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大切に思えること。 前編 高野地 みかん農家 西田 佳奈美・昌平さんご家族

高野地(たかのじ)。愛媛県の西に位置し、宇和海が一望できる標高約300 メートルの高地。愛媛県内のみかん生産量約46%を占める八幡浜市の中でも代表とされる名産地だ。※

そんな情報をもとに、私はみかん農業を営む、とある家族に会いに向かった。山登りをするように車でジグザクと上り、たどり着くと、「ここは、私がずっと住んできた国、日本なのか?」と思わざるを得なかった。とにかく気持ちがいい。空気が澄んでおり、とくに光が綺麗なのだ。

※愛媛県庁. 「平成30年温州みかん 収穫量市町別シェア」. https://www.pref.ehime.jp/h35500/kankitsu/toukei.html, (参照 2021-07-29)

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標高300メートルに位置する高野地は、段々畑が至るところに。段々畑にすることで、太陽の光をたっぷりと農地に取り込む。
海に面しているため、反射して届く光も栽培に活かしている。

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愛媛県八幡浜市高野地で、みかん農家を営む西田 佳奈美・昌平さんご夫妻。佳奈美さんは、この土地の生まれで、高校卒業まで高野地で暮らす。大学進学と共に広島県へ。その後、広島県内にて就職。昌平さんと出会う。結婚後、そのまま県内で暮らしていたが、みかん農家の3代目として暮らしていくことを決め、昨年、2020年9月にこの土地に夫婦で移住。

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ハウス栽培のみかんの樹に囲まれながら、まずは西田 佳奈美さんのお父さまから、みかん栽培についてレクチャーを受けた。

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佳奈美さんのお父さま、坂本幸一さん(以下、「幸一さん」)。この土地で 32年、みかん農家を営んでいる。

「いい塩梅」が
大切なみかん栽培。

──こんにちは。今日は、よろしくお願いします。こんなにも、たくさんのみかんの樹に囲まれることは、初めてです。

幸一さん:高野地でみかん農家をやっております坂本幸一です。ここでは、収穫時期が1月である品種「せとか」を冬の間、加温しなければならないのでハウス栽培をしております。

実は、みかんには必要以上に実をつける習性があって、自然に果実を落とすんやな。これを生理落果と呼ぶ。品種によっては落ちんやつもあるし、温度が1度上がったら、落ちてしまうものもある。つまり、温度を上げると、生理落果を助長する。その具合をハウスの温度で調整する。

味に関しても、調整ができるんよ。みかんの樹にあげる水の量を増やすと、味が薄くなって、少なくすると甘くなる。水を止めると、酸っぱくなる。塩梅が重要だな。その辺のバランス言うかな、いつから水を切って、また入れていくかという管理方法は大体、品種ごとに確立されてるけどな。その方法にしたがって管理をしていく。

──あとは天候に合わせて?

幸一さん:そうそう。やっぱり、お天気が続いて、日照量が多い時は品質がやはり良くなる。逆に今度は、雨ばっかりの年は糖度が低い、つまり甘味が少ないものができる。まあ、自分でコントロールできない部分もあってしんどいけど、面白いところもある。

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ビニールハウス内の地面にはパイプが引かれており、
ここから量を調整しながら、みかんの樹に水を与えている。

──よく見ると、トゲがありますね。みかんの樹にトゲがあることを初めて知りました。

幸一さん:すごいやろ。春に出たトゲは短いけど、夏の暑い時期に出るトゲは5センチくらいある。長いんよ。やけん、重みでみかんの実に刺さってしまう。だから、最初は毎日一個一個のトゲを摘んでたんやけど、今はどこまで気を遣う必要があるかがわかってきたのもあって、いい塩梅で管理している。

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幸一さんは、この高野地エリアで初めて「せとか」のためにハウス栽培を始めたチャレンジャー。農業に対して、真摯に取り組んでいる姿と、ちょっぴりお茶目なお人柄のギャップが魅力的でした。

後編へつづく

取材・文・写真:大島 有貴



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