokyo.ac.jp/ut02/Welcome.html
(7)日本造船学会春季講演会(2002/05/東京)で講演
http://www.snaj.or.jp/
雑感:ほとんどゼロの金利
現在日本の銀行の普通預金の金利は 0.0001%である。すなわち、100 万円預
けても,1 年間の利息は僅かに 1 円である。「これでは老人などの金利生活者の生活が成り立たない。何とかすべきである」という意見がある。このような考えは,正しいであろうか?
預金金利がマイナスになることは,理屈から言っておかしいが,プラスなら
ば,ほとんどゼロであっても,理屈の上ではあり得ることではなかろうか? ゼロに近い預金金利は,絶対にあり得ないというのは,長年の経済発展の中で培われたひとつの固定観念のように思われてならない。
物価がどんどん下がって結果として貨幣価値が増加しているならば,利子が
ゼロであっても預金の価値は増加する。仮に世の中のすべてのものの物価が半分になったとすると,貨幣の購買力は倍になる。したがって,あるとき貨幣の呼び方を 100 円を 200 円というように額面を倍の新貨幣に取り替えて,世の中のすべてのものの物価を倍にすると,預金の額面が倍になって購買力も倍になっているので,物価が下がる恩恵を目に見えるようにすることができるが,実質的には何も変わらない。
金利生活者の場合でも,物価が半分になれば,預金の半分の支出でこれまで
と同じ購買力があるから,残りの半分がいわば利子のようなものである。現実社会は複雑であるからこんなに単純ではないから,こういう単純な思考には落とし穴があるが,大筋はつかんでいるのではないであろうか?
筆者の言いたいのは,人間の思考は通常,固定観念でがんじがらめになって
いる。固定観念にとらわれている限り,新しい考えは沸いて来ない。アイデア豊富な人というのは,固定観念をゆるく持っている人ではないであろうか?