遠くまでうろこ雲続く
素数ゼミ
数学の演習みたいなその名前は
アメリカで13年に一度と17年に一度の周期で出現する蝉の事で必ずその周期で現れるので周期ゼミとも呼ばれるとか、今年2024年はなんとその2種の周期ゼミがいっぺんに現れる(うるさそう)221年に一回の年らしい。すごい
蝉といえば最近聴こえてくる鳴き声は
なんとなくツクツクボウシの割合が増えていて
ひっそりとした時間の経過を感じている
空間を埋め尽くすジリジリとした暑さをほんの少しずつ余白のある鳴き声が沈めていくような
夏の納涼祭、花火大会へいった
案内の人が看板を掲げて暑さと人波に揺れている
特に看板をみなくてもなんとなく空気がさざめいている方へスニーカーを向けていれば辿り着けそうだったけれど、案内をみて納得したりなんかした
遠くをみたり天気のことを考えているうちに聴こえる音は歌になって声になりいつの間にやら自分もさざめきの一員に混ざっていた
これが夕方だなんてとても信じられないような陽の光に照らされながら誰の通り道でもないくさはらに腰を落ち着ける、まるで時間を忘れていたかのような陽気だったのが19時を回る頃には集まる人だかりに慌てて急ぎ足で暗くなっていく夏
「皆様でカウントダウンをお願いします!」
顔も見えない司会の人の軽やかなアナウンスが縁日の香りと一緒くたに流れてくる
「「「 5 」」」
「「「 4 」」」
「「「 3 」」」
「「「 2 」」」
(なんか2って素数のイメージうすいよな…?)
「「 1 ……!! 」」
( あ偶数だからk…
じょっ!!!! …
きっと昼間のうちに大きな大きな太鼓の面を張ったに違いない天を花火師たちは火を点け思い切り振りかぶって打ち付ける
どむ!!!!!!!!
腹の底まで震えるような衝撃
山はこだまして響き渡っていた
町や、人が、空気が、唸る
そのまま衝撃は頭上に花を咲かせた
ぱらりりり…
花は全身で眩くなって光を放つ
その儚さは空に浮かんでいた
汗や、笑い声や、憂鬱、夏を。まるごとコマ送りにしてみせた
散り散りになる光の色がとても惜しく
そのまま僕の方へ落ちてきてここまで届いてくれればいいのに、と思ったが点滅を続ける色はどれだけ優しく睨みつけてもそのうちに見失ってしまうので端っこの最後の方を少し親指と中指人差し指でつまんでポケットにこっそり仕舞い込んだ
しまってしまった。どうしよう
気がついてみれば、僕には蝉の鳴き声がいつのまにか聴こえなくなっていた
221年に1回の夏。
何千何万年と経っても
後にも先にも訪れない
たった一度だけの221年に1回の夏
帰ってから風呂に入るまえ脱いだシャツに少し火薬の残り香を匂った気がした
それでは