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優しさが流れるように。後編 劇団「水中ランナー」 座長 堀之内 良太 さん

宮崎から東京に上京し、舞台の世界と出会った堀之内さん。気がつくとその世界に、のめり込んでいきますが、「もう、このままでは続けられない」と一旦は舞台役者を辞める覚悟をします。そして、「どうせ辞めるならば、好きなことを、好きな人としてから辞めよう」と劇団「水中ランナー」を旗揚げ。

そんな堀之内さんに今回公演した作品の話を中心に、もう少しお話をお聞きしました。
前編はこちら。


この続きは、ハッピーかもよ。

──今回、「5秒ぐらい死んでもいいかなって思った事がある」(会期6/30〜7/4、すでに終了)というタイトルで公演をされましたね。堀之内さんは脚本も担当されていて。このタイトルはどのように決めたのですか。すごく印象に残ります。

なんで、あのタイトルにしたんでしょうね。経緯を思い出せない(笑)。今までの公演タイトルは「先を綻ぶ」「笑う花」など短めだったのですが、こんなにも長いタイトルは初めてでした。今までとは何かを変えたいという気持ちは確かにあっだと思います。このタイトルを悪くとるか、良くとるかは人によって違うと思うのです。「あなたは、どっちに取りますか?」と問いかけたかったのかもしれません。

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後編は、近くの公園にお散歩へ。気持ちが良い緑に囲まれながら、お話をお聞きしました。

──そうなのですね。まるでセリフのようなタイトルなので、脚本を書いている中で浮かんできたのだと思っていました。コンセプトが一番最初に決まっていたとのことですが、どのように決まったのですか。

やはり、こういうご時世ということもあって、苦しんでいる人がたくさんいるのを知っています。逆に楽している方もいることを。若い子だと、甲子園に出場できなかったり、卒業式、成人式がなくなっちゃったりして、すごく悲しい思いをしていたりもしますよね。今、そのことを悲観しているかもしれないけど、これから先、未来が良いものになっていけば、過去の意味合いも変わってくる。「人生には続きがあるんだよ」ということを、少しでも感じてほしかった。

セリフでも書かせて頂きましたが、「映画ではバッドエンドを求めて、ハッピーエンドを鼻で笑ったりしてしまう」と。僕がいる創作の世界では、ドラマティックな展開が望まれることが多いです。だけど、僕はせめてフィクションでは、みんなが幸せになれるイメージをつかんでほしいと思うのです。

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それぞれの立場があるんだから、
みんな、優しくなろうよ。


──素敵ですね。堀之内さんの作品の一貫とした訴えたいテーマって何かあるのですか。

どうかな。「人」がテーマになっているところはあるけれども、特に意識はしていないです。初期の作品を見ていると「訴えてるな」ということは感じますね。だけど、10年後に今の作品を見たら、同じことを思うかもしれない。

「みんな立場があるんだから、みんな、優しくなろうよ」とは思うんですり被害者と加害者の立場というか。政治家と国民の立場、浮気した人とされた人の立場…。立場によって、見方はは変わりますよね。例えば、自分の友人が、お付き合いしている人から浮気されたとして相談されたら、もちろん友人側につかと思います。だけど、もしかしたら、浮気される前にその友人が浮気してたことだってあるかもしれないし、他にも予想だにしない出来事があったから、そういったことが起きたのかもしれない。各々が抱えているものって、見た目にはわからないことが、ほとんどじゃないですか。

だけど、各々の当事者の周りに、たくさんの関係のない事情を知らない人たちがついて、世の中がどんどん分断されている感覚があります。特にSNSなどを見ているとすごく感じるのです。当事者以外の人たちが、その状況を利用して、自分の自己顕示欲を満たしているというか…。みんな様々なものを抱えているし、いろんな立場があるんだから、人に対してもっと優しくなろうよというのは作品の中で、描いているのかなと思います。

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「人」についての作品を、
作り続けていきたい。

──これから、堀之内さんはどんな活動をしていきたいとお考えていますか?

劇団「水中ランナー」のメンバーはみんなマイペースで、それぞれがそれぞれの活動をしています。ですので、全員揃って何回も公演をやっていくことは難しい。前述しましたが最近は、他の劇団からご依頼をいただき、自分が脚本と演出をして、プロデュース公演という形で舞台を作っています。水中ランナーとしての公演も、もちろんやっていきながら様々な形で舞台をつくっていこうと思っています。

また、今回、このような感染症の危機に対して、文化庁が給付を決定した補助金でかなり助けられた部分がありました。それに対しては、さまざまな意見がありますが、やはり舞台関係者は、決めてしまった公演が中止になってしまうと、かなりの損失が出ます。加えて、精神的にもダメージが大きくて…。そこをすごく助けてもらえました。そのおかげで、続けられたところが大きいのです。そういった支援をもらったからこそ、続けて行かなければならないなという気持ちもあります。

やっぱり、人って面白いなって思うし、それをずっと描き続けたい。その時、その時で、自分が感じたことをコンセプトに「人」についての作品をつくり続けていきたいと思っています。

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さまざまな人の立場がある。相手には、自分が想像しきれない事情や考えが。ということを、なぜだが私たちは忘れがちです。

それは、日本人という同一民族でほとんどの人が無宗教であることが、背景としてあるのかもしれません。私たちが受けてきた教育も「みんな一緒である」ということが良いことだとされる。価値観が凝り固まっています。

最近は、さまざまな価値観が許容されるようにはなってるとはいえ、SNSを開くとなんとなくの「空気」や一方的な「価値観の押し付け」によって、人が人をジャッジして、制裁を与えている姿を目にします。

「それって、誰が幸せになるのだろうか?」という視点から一度、普段当たり前に起きていることを見つめ直すことが必要なのではないでしょうか。
そして、私たち一人一人の意識と行動で「人が人に対して優しくする空気」を作っていくことができるのではないか。そんなことを感じたインタビューでした。

堀之内さん、お話ありがとうございました!

堀之内さんが座長を務める劇団「水中ランナー」のHPはこちら

堀之内さんのTwitterはこちら。


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